銀行員のための教科書

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どこよりも分かりやすい2021年度上半期メガバンク単体決算比較

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メガバンク3社の2021年度上半期の決算が出そろいました。

融資先の貸し倒れに備える与信関係費用が想定より減少し、3社とも大幅な増益となっています。

特に三菱UFJは今期に過去最高益を更新する予想となりました。2015年3月期に計上した最高益1兆337億円を超え、7期ぶりに最高益を更新する見通しです。

このメガバンクの決算ですが、連結ではなく銀行単体の決算で比較すると違う風景が見えてきます。

今回はメガバンクの単体決算比較を確認していきたいと思います。

 

単体決算比較

では、早速に単体業績の比較をしてみましょう。

以下はメガバンク各社の単体決算(2021年4~9月)を比較したものです。尚、三菱UFJとみずほは信託銀行の単体決算も公表されていますが、あくまで銀行単体の決算数字です。

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(出所 各社決算資料より筆者作成)

この比較におけるポイントは以下となります。

  • 一般企業の売上高に相当する業務粗利益では三菱UFJ銀行がトップ
  • 本業の売り上げである資金利益については、三井住友銀行が三菱UFJ銀行を上回る
  • 手数料収入である役務取引は3行ともそこまでの差はない
  • 三菱UFJと三井住友は国債の売却益を2021年度上半期はあまり計上していない(みずほは前年もあまり計上していない)
  • 三菱UFJは、経費が他行比圧倒的に高い
  • そのため、本業の利益(一般企業の営業利益)は三井住友>みずほ>三菱UFJの順になっており、本業の利益では三菱UFJは単体でメガバンク最下位
  • 与信関係費用は、みずほだけがマイナスになっており、他行比で与信のコントロールに課題がある可能性があり
  • 政策投資株式の解消については、三菱UFJと三井住友は積極的に売却した模様であるが、みずほは動きが鈍い。
  • 三菱UFJは本業の利益(業務純益)ではメガバンク最下位だったが、与信関係費用の戻り入れ益および政策投資株式売却により経常利益・当期利益は首位

以上がメガバンク単体の2022年3月期第2四半期決算比較でした。

 

まとめ

メガバンクは3行とも持株会社化し連結経営を行っています。証券、リース、クレジットカード、消費者金融、信託銀行等、様々な業態を持株会社傘下に収めており、銀行単体の決算数値を並べて比較することにどの程度の意味があるのかとお考えになる方もいるでしょう。

また、三菱UFJは、調べる限り、米国事業や東南アジア事業等は別法人化しています。従って、国際業務については各行の単体比較は意味が無いというご意見もあるでしょう。

しかし、メガバンクの経営を担っているのは、銀行です。銀行単体決算の差は、メガバンクの経営に大きな影響を及ぼすことは間違いありません。少なくとも三菱UFJ銀行は単体としてコスト削減を進めていくことは間違いないでしょう。

三菱UFJフィナンシャル・グループは過去最高益を今期見込んでいますが、その中心となる銀行の決算は厳しい状況にあるのです。今後も銀行の単体決算には注目が必要です。