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広大地の規定改正による相続対策への影響

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平成29(2017)年度税制改正大綱において広大地の規定見直しが明記されました。

実際の適用は2018年1月以降の相続等により取得した財産の評価に適用されることになる予定です。

この広大地の規定見直しは広大地の保有者にとっては大きな影響を及ぼすことになります。

今回は、この広大地の規定見直しについて考察します。

広大地とは

広大地とは地域における標準的な宅地に比して著しく地積が広大な宅地をいいます。この宅地には条件が付されており、開発行為を行うとした場合に道路等の公共公益的施設用地の負担が必要と認められるものとなっています。

なお、地積が広大でも大規模工場用地や中高層の集合住宅等の敷地用地に適しているものは除かれます。

イメージとしてはマンション用地ではなく、敷地内に道路を開発する必要のある戸建分譲用地となるでしょう。

ただし、著しく地積が広大な宅地といっても随分と要件があいまいでした。

今回の規定見直しでは、適用要件の見直しもなされています。

広大地の評価

広大地と認められると相続税評価額が減価されます。

これは、広大地を戸建分譲用地として区画割りした上で販売しようとすると、道路の開発が必要になるからです。

道路部分は潰れ地として販売できませんし、造成費用もかかります。

つまり広大地を売却しようにも、宅地開発に様々な費用がかかるので、それだけ安く(減価)価値を評価しないと現実に即していないということになるのです。

規定の主な改正点

広大地規定の見直しにかかる主な改正点は、広大地の評価を廃止し、適用要件を明確化した「地積規模の大きな宅地の評価」を新設するというものです。

平成29年度税制改正大綱
広大地の評価について、現行の面性に比例的に減額する評価方法から、各土地の個性に応じて形状・面積に基づき評価する方法を見直すとともに、適用要件を明確化する

この「地積規模の大きな宅地」というのは、三大都市圏では500㎡以上、三大都市圏以外では1,000㎡以上と定義されています。

加えて、区域としては市街化区域(市街化調整区域は除く)、用途地域としては工業専用地域以外、容積率は400%以上(東京23区は300%以上)以外が該当します。

実際の評価

全般的には改正前と比べ、評価額の減価率は小さくなります。

さらに、改正前は面積が大きくなるほど減価率は大きくなっていましたが、改正後は面積が大きくなっても減価率はあまり大きくなりません。

よって面積が大きいほど改正による影響は大となります。
地積毎の補正率=減価率のイメージは以下の通りです。

      <現行>  <改正後>
 500㎡ 57.5%  80.0%
1,000㎡ 55.0%  78.0%
2,000㎡ 50.0%  75.0%
3,000㎡ 45.0%  74.0%
4,000㎡ 40.0%  72.5%
5,000㎡ 35.0%  71.6%

広大地の見直しは改正前と比べて評価額の減価率がかなり小さくることがお分かり頂けたでしょう。

一つ具体例を挙げます。

路線価30万円/㎡、面積2,000㎡の場合は、以下の通りとなります。

  • 改正前の広大地評価額=3億円(30万円×50%×2,000㎡)
  • 改正後の広大地評価額=4.5億円(30万円×75%×2,000㎡)

なお、分かりやすいようにするために、当該試算は奥行価格・不整形地等の補正は勘案しておりません。
この具体例で分かるように、広大地の評価はほとんどが評価額増=増税になります。

改正への対応

この広大地の改正案は2018年1月1日以降に相続・贈与等により取得した財産に適用される予定です。
よって、以下の対応が考えられます。

2017年中の生前贈与

改正後よりも減価率の高い現行制度に基づき生前贈与ができる可能性があります。相続時精算課税制度の活用も選択肢です。

売却・資金化

広大地評価の改正後に相続税評価額が上昇し、近隣の売買事例等で試算できる想定時価を上回った場合、相続前の土地を売却・資金化することで結果として相続財産が減少することもありえます。不動産市況は今が高値圏でしょうから、ヘッジのために土地を売却しておくというもの選択肢でしょう。ただし、この売却代金をどうするのか(賃貸不動産を購入するのか、金融商品を購入するのか等)は土地所有者にとっては判断が難しいところかもしれません。

広大地の改正というテーマで筆者が想定するお客様への情報提供・提案はこのようになります。

銀行員の方にとっては、ここまでを一連の情報提供・提案としてお客様にお伝えすることができれば提案としては十分なものとなるのではないでしょうか。