銀行員のための教科書

これからの時代に必要な金融知識と考え方を。

運用はインデックスでもアクティブでも良いが、最も問題なのは「個人の感情」である

 

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インデックス型とアクティブ型の投資信託のどちらに投資すべきかという議論が近時なされています。

特に、森金融庁前長官が個人の運用についてはインデックス・ファンドを推奨したこともあり、個人投資家にはインデックスファンド信仰のようなものがあるかもしれません。

今回は、このインデックス型とアクティブ型の運用ファンドの違いについても触れながら、個人投資家として運用で重要なポイントについて考察していきます。

 

意見記事

インデックスファンドとアクティブファンドについて、興味深い記事がありましたので、まずは引用(抜粋)します。

「思考停止」のインデックス型ファンドが危険な理由
2018年10月14日 ダイヤモンド・オンライン
(株式会社マネネ 代表取締役社長CEO 森永康平)

(中略)

 最近のトレンドは、低コストのインデックス型ファンドを積み立てるスタイルだ。低コストのインデックス型ファンドというのは、たとえば購入手数料が無料(ノーロード)で、保有期間中に差し引かれていく信託報酬も税込みで年率0.20%前後という低コストが特徴。日経平均株価やTOPIX(東証株価指数)、あるいは海外などの株価指数に連動する投資信託だ。このような投資信託で毎月同じ金額を定期的に買っていくのが投資の王道となっている。

● 偏った情報だけで投資を学ぶリスク

 話を戻すと、冒頭の投資家“ルーキー”の動向を聞きながら、筆者が違和感を覚えた点は2つである。1点目は投資歴が1年前後とそれほど長くなく、投資信託をメインにしている個人投資家が、ほとんどの割合で前述の王道スタイルを取っていること。2点目は1点目の副次的な作用だが、それ故に最初に投資対象とする投資信託を決めたら、積立投資の設定をして、特に相場も見ないし、ニュースも見ていないということだ。

 筆者は投資というものは、何年も試行錯誤を繰り返し、そのうえで自分の勝ちパターンが確立されていくものだと考えているが、投資歴が長くない個人投資家が、低コストのインデックス型ファンドを積み立てていくという“洗練された”投資スタイルを身に付けていることに違和感を覚えた。

 どのようにして、その“洗練された”スタイルを身に付けたのかと聞くと、色々な個人投資家のブログを読んで、そのようなスタイルが最も正しいと判断し、実践したという答えが多い。たしかに、投資信託を活用した資産運用に関する個人ブログなどを見てみると、低コストのインデックス型ファンドを積み立てるということが最良の投資手法であり、高コストのアクティブ型ファンドを購入することは愚の骨頂であるような内容が多い。

● インデックス型ファンドの積み立てが最良と裏付ける、2つの理由は妥当か

 インデックス型ファンドの積み立てについて、実際に個人投資家にそのスタイルが最良であると判断した理由を聞くと、アクティブ型ファンドは手数料が高すぎることをあげる。加えて長期間で見た時に、アクティブ型ファンドはインデックス型ファンドのパフォーマンスを上回ることができないということを指摘する。

(中略)

 しかし、長期間で見たときのアクティブ型ファンドとインデックス型ファンドのパフォーマンスについては表面的な情報を鵜呑みにしてしまっている印象だ。たしかに10年以上に渡ってインデックスに勝ち続けるアクティブ型ファンドはそれほど多くない。S&Pダウ・ジョーンズ・インデックス社が年に2回公表している「SPIVA (S&P Indices Versus Active)」によれば、2017年末時点で日本の大型株式ファンドの場合は55.96%、中小型株式ファンドの場合は63.52%のファンドがインデックスに負けている。ただし裏を返せば、インデックスに勝っているアクティブ型ファンドは実在するし、1年ごとに見れば、インデックスに勝っているアクティブ型ファンドは意外に多い。事実、前述のデータも期間を1年で見てみれば、インデックスに負けた大型株式ファンドは15.28%、中小型株式ファンドは13.07%と数字は一気に改善される。 

(中略) 

● 資本資産価格モデル(CAPM)とファクターモデル

 インデックス型ファンドでの運用は、一般的にパッシブ運用ともいう。考え方のスタートとして、「資産の期待リターンは、安全資産のリターンと市場全体の変動と連動したリスクへの見返り」と考える資本資産価格モデル(CAPM)が成立すると仮定する。するとインデックス、つまり市場ポートフォリオは、投資家にとって最適な選択肢となる。

(中略)

