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上場企業に求められる情報開示の拡充~役員報酬と政策保有株式~

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金融庁が上場企業に対して情報開示の拡充を求めています。

今回は情報開示が拡充される方向にある項目のうち、役員報酬および政策保有株式について現状の流れを取り上げます。

また四半期開示についての議論についても押さえておいた方がよいでしょう。

今後、企業においてどのようなことが想定されるのか、銀行はその中でどのような役割を果たすことができるのかについて考察しましょう。

 

報道内容

金融庁が上場企業に対して有価証券報告書の記載情報の拡充を求めてきています。

概要は以下の記事の通りです。

有価証券報告書 トップ自ら発信
2018/07/03 日経新聞

 金融庁は上場企業に対し有価証券報告書(有報)に載せる情報の拡充を求める。経営者に競合相手と比べた優位性や、経営上のリスクを独自の分析を交えて発信するよう促す。取締役の報酬の決め方や持ち合い株の保有方針もより詳細に開示させる。数字の羅列の形式にとどまる有報を、実質的な投資判断の材料とすることを目指す。
 金融庁は2017年末から情報開示に関する作業部会で議論を進め、2日までに報告書をまとめた。今秋から具体的に盛り込むべき内容の指針づくりを始める。有識者を交えて策定し、19年度にも適用する。
 有報は速報性を重視する決算短信よりも後に公表される。その分開示の内容は多岐にわたり、「企業情報の宝庫」ともされてきた。だが実態は紋切り型の表現も目立ち、投資家が有効活用できるとは言えない状況にあった。
(中略)
 あわせて定量的な情報の拡充も求める。ひとつが役員報酬だ。現在は1億円以上の報酬を得ている役員の氏名と金額の開示が義務づけられている。これに報酬の固定部分と業績連動部分の内訳や、業績連動部分はどの経営指標にひもづいているかの情報提供も促す。
 米英では取締役の報酬の決め方や報酬内容の一覧が開示されている。日本でも資生堂は社長兼最高経営責任者(CEO)から執行役員まで、それぞれ基本報酬と業績連動報酬の構成比を有報で公表している。金融庁はこうした模範的な事例を積極的に発信し、全体の底上げにつなげる。
 「持ち合い株」など政策保有株の開示対象も拡大する。現在は保有額上位30銘柄が対象になっているが、関連する内閣府令を改正し、対象銘柄数を増やす。増減とその理由の開示も求める。
 企業が投資家に有益な情報を出すのは、株式市場の活性化に欠かせない。これまでもコーポレートガバナンス・コード(企業統治指針)や、機関投資家の行動指針である「スチュワードシップ・コード」を策定。今回の有報の充実は、株主と経営者の対話を支えるパイプを太くする基本インフラという位置づけだ。

以上が今回の記事で取り上げる役員報酬・政策保有株式についての情報開示にかかる報道です。

 

ディスクロージャーワーキング・グループ

金融審議会「ディスクロージャーワーキング・グループ」(いわゆる有識者会議、座長 神田秀樹 学習院大学大学院法務研究科教授)では、2017年12月より、計8回にわたり、企業情報の開示・提供のあり方について、検討及び審議を行ってきました。

金融庁のホームページには同ワーキング・グループの議事内容が開示されています。

そして今回、同ワーキング・グループの報告(提言)が公表されました。

上記の日経新聞の記事で取り上げられている金融庁の方向性は、当該報告(提言)がベースとなる見込みです。

この報告では様々な観点が取り上げられ、経営者に競合相手と比べた優位性や、経営上のリスクを独自の分析を交えて発信させる等、定量情報のみならず定性情報についても情報開示を拡充し、投資家の判断に有用な情報を提供していこうとしています。

この報告の中で筆者としては役員報酬および政策保有株式についての情報開示が大きな影響を与えるのではないかと考えています。

それでは以下で各項目についての報告を見ていくこととしましょう。

 

