2022年はどのような年になるのでしょうか。
新型コロナウイルス感染症の流行は収まるのでしょうか。
世界各国の金融緩和は終息するのでしょうか。
そして、そのような中で金融業界はどのようになっていくのでしょうか。
今回は、様々な変化の入り口に立っているように感じられる本年の年初において、過去の金融や銀行にまつわる名言・格言について確認してみたいと思います
銀行の存在について
銀行のビジネスについて、近時で多く取り上げられたのは、ビル・ゲイツの以下の発言ではないでしょうか。
“Banking is necessary, but banks are not.”
すなわち、「銀行機能は必要だが、銀行(という会社)は必要ない」という発言です。1994年の発言です。
非常に示唆深く、そして1994年において、このような洞察をしていたことに驚かされます。
フィンテックが台頭し、銀行機能が分解(アンバンドリング)されていくことを見越していたということなのでしょう。現在は、このアンバンドリングが進展していく可能性は相応に高くなっています。
これに対して、三井住友フィナンシャルグループの太田社長は「銀行が不要になるのであれば、我々自身が銀行でなくなればいい」(三井住友フィナンシャルグループ20年史)と発言しています。
日本のメガバンクの一角のトップがこのように発言することは驚きであると共に、銀行が置かれている危機的状況を端的に表しているということでしょう。
2021年のNHK大河ドラマの主人公であった渋沢栄一は「銀行は太河のようなものである。銀行に集まってこない金は、溝に溜まってる水や、ポタポタと垂れる雫(しずく)と同じである。せっかく人を利し、国を富ませる能力があっても、その効力が表れない。お金は、より集まって太河となって流れたとき、大きな力が生まれる」という言葉を残しています。
今後も銀行がそのままの形で存在し続けるかは分かりません。しかし、渋沢栄一が指摘しているように資金は集まらないと大きな力を発揮しません。銀行の機能自体は今後も必要とされることだけは間違いないでしょう。
銀行の企業文化について
TBSの人気ドラマ半沢直樹で取り上げられた銀行のやり方は「銀行は雨の日に傘を取り上げ、晴れの日に傘を貸す」(半沢直樹)です。
ご承知の通り、この意味は、「銀行は本当にお金が必要な時には貸してくれず、お金が必要ない時にお金を貸してくれる」ということになります。
この元ネタは、米国の詩人であるロバート・フロストの名言です。
“A bank is a place where they lend you an umbrella in fair weather and ask for it back when it begins to rain.”
「銀行は快晴のときに傘を貸し、雨が降り始めたらそれを返すように要求してくるところである。」
銀行のこのようなふるまいは最低だと思われる方は多いでしょうが、この名言はある意味で真実です。銀行は預金者のお金を安全に運用する使命を負っています。従って、損する可能性があるような取引を簡単に行うことはありません。(但し、この行動だけでないのは、バブル崩壊後の不良債権処理時代に証明されているようにも思います)
ロバート・フロストの明言と同じく有名なのは以下の名言です。
“A bank is a place that will lend you money if you can prove that you don’t need it.” ~ Bob Hope”
「銀行は必要ないと証明できれば お金を貸してくれる場所だ」
この名言はイギリス生まれのアメリカ合衆国コメディアン・俳優であるボブ・ホープのものです。まさに言い得て妙というところでしょう。
そして、銀行の根底にあるのは金融業としての以下の考え方でしょう。
「金を貸すか貸さんかはこちらの勝手や。 金融業とはそういう考え方で成りたっとんのやで」(漫画/ナニワ金融道)
これが金貸しの根本でしょう。
また、銀行の行動原理を表すには以下のことわざも参考になります。
”Don’t put all your eggs in one basket.”
