インターネットの検索は現在主流の文字検索から音声検索にシフトしていく可能性が高まってきています。
この音声検索のトレンドを踏まえた上で、銀行にとってどのような影響があるのか、今回は考察します。
音声検索へのシフト
まず、音声検索では、2017年にAmazon Echo、Google Homeなどのデバイスが世界で2,450万台出荷され、出荷累計が約3,300万台に及ぶとの予測があります。
世界のインターネットユーザーの3割弱がスマートフォン等で音声検索を利用(おそらく常にではなく、月に一度等も含む)しているようです。
参考となる記事は以下です。
音声起動プラットフォームの現状を示す4つのチャート | DIGIDAY[日本版]
このような環境下、今後、検索の50%は「音声にシフト」するという記事が掲載されていました。
2020年に検索の50%は音声で行われるというものです。
今後、検索の50%は音声にシフトする。その時に考えなければいけないこととは? | ロボスタ - ロボット情報WEBマガジン
筆者の周囲では母がGoogleで音声検索をしているぐらいで、ほとんど音声検索をしている人は見かけません。
しかしながらAmazon Echoが売れるにつれて少なくとも家の中では音声検索をする人の割合が増えるであろうことは容易に想像できます。
2020年に音声検索が50%になっているかはわかりませんが、増加はしているのでしょう。
音声検索にシフトした場合に起きると想定されること
インターネットデバイスユーザーが音声検索にシフトするとどのようなことが起きると想定されるのでしょうか。
検索回数の上昇
検索が容易となるため当然ながらユーザーが気軽に検索するようになります。
検索回数は増加するものと想定されます。
検索結果の数量低下
検索結果の全てをデバイスが音声で読み上げるのは現実的ではないでしょう。ユーザーは待っていられないからです。
そうると、検索結果の上位1、2の回答ぐらいしかデバイスが読み上げることはありません。読み上げられなければ存在しないのと同じです。
検索結果で上位の表示をとることが企業にとっても非常に重要になってきます。
広告の重要性
音声検索は自然な会話で検索されることになります。会話の中ではキーワードも増えます。
例えば今までは「丸の内 イタリアン ランチ」と文字検索していたものが、「丸の内の近くで最近OLに人気のイタリアンのランチにいきたい。ただし、1,000円以下。」のように検索されるようになるのです。
この検索方法だと、なかなかお店や企業は検索結果の上位になりません。そのため、キャッチフレーズ、キャッチコピーをユーザーに覚えてもらい、それを検索してもらうような動き、広告が重要になってきます。
これは商品名(例:アサヒスーパードライ)でも良いですし、キャッチコピー(例:化学で願いを叶える会社=カネカ)でも良いのです。
銀行にとっての影響
音声検索へのシフトは銀行にとってどのような影響をもたらすでしょうか。
筆者が想定するのは以下の通りです。
検索エンジンもしくは音声AI提供企業への広告料負担の増加
音声検索デバイス、音声プラットフォームでは、例えばAlexaが銀行を推奨(上位での読み上げ)することになります。
この推奨を取りに行くために銀行が膨大な広告料負担をしなければユーザーから選択されない事態が到来する可能性もあります。
日本語で検索される音声検索では、上位1、2社ぐらいしか読み上げられないと想定されるからです。(英語だったらなおさら競争が激しいでしょう)
これはGoogleがiPhoneの検索バーを維持するために10億ドルを支払ったという、以下の記事のようなものです。
グーグルがアップルに10億ドル支払い-アイフォーンに検索バー維持で - Bloomberg
プラットフォームを握る企業が非常に強い力を持つことになります。
コスト競争力の重要性増
音声検索では、金利、使い勝手、手数料等での比較も今以上になされる可能性があります。上位数社しか検索で読み上げられないのであれば、特徴を出すしかないのです。
「住宅ローン金利が一番安いところ」「振込手数料がタダ」というような検索をユーザーがしても、今までは回答数が何項目も表示されていましたが、音声検索では数社しか存在しないことになるのです。
一般の消費者にアピールするためにはコスト競争力を備えないと他行と戦えないことになります。
企業との提携・給与振込口座獲得の重要性増
簡単に音声検索で自行が読み上げれないのであれば、企業と提携し、とにかく給与振込口座を獲得する、そして企業の従業員=ユーザーに選択してもらうようにする、という戦略も重要になってきます。
ユーザーに選択される入り口は検索だけではないのです。
音声検索をする際にも、「○○銀行で振込」と言ってもらえれば良いのです。
プラットフォーマー化
最大の攻勢策であり、防御策は、自行がプラットフォームを運営することです。
音声検索が最も良いでしょうが、難しいと思われますので、銀行比較サイトのようなものを運営する、フィンテックサービスを束ねた総合サービスを展開する等によりプラットフォーマー化する戦略がありえます。
これについてはメガバンクといえども実際には難しいでしょうから、IT企業等の他社と組んで対応していくのが現実的なところでしょう。
まとめ
音声検索のシフトが日本で急激に起こるかはわかりません。
しかし急激ではないにしろ徐々に音声検索の割合が増えていくこと自体は間違いないでしょう。
銀行がこの音声検索に対応していかなければ、今まで以上に難しい業務運営をとなることは想像に難くありません。
銀行のネット戦略の巧拙がさらに重要になってくるのでしょう。