 ロベコ社が1986年から2016年までの期間において、世界株式データを使いファクター特性の魅力度順に5分類にグループを分けて検証したところ、最下位グループにあたる20%の銘柄群は30年間に渡りプレミアムがマイナスになった。キャッシュに対して年率2.5%、高格付け国債に対しては同4.0%のマイナスである。これはつまり、「市場ポートフォリオに投資するという事は、全体のパフォーマンスを押し下げる銘柄には目をつぶり、投資をしている」ということを意味している。

 ファクターモデルなどを駆使し、このような下位20%にあたる銘柄を排除したインデックスに投資する運用を「エンハンスト・インデックス」などと呼んだりするが、その手間となる購入手数料や信託報酬なども同様にコストとみなすと、本当にパッシブ運用が最適解なのか、というところに行き着く。

 CAPMやファクターモデルといったベーシックな指標の理解なくして、インデックス型ファンドを選択する個人投資家は少なくない。たまたま目にしたブログなどの情報が、すべてを網羅したものと考えてしまうと、足元をすくわれる。

 当然ながら、インターネット上の情報は手に入りやすい分、読み手は情報を精査する必要がある。どこかの個人投資家が、個別にうまくいった手法を読んだだけで投資を学んだ気になるのは危険だ。最低限の経済学、ファイナンス論、投資戦略の書籍は読んで理解することが賢明だ。何事も原点回帰は大事であり、その時に一助となるのは往年の名著であることは疑いようがない。

● 投資の果実はお金だけではない

 さて、最後に問いかけたいのは、投資の果実はお金だけなのだろうか、ということだ。冒頭、筆者が挙げた違和感の2点目である「最初に投資対象とする投資信託を決めたら、積立投資の設定をし、相場もニュースも見ない」という点だ。

(中略) 

 筆者は投資の果実はお金だけだとは考えていない。市場を上回るリターンを出すべく、本を読んで勉強し、市場を観察し、個別企業の財務分析や業界・産業情報を足を使って稼ぎ、時には各国の経済指標から世界経済の動向を予測する。このような日々の努力によって、マーケット脳は育てられていく。

 リーマンショックから10年が経ち、日本株式市場は右肩上がりを続けてきた。この数年で相場の世界に入ってきた投資家達は下落相場を知らないだろう。そうした観点からも歴史を学ぶことは重要だ。下落が続く相場においては、積立投資も累積リターンを削っていくだけである。その場合は一部益出しをしたり、キャッシュポジションを多めにとるなどの対策が必要になることも知っておくべきだろう。

 もちろん、これらの努力をしたところで、必ず投資がうまくいくわけではない。ただし、それは投資の果実がお金だけである場合の話。努力によって身に付いた知識や洞察力は必ず実生活でも役に立つし、人生の質も高めてくれる。せっかく相場の世界に足を踏み入れるのであれば、思考を止めずにお金以上の投資の果実を手に入れることも視野に入れてみてはいかがだろう。そうすることでお金を深く知り、結果として数字もついてくるようになるだろう。
森永康平

(出典 「思考停止」のインデックス型ファンドが危険な理由(ダイヤモンド・オンライン) - ニュース・コラム - Yahoo!ファイナンス

 これが筆者が気になった記事です。

 

インデックス運用とアクティブ運用

インデックス運用とアクティブ運用について、どのような特徴があるのか、確認もしておきましょう。あくまで参考です。

インデックス運用は、プラスもマイナスも市場の動きとほぼ一緒になりますから、まわりの人より大きく儲けようという人には向かない運用かもしれませんね。インデックス運用は、投資先の国や地域や市場とともに投資した資産も成長していく運用方法といってもいいでしょう。もちろん市場が下落した場合は、インデックスファンドも連動して下がることになります。なお、プロの力量や手間を多く必要とするアクティブ運用とは異なり、インデックス運用を行うファンドは、運用者への信託報酬などの運用コストが安いという傾向があります。

アクティブ運用とは、目安となる指数(ベンチマーク)を上回る成績を目指す運用スタイルのことです。例えば、日本株で運用する投資信託の場合、日本株の代表的なインデックス(指数)である日経平均株価やTOPIX(東証株価指数)などのインデックスをベンチマークとして、それを上回る成績を目指します。運用のプロであるファンドマネージャーが市場や個別銘柄の調査、分析を行い、その結果をもとに銘柄を選定して運用します。