「卵は一つのカゴに盛るな」
これは米国のことわざです。そもそもは投資についてのことわざですが、銀行の融資にも当てはまります。銀行は大きくお金を貸したいとは考えていません。様々な企業に貸出を行うことでリスクを分散させているのです。
また、銀行の企業文化については忘れてならないことも言葉として残されています。
「銀行員は単なる金貸しではない。銀行員は人を見て金を貸すのであって、信用できる人なのか信用できない人なのかを見極めることが最も重要である。」(伊夫伎一雄/元三菱銀行頭取)
人を見てお金を貸すことが出来ている銀行員はどの程度存在するでしょうか。非常に思い言葉です。
「貸すも親切、貸さぬも親切」(小原鐵五郎/元城南信用金庫理事長)
このような名言も残っているのです。
そして、今後の銀行業については、このような言葉あります。
「銀行はいまや一種の情報産業です。お金だけではない。いい情報を選別し取引先にふさわしい情報を早く提供する。一昔前とは変ってきました。」(巽外夫/元住友銀行頭取)
随分前の言葉ではありますが、銀行業の役割変化を言い表している至言の一つだと思います。
資産運用について
今まで銀行にまつわる名言・格言を見てきました。
ここで少し本論とは逸れるかもしれませんが、資産運用についての名言・格言についてもご紹介しておきます。
「船は沈むが、株は沈まない。」
「株屋・相場師などと軽蔑されるのは、ただ目の前の利益に追われるからで、会社の資産内容を良く検討し、業績・将来性などを調査研究することが大切。」
これらの言葉は野村證券創業者の野村徳七が残した言葉の一部です。
また、フィデリティインベスメンツのファンドマネージャーとしてマゼラン・ファンドを運用していた世界最高のファンドマネージャーの一人であったピーター・リンチは以下の言葉を残しています。
「十分な銘柄調査の結果できあがったポートフォリオは、債権やその他の金融商品のポートフォリオよりも長期的には利回りはよい。会社というものはキャッシュを生む工場。長期であっても選別が不十分であれば、ベッドの下に現金を置いておくほうがましである。」
近時、投資を進めるセミナーや書籍、動画が氾濫しています。しかし、相場に勝つのは簡単ではありません。相場が完全にランダムであるなら、運でしか勝つことは出来ないでしょうが、資産運用で結果を出してきた先人は銘柄調査の大切さを伝えています。
また、資産運用(リスク)を避けることが良策とは限らないことを説明する時に、使われる名言も一つご紹介しておきましょう。
「毎月、少しずつお金を貯めていきなさい。そうすれば、年末にはびっくりするでしょう。あまりの少なさに」(米国作家/アーネスト・ハスキンズ)
この言葉は様々なに解釈できますが、資産運用の必要性を説いているようにも思えます。
そして、マーケットにおける価格については世界最高の投資家の一人であるジョージ・ソロスの言葉が金言として残っています。
「「市場は常に間違っている」というのは私の強い信念である。関係者は、世界の金融市場が消えてなくなることは有り得ないかの如く話をする。しかしそれは間違いである。市場参加者の価値判断は常に偏っており、支配的なバイアスは価格に影響を与える。」
バブルか否か、今の株価は高いのか低いのか、様々なことを投資家は悩みます。このソロスの言葉も頭の片隅に置いておけば良いかもしれません。
最後に
今回は金融や銀行にまつわる名言・格言の一部を取り上げました。
銀行は近時、その存在基盤そのものが揺らいでいるように思われます。預金を集めて貸出を行うというビジネスが儲からなくなくなってきたからです。
しかし、銀行は必要無くなったとしても、銀行の機能が世の中に必要であることは間違いありません。銀行が必要無くなったら、銀行では無くなれば良いのです。銀行では無くとも、銀行機能は提供できることになっていくでしょう。
銀行(金貸し)は嫌われるビジネスです。
昔から嫌われています。
その銀行が、これからも「雨の日に傘を取り上げ、晴れの日に傘を貸す」だけで成り立つのか、真剣に考える時が来ているようです。
尚、最後に一つの名言を。
「あなたが一番影響を受けた本はなんですか」 「銀行の預金通帳だよ」(バーナード・ショー/アイルランドの劇作家)
おカネは普遍のようです。