役員報酬 

まずは役員報酬からです。

上記ワーキング・グループの報告を以下で確認しましょう。

以下は報告書の抜粋となります。

Ⅱ.建設的な対話の促進に向けたガバナンス情報の提供
1.基本的な考え方
資本市場の機能を強化し、国民の安定的な資産形成を実現する観点から、政府においてはコーポレートガバナンス改革に取り組んでおり、2017 年5 月にはスチュワードシップ・コードの改訂、本年6月にはコーポレートガバナンス・コードの改訂及び「投資家と企業の対話ガイドライン」の策定が行われた。
こうした取組みを受け、投資家と企業との対話をより建設的で実効的なものとしていく観点から、より充実したガバナンス情報が提供されるとともに、提供方法が改善されることが求められる。

2.役員報酬に係る情報 

企業価値の向上に向けて経営陣にインセンティブを付与するため、近年、業績連動報酬の導入が進んでいる。報酬体系が企業価値の向上に向けた経営陣の適切なインセンティブとして十分機能しているか否かは、企業の中長期的な成長期待を判断する要素の1 つとして、投資判断や対話において重視されている。
我が国の現在の開示制度においては、役員報酬について、以下の情報を開示することとされている。

  • 提出会社の役員の報酬等の額又は算定方法の決定に関する方針
  • 役員の区分ごとの報酬総額
  • 報酬種類別の総額
  • 対象となる役員の員数
  • 連結報酬総額1億円以上の役員の提出会社役員及び連結子会社役員としての報酬総額
  • 並びにそれらの報酬の種類別の額

一方、現在の我が国企業の役員報酬の開示については、

  • 固定報酬と業績連動報酬の構成割合や、業績連動報酬の額の決定要因等、報酬プログラムの基本的内容が分かりづらい
  • 企業戦略の達成の確度を計る観点から必要な経営戦略の達成度と報酬のつながりが、報酬決定の際のKPI を含めて十分に説明されていない
  • 連結報酬総額1億円以上の役員に関する報酬総額等の開示について、企業価値の向上に貢献した経営陣に対してそれに見合った報酬を提供していくべきとのコーポレートガバナンス上の要請に合ったものとなっていないのではないか

といった指摘がある。

(中略)

我が国においても、経営陣の報酬内容・報酬体系と経営戦略や中長期的な企業価値向上との結び付きを検証できるよう、役員の報酬プログラムの開示において、固定報酬、短期の業績連動報酬(賞与)、中長期の業績連動報酬(ストックオプション等)それぞれの算定方法や固定報酬と短期・中長期の業績連動報酬の支給割合、役職ごとの支給額についての考え方を定めている場合にはその内容など、報酬の決定・支給の方法やこれらに関する考え方を具体的に分かりやすく記載することを求めるべきである。また、役員報酬の算定方法にKPI等の指標が関連付けられている場合には、その指標と指標の選定理由、業績連動報酬への反映方法や、報酬総額等を決議した株主総会の年月日等についても記載されるべきである。
また、実際の報酬が報酬プログラムに沿ったものになっているかや、経営陣のインセンティブとして実際に機能しているかを確認できるようにするため、海外における開示も参考に、トータルシェアホルダーリターンなどとも関連付けながら報酬プログラムに基づく報酬実績について、当期の報酬額に決定した理由、当期のKPI の目標値と実際の達成度、固定報酬と業績連動報酬の支給割合を定めていない場合には当期の支給割合の実績、役職ごとに支給された報酬の状況等が開示されるべきである。

