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ジャニーズ事務所の資産はどのぐらいあるのか

芸能界で無類の強さを誇っていたジャニーズ事務所が揺らいでいます。故ジャニー喜多川前社長の性加害問題は、外圧によってオープンになってきました。

人権という観点、閉鎖的な組織の問題という観点、トップの犯罪にどのように対処していくべきなのかという点等、様々な問題を考えさせられる事件です。

この加害問題の救済策として、ジャニーズ事務所は、金銭的な賠償の実施について知見と経験を有する外部専門家からなる「被害者救済委員会」を設置したと発表しています。そして、被害者に公平かつ適正な金銭補償を実施するため、被害者救済委員会に、被害者からの申告内容を検討して補償金額を判断することを一任するとしています。そして、被害者救済委員会により査定された補償金額の支払いについては、被害申告をされた個人の所属時期や被害の時期を理由として補償を拒むことはしないと表明しています。

では、ジャニーズ事務所はこの性加害の補償を支払うことが出来るほどの資産を保有しているのでしょうか。今回は、非上場企業であるジャニーズ事務所の状況について、少しだけ確認してみたいと思います。

 

ジャニーズ事務所の資産状況

ジャニーズ事務所およびそのグループ会社は非上場企業であり、業績や保有資産についてはほとんど伺い知ることが出来ません。

但し、断片的な情報はあります。

それが決算公告です。ジャニーズ事務所グループでは3社の決算公告が確認できます。

まずはその数字を見ていきましょう。

<ジャニーズ・エンタテイメント>

2011年1月末時点(単位百万円)

流動資産8,498

固定資産1,041

資産合計9,539

流動負債1,481

固定負債37

純資産8,021

純利益▲452

 

<ジェイ・ストーム>

2010年3月末時点(単位百万円)

流動資産10,775

固定資産3,456

資産合計14,232

流動負債4,472

純資産 9,759

純利益▲3,086

 

<ジェイ・ドリーム>

2014年12月末時点(単位百万円)

流動資産1,410

固定資産 16

資産合計1,426

流動負債545

純資産 881

当期利益▲74

 

<3社単純合算>

流動資産20,683

固定資産4,513

資産合計 25,197

流動負債 6,498

純資産合計 18,661 (純資産の比率74%)

当期純利益 ▲3,612

 

以上が、確認できるジャニーズ事務所の資産・業績状況です。この数字は時期もバラバラ、しかも古いデータです。そもそも、ジャニーズ事務所のWebサイトには以下のようにグループ会社が記載されています。

株式会社エム・シィオー
株式会社ジェイステーション
株式会社ジェイ・ストーム
株式会社ジェイベース
株式会社ジャニーズアイランド
株式会社ジャニーズ出版
株式会社ジャニーズ・ミュージックカンパニー
株式会社つづきスタジオ
株式会社東京・新・グローブ座
株式会社TOKIO
株式会社MENT RECORDING
株式会社ヤング・コミュニケーション
ユニゾン株式会社

 

上記に示した合算の数字はあくまで3社だけであり、更にかなり古いデータです。

そのデータでは、ジャニーズ事務所は少なくとも250億円以上の資産を持ち、純資産が186億円以上ある財務状況の極めて良好な企業グループであることを推察できます。合算すると赤字になっていますが、芸能事務所のコストは基本的に人件費ぐらいです(コンサートをするのも人件費であり、作品を作るのも結局は人件費です)。税金を払うぐらいならば赤字にしておく(タレント等に報酬を払っておく)ということかもしれません。

そして、その後も順調にジャニーズ事務所グループが芸能界で活躍してきたことを考えると3社だけでも当時よりは資産は増加していると想定されます。

 

他社の状況

次に芸能事務所他社の状況も確認しておきましょう。まずは、お笑いのトップ企業である吉本興業です。

 

<吉本興業ホールディングス>

決算公告

2022年3月末時点(単位百万円)

  • 流動資産4,255
  • 固定資産25,557
  • 資産合計29,813

流動負債14,081

固定負債3,918

純資産合計11,813

純利益▲288

 

吉本興業は、あれだけの規模を誇りながら前述のジャニーズ事務所3社と比べても純資産が少ない状況にあります。資産合計は前述のジャニーズ事務所3社と同じ規模であり、ジャニーズ事務所がいかに強力かが推察できます。

次にEXILE等が所属するLDHです。

 

<LDH JAPAN>

決算公告

2022年12月末時点(単位百万円) 

流動資産12,641

固定資産16,813

資産合計29,455

流動負債11,013

固定負債4,209

純資産14,232

当期純利益▲3,415

 

LDHは資産規模が吉本興業と同じ程度です。利益が赤字なのは、コロナの影響が大きいものと想定されます。

LDHと吉本興業とジャニーズの前述3社を比べると、ジャニーズ側には固定資産がほとんどないことが特徴となります。これは、グループ会社で不動産を保有する企業が別にあると考えた方が良いかもしれません。

 

<アミューズ>

上場企業のため、決算短信

2023年3月末時点(単位百万円)

流動資産 32,679

固定資産 11,985

資産合計 58,294

流動負債 18,974

固定負債 1,737

純資産 37,581

当期純利益 1,692

営業収入 (売上高) 52,497

 

アミューズはサザンオールスターズや福山雅治を抱える大手芸能事務所であり、上場しています。資産規模は今までご紹介してきた中では最も多く、財務体質も良好です。

しかし、アミューズの抱えるタレントと比べるとジャニーズ事務所のタレントはファンの厚さ含めてもう一段上と考えられます。ジャニーズ事務所とその子会社群は少なくともアミューズ以上の資産を誇っていても違和感はないでしょう。

 

ジャニーズ事務所の資産は結局どうなのか

ジャニーズ事務所は上場もしておらず、決算公告も出されていません。前述の3社は中核企業とは思われますがジャニーズ事務所グループのすべてをカバーしているとは思えません。それでも、すでに吉本やLDHに匹敵するほどの資産規模です。純資産比率(自己 資本比率)は74%あり、財務体質は強固です。週刊誌によれば、ジャニーズ事務所は、関連会社や個人の名義で赤坂や渋谷に不動産を持ち、総資産は1,000億円を超えていると言われています。(筆者が確認したところでは、一部のマスコミ記事では、都内の一等地に、少なくとも8つのビルと劇場を保有し、不動産資産、預貯金、有価証券等を合わせると、合計で3000億円にものぼるとされていました)

その真偽は筆者には分かりません。但し、1,000億円ぐらいの資産があっても全く不思議ではありません。中途半端ではありますが、筆者が確認し私見として考えていることは以上です。