メガバンク3社の2021年度の通期決算が出そろいました。
ロシアによるウクライナ侵略の影響や米国金利上昇に伴う有価証券運用の不芳等の要因がありながらも、全てのメガバンクの最終利益が前年度を大きく上回り、合計で2兆3,678億円となりました。最終利益が3社合計で2兆円を超えるのは4年ぶりとなります。
特に、三菱UFJフィナンシャル・グループの最終利益は、過去最高益を更新しています。
このようなメガバンクの決算ですが、連結ではなく銀行単体の決算で比較すると違う風景が見えてきます。
今回はメガバンクの単体決算比較を確認していきたいと思います。
単体決算比較
では、早速に単体業績の比較をしてみましょう。
以下はメガバンク各社の2022年3月期単体決算(2021年4月~2022年3月)を比較したものです。尚、三菱UFJとみずほは信託銀行の単体決算も公表されていますが、あくまで銀行単体の決算数字です。
(出所 各社決算資料より筆者作成)
この比較におけるポイントは以下となります。
- 一般企業の売上高に相当する業務粗利益では三菱UFJ銀行がトップの座から転落し、三井住友銀行がメガバンク単体のトップに
- 本業の売り上げである資金利益については、三井住友銀行がトップ
- 手数料収入である役務取引は三菱UFJ銀行がトップであるものの、3行ともそこまでの差はない
- 各行とも米国の金利上昇局面において国債等債券関係損益が大幅に悪化している
- 三菱UFJは、経費が他行比圧倒的に高い
- そのため、本業の利益(一般企業の営業利益)は三井住友>みずほ>三菱UFJの順になっており、本業の利益では三菱UFJは単体でメガバンク最下位
- 政策投資株式の解消については、三菱UFJと三井住友は積極的に売却した模様
メガバンクの一般的なイメージは、三菱UFJ銀行が最大手であり、三井住友銀行、みずほ銀行と続くことになります。但し、単体の規模だけで比較すると、業務粗利益も三井住友銀行がトップとなりましたので、三井住友銀行がメガバンク最大手と言えます。
但し、これには考慮すべき要因があることは否定できません。例えば、三菱UFJ銀行は海外拠点を現地法人化している事例が多く、単体の業績には反映されていないものと思われます。そのため、海外に強いとされる三菱UFJ銀行の特徴が、単体決算では反映されていないかもしれません。
それでも単体決算で三井住友銀行がトップの座を確保したことには大きな意味があります。
今後、三菱UFJ銀行は、他行比で圧倒的に高い経費削減を加速するでしょう。
まとめ
メガバンクは3行とも持株会社化し連結経営を行っています。証券、リース、クレジットカード、消費者金融、信託銀行等、様々な業態を持株会社傘下に収めており、銀行単体の決算数値を並べて比較することにどの程度の意味があるのかとお考えになる方もいるでしょう。
しかし、メガバンクの経営を担っているのは、銀行です。銀行単体決算の差は、メガバンクの経営陣の考え方、行動に大きな影響を及ぼすことは間違いありません。少なくとも三菱UFJ銀行は単体としてコスト削減を進めていくことは間違いないでしょう。
三菱UFJフィナンシャル・グループは連結決算としては過去最高益を叩き出しましたが、その中心となる銀行の決算は厳しい状況にあるのです。今後も銀行の単体決算には注目をせざるを得ません。