さらに、報酬決定プロセスの客観性・透明性のチェックを可能とするため、算定方法の決定権者、その権限や裁量の範囲、報酬委員会がある場合にはその位置付け・構成メンバー等の情報とともに、その実効性を確認できるよう、取締役会・報酬委員会の具体的活動内容などについても開示を求めるべきである。
連結報酬総額1億円以上の役員に関する報酬総額等の個別開示を求める現行制度については、企業価値の向上に貢献した経営陣に対して、それに見合った報酬を提供していくべきとのコーポレートガバナンス上の要請に合ったものとなっていない可能性があり、再考の余地がある。個別開示を求める制度を見直すに当たっては、報酬水準を基準に区切るのではなく、CEO や代表取締役などの一定の役割を果たす者や、報酬額上位から一定数の者について開示を求めることが、報酬の適切性を検証する上で必要との意見があった。一方、我が国企業の役員報酬の水準が諸外国と比較して低いことや、報酬の内容や決定方針等に関する開示が充実すれば報酬の適切性を検証することが可能となりうることから、個別開示の対象を拡大することは必ずしも重要ではないとの意見もあった。
このため、まずは、役員報酬プログラムの内容の開示の充実を図り、その上で、報酬内容と経営戦略等との整合性の検証の進展や、我が国における役員報酬額の水準の変化等を踏まえながら、必要に応じて個別開示のあり方について検討すべきである。

(P11~13)

これがワーキング・グループの報告における役員報酬の該当箇所です。

現在は、上場企業の役員報酬については、1億円以上の報酬を得た経営者が公表されており、それがニュースでも(ある意味で面白おかしく)報道されています。

しかし、今後は報酬額で公表の基準を区切るのではなく、報酬の適切性を投資家が判断する材料として必要に応じて開示されることになるかもしれません。

取締役は株主から経営を委託された「プロ」であり、サラリーマンの出世すごろくの上がりではありません。今後は、取締役の報酬が業績等企業価値の向上にどのように貢献したかを投資家・株主に分かりやすく説明する必要が企業に求められるようになってくる可能性が高くなってきています。

 

政策保有株式

次に政策保有株式です。

こちらもワーキング・グループの報告から抜粋します。

現行制度では、2011 年から、政策保有株式(保有目的が純投資以外の上場株式)のうち資本金の1%超の銘柄(当該銘柄が30 銘柄未満の場合は、保有額上位30 銘柄)につき、銘柄名、銘柄ごとの保有株式数・貸借対照表計上額・保有目的を有価証券報告書に記載することとされている。
政策保有株式については、企業間で戦略的提携を進める場合等に意義があるとの指摘もある一方、安定株主の存在が企業経営に対する規律の緩みを生じさせているのではないかとの指摘や、保有に伴う効果が十分検証されず資本効率が低いとの指摘があり、政策保有株式に関する情報は、投資判断と対話の双方において重要であると考えられる。
政策保有株式に係る開示の現状をみると、保有目的の説明が定型的かつ抽象的な記載にとどまっており、保有の合理性・効果が検証できないとの指摘があった。特に投資家からは、政策保有株式が中長期的な企業価値向上につながる可能性が必ずしも高くない一方で、少数株主軽視や資本コストに対する意識の低さにつながるリスクが高いことから、保有の目的、効果、合理性等について詳細な開示を求める意見が多く出された。
政策保有株式の保有意義・効果について様々な見方がある中、資本コストをかけリスクをとって株式を保有する以上、政策保有に関する方針、目的や効果は具体的かつ十分に説明されるべきである。また、政策保有株式の保有について、その合理性を検証する方法や取締役会等における議論の状況について開示を求めるべきである。
さらに、個別の政策保有株式の保有目的・効果について、提出会社の戦略、事業内容及びセグメントと関連付け、定量的な効果(記載できない場合には、その旨と保有の合理性の検証方法)も含めてより具体的に記載することを求めるべきである。
また、

  • 政策保有株式のうち1 銘柄当たりの保有株式数・保有額が小さいものについては、企業間の戦略的提携につながるなどのメリットが相対的に小さいにもかかわらず、政策保有株式としての開示対象とならず保有目的が確認できない
  • 時価変動等により開示銘柄に差が生じるケースにおいて、各年の異動状況の把握ができない
  • 政策保有目的と思われる株式保有が純投資に区分されているケースがある
  • 2014 年に株式・債券・その他有価証券の保有状況を示す有価証券明細表の作成が不要とされ、個別銘柄の開示対象が政策保有株式のみとなったことにより、企業が純投資として保有する株式・債券・その他有価証券に関する情報が減少し、企業の財務リスクが把握しにくくなった
  • 政策保有目的のみならず、純投資目的の株式・債券・その他有価証券についても、資本配分の適切性や効率性を検証する観点から、情報開示されることが望ましい