運用のプロが緻密な調査や分析に基づき、市場平均を上回る運用成果を目指して運用するため、アクティブ運用を行うファンドは、信託報酬などの運用コストがインデックス運用に比べて高いという傾向があります。

(出典:SMBC日興証券ホームページ)

これがインデックスとアクティブ運用との違いです。

 

所見

上述の記事では、インデックス運用もアクティブ運用にも長所・短所があると述べられており、その点については、筆者も賛同致します。また、「投資家となるのであれば、勉強もせよ」と主張しているのもその通りです。

上記の記事は良記事だと思うのですが、勝手ながら筆者も補足をしたいと思います。

筆者は個人的にではありますが、アクティブだろうとインデックスであろうと、個人投資家が「望む」運用が可能であればどちらでも良いと考えていますが、基本的にはインデックスの方が個人にとってはメリットが高いのは間違いありません。そして、少なくとも銀行から窓販で投資信託を買うことは得策ではないのではないかと考えています。

やはり、投資を行うのであれば、基本的にはコストが安い商品で運用すべきです。最初にマイナスからスタートする(例:販売手数料を数%取られると、その販売手数料分のプラスを出さないと元本が棄損)のは運用結果の足を引っ張ります。金融商品のコストの多寡により投資結果はかなり変わってくるのです。ただし、同じような運用であればということです。

株式運用を例にとれば、最も良いのは現物株式(トヨタやソニーという個別株式)もしくはETF、次に販売手数料の安いインデックスファンドです(ネット証券で購入するイメージ)。ただし、例えば「イスラエルのIT企業に投資したい」というニーズもあるかもしれません。そのようなニーズがETFやインデックスファンドで満たせない場合には、アクティブファンドを探すこともあり得るのではないかと思います。

また、近時、SNS等で対外的に情報発信しているような投資家は、年齢から考えて、リーマンショック後であったり、アベノミクスがスタートした後に投資をスタートしている可能性が高いと思います。 マーケットが良かった時に積み立て投資を開始している可能性があるのです。

運用というのは様々な要素がありますが、タイミングというのは非常に大きな要素です。このタイミングについて決断を下すためには、マーケットの勉強も必要でしょう。

マーケットが過熱しているのか否か、歴史的に見てどうか、チャートは何を語るのか、金利が上昇した場合には何が起こるのか、等々は未来を正確には予想できなくとも、過去が参考にはなるでしょう。

バブル絶頂期に積立投資を開始していれば、そう簡単にプラスにはならないことは下のチャートをみれば分かるでしょう。

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(図出典:楽天証券ホームページ)

そして、筆者にとっては、運用を考えていくうえで最大のポイントは「感情のコントロール」「損切のルール化」ではないかと思います。

感情のコントロール・自己のコントロールは、ブログを見ても、本を読んでも学べません。積み立ては良いやり方だとは思いますが、マーケットが悪くなった時にもずっと積み立てを続けられるでしょうか。右肩下がりだと怖くなり、同じように購入できなくなるのではないでしょうか。損が出ても、「また戻る」と楽観的に考えてしまっていないでしょうか。自分の投資方針が間違っていても、簡単には方針変更はできないものです。

損切もきちんとルール化しておかないと、二度と運用で取り戻せない程度まで損失が膨らんでしまう可能性があります。

また損をしてしまうと、そこから取り戻すのは難しいのです。

例えば、100万円で株式を購入していたところ、▲20%の損失が出てしまったとします。この損失を取り戻すためには、+20%の利益を出せば良い訳ではありません。80万円×125%=100万円です。損した後は元本が棄損しているところからスタートするため、さらに高い利益を出さないと元のレベルには戻らないのです。

「人」は、利食いは素早く、損切は遅く、行動してしまうものです。自分だけは違うと思っていても、現実に問題が起きた時にはどうでしょうか。

この感情のコントロール・損切のルール化を実践するには、マーケットでの経験を積んだ方が良いのではないでしょうか。(これはあくまで筆者の経験則でしかないかもしれませんが、本当に難しいのです。)

感情のコントロールができれば、損切のルールも実践できます。楽観的に考えすぎることもなく、 損失が膨らみすぎて運用から撤退せざるを得なくなることも避けられるでしょう。

筆者からすると、投資対象・商品の選択は相応に大事、タイミングはより大事(特にインデックス投資のようにある程度マーケット全体の影響を受ける場合)ですが、最も大事なのは「感情のコントロール」なのです。

これには様々な意見があるとは思いますが、投資家各人が考えるべきことではないでしょうか。少なくとも筆者のような凡人にとっては最も大事なことなのです。