2018年4月に仮想通貨交換業等に関する研究会(第1回)が開催されました。
この研究会は仮想通貨交換業をめぐる諸問題について制度的な検討をするために金融庁が設置したものです。
今回は、この研究会に報告された日本仮想通貨交換業協会の資料から仮想通貨についてのトピックスをみていくことにしましょう。
以下の説明は「仮想通貨取引についての現状報告(2018年4月10日:一般社団法人日本仮想通貨交換業協会)」から引用しております。
出典 金融庁ホームページ
- 仮想通貨の種類
- 仮想通貨の取引量
- 仮想通貨の時価総額
- 取引状況
- 国内での取引状況
- 国内の年代別顧客数
- 国内顧客からの預かり資産額の分布
- 国内顧客の入出金状況
- 国内の仮想通貨交換事業者の手数料
- 国内における仮想通貨使用可能店舗数
- まとめ
仮想通貨の種類
世界で流通している仮想通貨の種類は約1,500種類以上と言われており、主要通貨(取引量順)では上位5通貨は以下の通りとなります。
- ビットコイン(BTC)
- イーサリアム(ETH)
- リップル(XRP)
- ビットコインキャッシュ(BCH)
- ライトコイン(LTC)
上記の仮想通貨の他、ブロックチェーンが公開されておらず、開発が進められている仮想通貨を含めると約2,000種類を超えているようです。
また、ICO等を含めると世の中には数百万種類の仮想通貨があるとも言われています。
筆者としては、仮想通貨が決済手段として普及していくとしても、これほどの仮想通貨の全てが生き残るとは当然に思えません。今後、淘汰は進んでいくでしょう。
仮想通貨の取引量
グローバルでの仮想通貨の取引量についてもみていきましょう。
ビットコインについては「一日あたりの取引量」が2015年までは100億円程度までで推移していましたが、2016年に入ると100億円を超え最大で400億円規模となりました。また、2017年からは一気に加速し、最大で3兆円に迫る状況が見受けられました。
ビットコインについては、2018年3月31日時点と2014年3月31日時点の一日の取引量を比較すると4年で約167倍まで増大しています。
また、一日の最大取引量である2017年12月12日と2014年3月31日時点を比較すると、約928倍となりました。
一日の取引量では、主要5通貨のうちビットコインが約67%(2018年3月31日時点)を占めています。
<ビットコインの一日あたりの取引額>
- 2014年3月31日 29.0億円
- 2015年3月31日 27.2億円
- 2016年3月31日 67.8億円
- 2017年3月31日 501.8億円
- 2018年3月31日 4,837.4億円
※最大取引量 26,902億円(2018年1月5日)
これだけの取引があれば、仮想通貨交換業者が高収益を獲得することが想定できます。
コインチェックが顧客に補償できた理由もこの取引量にあります。
手数料体系の詳細は後述しますが、取引量が1日に2兆円あったとすれば、取引所全体の儲けは「2兆円×0.1%=20億円程度」は確保できます(もっとも手数料が低いと思われるビットコインを想定)。
他に販売所としての儲けは、仮想通貨の取引に際し最大5%をチャージしていますので、仮想通貨取引が拡大すればするほど仮想通貨交換業は儲かるのです。
仮想通貨の時価総額
流通している仮想通貨全体の時価総額は27兆4,339億円(仮想通貨1,596種、2018年3月31日)であるとされています。
以下は主要仮想通貨の時価総額と取引に占める割合です。
- ビットコイン(BTC) 12兆4,110億円 45.2%
- イーサリアム(ETH) 4兆1,343億円 15.1%
- リップル(XRP) 2兆1,208億円 7.7%
- ビットコインキャッシュ(BCH) 1兆2,634億円 4.6%
- ライトコイン(LTC) 7,041億円 2.6%
ビットコインについては2015年までは400億円から1兆円程度で推移していましたが、2016年に入ると1兆円を超え、2017年では最大で約35兆円程度まで拡大する傾向が見受けられました。
その後は縮小傾向となり、2018年3月31日時点では約12兆円となりました。
<ビットコインの時価総額>
- 2014年3月31日 6千億円
- 2015年3月31日 4千億円
- 2016年3月31日 7千億円
- 2017年3月31日 1兆4千億円
- 2018年3月31日 12兆4千億円
※最大時価総額 36兆6,582億円(2017年12月17日)