との指摘もみられた。
上記の指摘や、コーポレートガバナンス改革の進展に伴い、経営者の資本効率に対する認識に係る投資家の関心が高まっていることを踏まえれば、以下の開示の充実を図るべきである。

  • 開示基準に満たない銘柄も含め、売却したり、買い増した政策保有株式について、減少・増加の銘柄数、売却・買い増した株式それぞれの合計金額、買い増しの理由等の記載を求める。
  • 開示対象となる銘柄数を増やすべきであるとの意見を踏まえ、開示対象を拡大する。
  • 政策保有目的と思われる株式保有が純投資に区分されているケースがあるとの指摘があることから、純投資と政策投資の区分の基準や考え方の明確な説明を求める。
  • 純投資の対象である株式等についても、重要性を考慮しつつ、一定の開示を求める。

また、投資判断を行う上では、投資先企業が保有する政策保有株式の状況を検証する必要があるのはもちろんのこと、当該投資先企業の株式が政策保有目的の株主に保有されている状況についても検証する必要があるとの意見があった。これについては、提出会社が政策保有株式として株式を保有している相手方が、当該提出会社の株主となっている場合には、実務にも配慮しながら、当該相手方に保有されている株式について記載を求めることが考えられる。
なお、政策保有株式についての議決権行使の内容は、個別の政策保有株式の保有目的効果が達成されているかを判断する上で重要な情報のため、開示すべきとの意見があった一方、政策保有株式を保有する趣旨から考えれば賛成が大宗であると想定されることなどから、開示の意義は乏しいと考えられ、導入については慎重に検討すべきとの意見もあった。

政策保有株式の開示については投資家側の意見がかなり反映された報告内容となったことは間違いありません。

(政策保有株式についての議論詳細は以下の記事をご参照)

今までのワーキング・グループの議論では以下の点等がポイントとされていたものと思います。 

  • 政策保有株式は、ビジネスモデルの競争力や製品·サービスの質の優劣ではなく、株式保有(議決権行使)を梃子にした取引条件交渉が国際競争力を損なう一因となっている可能性がある
  • 日本企業は株主資本コストに対する認識が希薄であり、政策保有株による安定株主比率が高いことが、株主資本コストに対する認識が広がっていない理由ではないか
  • 安定株主比率の高さは、少数株主が軽視されてしまうことにもつながっている

 このような疑念を投資家が抱かないように、政策保有株式に対する風当たりは更に強くなっていくということです。

これは銀行と企業との株式持ち合い関係の解消をより促していくことになるでしょう。

 

四半期開示

また、特に企業側から負担感が重いとして不満の強い四半期開示についても報告されています。

四半期開示

四半期開示制度については、我が国でも様々な意見が聞かれるが、当該制度を見直すべきとする意見としては、以下のようなものがある。

  • 中長期的な企業価値を重視するのであれば、四半期情報の重要性は低くなるので、将来的には、四半期開示は維持した上で四半期報告書と四半期決算短信を統一することや、四半期開示の任意化を検討すべきではないか。
  • 決算短信の簡素化の一方で、企業の実情に応じて決算説明資料が充実され、それに基づいて対話が促進されることは望ましいが、四半期報告書の必要性については検討の余地があるのではないか。
  • 四半期開示制度は、投資家や企業の短期的利益志向を助長し、また、作成に多大な労力がかかるため働き方改革の流れに反する。

