フジテレビを中心としたメディア企業であるフジ・メディア・ホールディングス(以下、フジ・メディア)が2021年3月期3Qの決算発表を行いました。
フジ・メディアをはじめとしてマスメディアは、広告獲得に苦戦し、厳しい環境にあります。これは新型コロナウィルス感染症拡大前からの傾向です。
そのため、フジ・メディアやその他マスコミも、不動産投資に注力し、業績を安定させようとしてきました。
しかし、コロナ禍は不動産事業にも影響を及ぼしています。
今回は、フジ・メディアの2021年3月期3Q決算を確認すると共に、フジ・メディアの今後の動向について確認していきたいと思います。
3Q決算概要
フジ・メディアの2020年度第3四半期決算は、減収減益でした。
(出所 フジ・メディア・ホールディングス「2021年3月期第3四半期決算説明資料」)
それでも当初の想定よりは良い決算数値となっています。すでに3Qの段階で通期の業績予想をクリアしているのです。
その要因は次の資料を見ると、もう少し理解出来ます。
(出所 フジ・メディア・ホールディングス「2021年3月期第3四半期決算説明資料」)
フジ・メディアは、本業であるメディア・コンテンツ事業と、都市開発・観光事業が主な事業領域です。
減収率でいけば、メディア・コンテンツ事業よりも都市開発・観光事業の方が悪化しています。
そして、営業利益の減益率も、ずっと不振が叫ばれてきたメディア・コンテンツ事業の方がマシです。都市開発・観光事業はかなり業績が苦戦しています。
前年同期は、メディア・コンテンツ事業よりも都市開発・観光事業の方が利益額も高かったのですが、当期は逆転しています。
セグメント事業毎のポイント
では、さらに詳しく見るために、もう一つの資料を見てみましょう。
(出所 フジ・メディア・ホールディングス「2021年3月期第3四半期決算説明資料」)
この図表は、メディア・コンテンツ事業に属するフジ・メディア傘下の企業毎の収益です。
テレビはやはり業績が苦戦していますが、一方でポニーキャニオンとディノスセシールが大幅な増益となっています。
ポニーキャニオンは、アニメ、映像、映画等、エンタテインメントコンテンツの制作を行う会社であり、ディノスセシールは通販の会社です。
いずれもコロナ禍で需要が拡大したということなのでしょう。
フジ・メディアのメディア・コンテンツ事業は、テレビが牽引していた訳ではないということです。
次に都市開発・観光事業です。
(出所 フジ・メディア・ホールディングス「2021年3月期第3四半期決算説明資料」)
この表を見れば分かる通り、都市開発・観光事業は確かに苦戦していますが、その中でも最も問題なのはホテル子会社でしょう。もちろんコロナ禍においては当然なのですが、ホテル子会社は売上・利益とも急減しています(利益は赤字転落)。
以上をまとめると、フジ・メディアの2021年3月期3Qの決算は以下の通りと説明できます。
- 主業であるフジテレビの業績は厳しいままだが、ポニーキャニオンとディノスセシールの検討によってメディア・コンテンツ事業は、何とか減益幅を抑えている。
- 一方で、注力してきた都市開発・観光事業については、ホテル子会社が赤字転落し足を引っ張っている。そのため、メディア・コンテンツ事業が都市開発・観光事業の営業利益額を上回った。
フジテレビ単体の業績
追加でフジテレビ単体の業績についても確認しておきましょう。
(出所 フジ・メディア・ホールディングス「2021年3月期第3四半期決算説明資料」)
フジテレビ単体の決算は減収減益ですが、2割弱も売上が減少したにもかかわらず、
営業利益は4割弱の減少に留まっています。
言葉を換えれば、351億円も売上が減少したにもかかわらず営業利益は21億円しか減少していません。
その理由は以下です。
(出所 フジ・メディア・ホールディングス「2021年3月期第3四半期決算説明資料」)
すなわち番組制作費を大幅に削っているのです。前年同期と比べて148億円の削減を行っています。
このようなコスト削減によってフジテレビは単体の利益を維持したと考えて良いでしょう。
今後の動向
2021年3月期のフジ・メディアの業績予想は以下の通りです。
(出所 フジ・メディア・ホールディングス「2021年3月期第3四半期決算説明資料」)
都市開発・観光事業=不動産事業の存在感が薄れ、メディア・コンテンツ事業が利益の大半を占める予想となっています。
利益の割合でいけば、フジ・メディアは2021年3月期は立派なメディア・コンテンツ企業と言えることになります。
一方で次の資料を見ると違う視点を持てるでしょう。
(出所 フジ・メディア・ホールディングス「2021年3月期第3四半期決算説明資料」)
フジ・メディアの設備投資は2020年4~12月までに368億円となっています。
その内訳は、フジテレビ32億円に対して、都市開発・観光事業が317億円です。
この投資額を見れば、フジ・メディアの目指す方向が明確に出ているのではないでしょうか。
投資額を見れば、フジ・メディアは立派な不動産会社です。テレビ会社ではありません。
フジ・メディアは子会社サンケイビルでオフィスビル等の運用を行い、そして新規事業としてホテルの拡大にも取り組んできました。コロナによってホテル事業は大幅な赤字に陥っていますが、今後も都市開発・観光事業=不動産事業への投資は続ける方針なのです。
そして、今回のコロナ禍においてフジテレビは番組制作費を一気に削ってきました。これでは、これからも地上波の番組が面白くなるのは難しいでしょう。NETFLIX等、コロナ禍において人気を保つにはやはりコンテンツ制作におカネをかける必要があるのではないでしょうか。
しかし、フジテレビの運営は逆の方向であり、製作費をかけずに何とか視聴率を獲得し、広告費を得ていこうということです。そして、テレビにおカネをかけるよりも、不動産におカネをかけようとしています。その方が利益が獲得できると考えているのでしょう。
フジ・メディアは、そしてフジテレビはメディアから不動産屋になろうとしているということになります。それが明確に表れていた2021年3月期3Qの決算でした。