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どうやらバルミューダが本当に崖っぷちにいるらしい

トースターで一世を風靡したバルミューダの業績が悪化しています。

バルミューダは、2021年11月にスマートフォン市場に参入したものの、鳴かず飛ばずで今年撤退していましたが、不採算事業から撤退することで得意分野へ注力し、業績が回復していく可能性があるものと思われていましたが、2023年度3Q (1~9月)の業績は全く回復しておらず、業績予想は下方修正されました。

バルミューダーに何が起きているのでしょうか。今回は、バルミューダの業績について少し見て行きたいと思います。

 

業績の概要

バルミューダの説明では以下のように3Qの業績が解説されています。

売上高については、外出機会の増加による支出先の変化、並びに物価上昇による生活防衛意識の影響を受けました。営業利益も、売上減に伴う売上総利益の減少影響を受けました。経常利益については、為替予約により円安影響を一定程度回避したと考えています。四半期純利益については、携帯端末事業終了決定に伴う特別損失、並びに法人税等調整額の計上影響が含まれています。自己資本比率については、棚卸資産等の圧縮に努め前期末水準を維持しています。

(出所 バルミューダ「2023年12月期第3四半期決算説明資料」)

実際に、売上高は前年の約125億円から80億円弱、前年比▲36.3%の減少です。通常の企業であればびっくりするぐらいの減収に見舞われていることが分かります。その結果、営業利益は▲1,143百万円、四半期純利益は、携帯端末事業に関する特損及び法人税等調整額の計上により▲1,820百万円と大幅赤字となっています。

また、売上総利益率が低下しており、商品が売れていないだけではなく、その商品自体の利益率も低下しています。

ただ、自己資本比率については、棚卸資産等の圧縮に努め、60%台を維持しています。

 

地域・製品カテゴリー

地域別の売上高については、いずれの地域も減少となっています。特に韓国の減少幅は非常 に大きいものがあります。日本では外向け需要の拡大、生活防衛意識の高まり等の影響を受けていますが、日本だけではなく他の国でも同様の状況と考えているとバルミューダは説明しています。

また、製品カテゴリー別の売上高はいずれのカテゴリーでも減少となりました。

(出所 バルミューダ「2023年12月期第3四半期決算説明資料」)

 

今後の戦略

バルミューダは、売上高が100億円を超えた頃は10億円以上の営業利益を毎年のように出していました。それが、2022年度は営業利益が75百万円で、2023年に関しては▲1,350百万円になる見通しです。

バルミューダは、中国や台湾で製品を作り、その多くを日本で販売していますので、為替相場の影響を非常に強く受けることになっています。まさに円安によって業績が悪化している企業の代表例と言えるかもしれません。

そして、そもそもバルミューダは、コロナによる巣ごもり需要があり、2021年、2022年の前半にこの需要を大いに享受したと考えていると発表しています。その後に反動として外向け需要の拡大が始まり、今はその影響を受けているのだということです (加えてスマートフォン電話事業では失敗しました)。

その状況を打破すべく、バルミューダは固定費の圧縮(いわゆるコスト削減)、新製品の発売と新たな国での展開を行うことを計画しています。

コスト削減という点では、人員を減らすと明言しています。また新製品は以前の製品よりは売上総利益率が大分違うと述べています。そして円安であるからこそ、海外で販売を増やすことも計画し、タイ、シンガポール、マレーシアでブランド展開を図る計画です。

 

所見

以上、バルミューダの業績を非常に簡単に確認してきました。

筆者はバルミューダの業績回復は簡単ではないと予想しています。

まず、バルミューダの得意分野であるキッチン関連製品ですら売上不振が起きている点がポイントとなります。もちろん、空調関連等、他の全てのカテゴリーで販売減が起きている訳ですが、キッチン関連での販売不振は非常に大きなインパクトがあります。はっきり言えば、消費者がバルミューダの商品に飽きてしまった、もしくは欲しい顧客層には既に商品が行き渡ってしまったという可能性があるからです。

そして、新製品は利益率が高いので発売すれば利益は回復するように説明していますが、利益率が高いというのは、裏返すと価格に比して商品の製造コストが安いということになります。すなわち、価格に見合わず「しょぼい」製品と消費者が受け取る可能性があるということになります。

バルミューダは、今までニッチな家電メーカーとして機能への拘りとおしゃれさを追求した商品を発表してきました。ただ、スマートフォンではバルミューダらしさは消費者に受け入れられませんでした。それどころか、バルミューダというブランド価値を棄損させた可能性すらあります。バルミューダの製品に他のメーカーの製品とは異なる何かをファン(消費者)が感じなくなったならば、価格が高いバルミューダの製品の売れ行きが鈍くなるのは避けられないでしょう。

そこに、利益率の高い新製品の発売が重なってきます。価格対比で「しょぼい」と消費者が感じてしまえばバルミューダのブランドは本業の商品で価値が失われてしまうかもしれません。バルミューダはまさに瀬戸際にあるように思われます。今後の動向に注目したいと思います。