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TKPと大塚家具の資本提携と、大塚家具の今後に起こる可能性があること

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貸会議室大手のティーケーピー(TKP)の中間決算が発表されました。

TKPは大塚家具と資本提携を行ったことをご存知の方もいらっしゃるでしょう。

TKPはこの中間決算で大塚家具の株式の減損損失を計上し、最終減益となりました。そして、中間決算を受けて2018年10月16日の株価は大幅に下落しています。

また、TKPの社長が大塚家具への追加出資について日経新聞の取材に対して発言をしています。

今回はTKPと大塚家具の資本提携、そして大塚家具に今後起こり得ることについて簡単に考察します。

 

報道記事

TKPの社長が日経新聞の取材に応じ、大塚家具との提携について語ったと報道されています。以下記事を引用します。

TKP社長、大塚家具へ追加出資を否定 「事業提携で支援」

2018年10月16日 日経新聞

貸会議室大手のティーケーピー(TKP)の河野貴輝社長が16日、都内で日本経済新聞の取材に応じ、資本業務提携を結んでいる大塚家具について「追加出資は検討していない」と話した。現状の提携関係に基づき、家具店の空きスペースを貸会議室に転用するといった方法で大塚家具の経営を支援する。

(以下略)

この記事にあるようにTKPは経営危機にある大塚家具への追加出資は検討していないとしています。 

 

TKPと大塚家具の資本提携 

TKPと大塚家具が資本提携を行ったのは2017年11月です。

当時の記事を振り返ってみましょう。

大塚家具とTKPが提携 10億円出資、店舗一部を会議室に 2017.11.6 産経新聞

 業績不振が続く大塚家具と、会議室やホテルを運営するティーケーピー(TKP)は6日、資本・業務提携を結んだと発表した。第三者割当増資によりTKPが10億5千万円出資し、大塚家具から21日付で発行済み株式を議決権ベースで6.82%取得。大塚家具が整理を進めるショールームの空きスペースをTKPが会議室や宿泊施設として活用するなど、協業を進める。
 大塚家具が同日発表した平成29年1~9月期決算は最終赤字58億円(前年同期は40億円赤字)だったが、TKP施設への商品納入や内装デザインの受注拡大による収益力回復が見込まれる。大塚社長は「今回の提携はプラスへと向かう大きな転機だ」と発表会見で述べ、TKPの河野貴輝社長も「上質な会議室やホテルを展開する上で相乗効果は大きい」と語った。

(以下略)

TKPが出資した金額は10.5億円です。

2019年2月期中間決算(2018年3~8月)では、投資有価証券評価損として8.2億円を計上しました。この損失は大塚家具の株式の下落によるものです。

TKPは大塚家具に投資した金額の約8割の損失を被ったことになります。

TKPはこの資本提携で約8億円の損失を出しました。一方でメリットも享受している可能性はあります。大塚家具の店舗の転貸を受けて、好立地の物件に出店が出来ているからです。また、大塚家具から相場よりも安い賃料で借りている可能性もあります。しかし、それでも損失額をカバーするほどのメリットを享受している訳ではないでしょう。最終利益が20億円程度の企業にとって、8億円というのはかなり大きな損失です。

すなわち、TKPにとっては今回の資本提携は(現時点で見ると)失敗だったといえるのではないでしょうか。

TKPは、経営危機にある大塚家具へ追加出資を行うという報道もなされてきました。しかし、今回の報道で社長が語ったことが本当なのであれば、大塚家具に追加出資を行い、子会社化することはないということになります。

筆者は、大塚家具への追加出資をTKPが行わないことは正しい選択となる可能性が高いと考えます。

過去の記事に書きましたが、大塚家具を買収するにはTKPは規模が小さく、収益力・企業体力からいってリスクが高すぎるのです。そして、大塚家具との相乗効果は限定的です。 

www.financepensionrealestate.work

従って、TKPはこれ以上、大塚家具に深入りすることは避けるべきでしょう。

 

大塚家具にこれから起こること

2018年8月に中間決算を発表して以降、大塚家具からは資本提携・経営戦略等が発表されていません。

そして現在は最大80%OFFの在庫一掃SALEを開催しています。資金繰りに窮し、商品在庫をキャッシュに変えようとしているということです。

一度、大規模なSALEをやってしまえば、消費者は次のSALEを待つようになります。結果として、大塚家具の将来の販売単価は下がることになるでしょう。(コンビニが廃棄間際の商品でも値下げしなかったのは、この消費者の行動を知悉しているからです)

すなわち、今回の大塚家具の在庫一掃SALEは、自社の首を絞めていることになります。 目先のキャッシュは確保できるかもしれませんが、着実に企業の「寿命」を縮め可能性が高いでしょう。

では、今後の大塚家具には何が起きるでしょうか。

筆者は大塚家具の経営危機が見えてきた段階では、他社の傘下に入ることになるだろうと考えていました。しかし、いまだに資本提携の報道がなされないことでも分かる通り、大塚家具には魅力がないということでしょう。

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そうすると、大塚家具にこれから起こることは(販売力が回復しない限り)資金繰り破綻となります。

筆者は、一度破綻するならばスポンサーが現れる可能性があると考えます。プレパッケージ型(事前調整型)の民事再生を選択肢として大塚家具や取引銀行が考えていてもおかしくはないでしょう。家電量販店や住宅関連企業であれば相乗効果もある程度は期待できます。

早ければ数か月後には何らかの動きがあるのではないでしょうか。ただし、その動きは既存の株主にとっては良いものとは限らないかもしれません。