他方、四半期開示制度を維持すべきとする意見としては、以下のような意見があった。

  • 中長期視点での投資が求められているため短期的な視点である四半期開示を簡素化するというのは、単純な考えである。中長期の目標に対する進捗度を確認するためには四半期開示は必要であり、企業が示している中長期の戦略が発現するタイミングを確認する意味においても、四半期開示は不可欠である。
  • 株価のボラティリティの増加、一部投資家の誤った投資判断の誘因、経営者の負担増加という問題点も指摘されるが、KPI の継続的な測定や、投資家のinvestment thesis(投資テーマ、仮説)を検証するためにも、四半期開示は特に重要である。
  • 四半期開示は先進国の市場における標準である。
  • 欧米と比較して我が国の上場企業の開示内容が見劣りするとみられている中、四半期開示制度の廃止によって、企業の開示姿勢が後退したと受け取られれば、海外投資家の我が国への投資に水を差すおそれがある。
  • 世界に開かれた自由で活力ある資本市場を作るために長きにわたって取り組んできたものの1つが四半期開示であり、今日これほど多くの海外投資家が我が国の資本市場に投資するようになった背景には、四半期開示を含めた開示の高度化がある。
  • 学術的には、任意開示あるいは強制開示後に、ビッド・アスク・スプレッドの低下、すなわち投資者間の情報の非対称性の緩和、あるいは、資本コストの低下などのベネフィットが欧米市場の研究により報告されており、年4回の決算により利益調整が難しくなることなどにより情報の質・信頼性が向上し、市場の価格形成がより効率的になっ
    ていると解釈される。
  • 四半期開示を任意化することについて投資家の納得を得るためには、まずは日本企業の開示が、例えば英国のアニュアルレポートのように充実し、また、政策保有株式のように海外投資家から不透明とみられている慣行が変化するなど、投資家、資本市場から見た透明性、信頼性を更に高める必要がある。
  • 四半期決算短信は有用である一方、レビューが付されている四半期報告書は、決算数値の信頼性を高めているという観点で極めて重要である。

また、上記に加え、四半期開示制度が廃止されると、個人投資家と機関投資家の間の情報格差が拡がるおそれがあるとの指摘や、英国やフランスでは、四半期開示を行っていない企業の株価が、米国の同業者の四半期開示情報に過剰反応するなど、株価の変動性が高まっているとの研究結果も存在している。
このように、四半期開示については、

  • 中長期の視点で投資を行う観点からも進捗確認の意義を認める見解が大勢であるほか、
  • 現状、非財務情報など中長期的な企業価値向上の観点から特に重視される情報の開示が必ずしも十分とは言えないこと
  • 半期・四半期のみならず、重要な企業情報の開示が全体として適時に行われる枠組み・ガバナンスが必ずしも十分とは言えないこと
  • 情報開示により市場の価格形成がより効率的に行われるようになっているとの指摘があること
  • このような状況において、例えば、四半期開示を任意化した場合、開示の後退と受け取られて我が国の資本市場の競争力に影響を及ぼしかねないと考えられること

等を踏まえると、現時点において四半期開示制度を見直すことは行わず、今後、四半期決算短信の開示の自由度を高めるなどの取組みを進めるとともに、引き続き、我が国における財務・非財務情報の開示の状況や適時な企業情報の開示の十分性、海外動向などを注視し、必要に応じてそのあり方を検討していくことが考えられる。

(出典 金融庁「ディスクロージャーワーキング・グループ報告 -資本市場における好循環の実現に向けて-」)

https://www.fsa.go.jp/singi/singi_kinyu/tosin/20180628/01.pdf

四半期開示の任意化・廃止については以上の通りとなっており、 今回見直しは見送られることになる可能性が非常に高くなっています。

 

今後の影響

このようなディスクロージャー内容の拡充は、実は、銀行にとってもビジネスチャンスになる可能性があります。

役員報酬の改定は銀行グループの証券会社が譲渡制限付株式を売り込むチャンスでもあります。

また、政策保有株式の売却手法についても証券会社の出番があります。

株式持ち合いとは異なる安定株主対策立案を取引先企業から要請される可能性もあるのです。もちろん、企業によってはMBOのように非上場化を目指す動きも出てこないとも限りません。

企業を取り巻く環境は、投資家・株主に有利となる方向へ変化していっています。この流れに取り残されないように企業も銀行も対応していく必要があるのです。

この流れは企業経営者にとっては