取引状況
取引に使用される法定通貨・仮想通貨のシェアは以下の通りです。
ビットコインの取引については約6割が日本の投資家であると考えれています。
以下は取引量上位5通貨の法定通貨のシェアを示したものです(2018年3月26日時点)。
※USD=米ドル、EUR=ユーロ、KRW=韓国ウォン
- ビットコイン:日本円57.7%、USD20.4%、EUR3.1%、KRW2.4%
- イーサリアム:USD29.9%、KRW5.8%、EUR4.4%、日本円0.3%
- リップル:KRW25.6%、USD16.3%、EUR3.7%、日本円0.2%
- ビットコインキャッシュ:USD15.5%、KRW3.1%、EUR0.8%、日本円0.3%
- ライトコイン:USD32.9%、EUR3.9%、KRW1.5%(円はランク外)
日本人はビットコインへの投資が多く、他の仮想通貨では取引シェアが低いことが分かります。
国内での取引状況
今まではグローバルベースでの仮想通貨の取引量等についてみてきました。
以下は国内の状況についてみていくことにしましょう。
仮想通貨の取引量(現物取引、証拠金・信用・先物取引)は、以下の通り推移しています。
※以下は年度(1年間)ベースです。前述の取引量には「一日あたり」の取引量がありましたのでご注意ください。
- 2014年度 現物取引=24億円、証拠金等取引=2億円
- 2015年度 現物取引=607億円、証拠金等取引=270億円
- 2016年度 現物取引=1兆5,369億円、証拠金等取引=1兆9,790億円
- 2017年度 現物取引=12兆7,140億円、証拠金等取引=56兆4,325億円
この推移をみて分かるように、現物取引の割合を証拠金等取引が上回る状況になってきました。
すなわち2017年後半から2018年初までの仮想通貨の高騰では、証拠金等取引というレバレッジをかけた(手元資金を何倍かに拡大した)取引により仮想通貨が売買されていたことが分かります。
このような取引状況になると取引の流動性は高まりますが、一方でレバレッジをかけている投資家が多いため、相場の急変時には多額の損失を負う投資家が発生するということになります。
国内の年代別顧客数
以下は国内における仮想通貨の年代層別顧客分布を日本仮想通貨交換業協会が取りまとめたものです。
仮想通貨の現物取引の中心層は20代から40代までであり、全体の90%を占めます。
また、国内の仮想通貨投資顧客は350万人とされています。
以下、年代・人数・全体に占める割合です。
10代 15,000名 0.53%
20代 807,000名 28.78%
30代 960,000名 34.24%
40代 630,000名 22.47%
50代 280,000名 9.99%
60代 89,000名 3.17%
70代 21,000名 0.75%
80代以上 2,000名 0.07%
合計3,500,000名
国内顧客からの預かり資産額の分布
全体の利用者の約95%が100万円未満の預かりであり、そのうちの約77%が10万円未満の預かりとなっています。
- 10万円未満 1,251,830口座 77.16%
- 10万円~50万円未満 230,374口座 14.20%
- 50万円~100万円未満 61,373口座 3.78%
- 100万円~500万円未満 64,867口座 4.00%
- 500万円~1,000万円未満 8,071口座 0.50%
- 1,000万円~1億円未満 5,560口座 0.34%
- 1億円以上 268口座 0.02%
以上が2018年3月時点の数値とされています。
これも日本仮想通貨交換業協会がまとめたものですが、1億円以上が268口座しかないかは疑義があるでしょう。
恐らく仮想通貨交換業者間の名寄せをしていないため少ない数字が出ているものと思います。
多額の仮想通貨資産を持っている顧客は、仮想通貨交換業者を利用していても分散して使っていると想定されるからです。
また、この数値は国内の仮想通貨交換業者に預けている顧客だけであり、他にも自身のウォレットで管理している投資家が存在するものと思われます。
国内顧客の入出金状況
以下は国内顧客の入出金状況です。
2017年に入ってから多額の資金が流入してきたことが分かるでしょう。
- 2014年度入金額合計:3億2,793万円
- 2015年度入金額合計:35億4,972万円
- 2016年度入金額合計:510億724万円
- 2017年度入金額合計:1兆9,173億5,749万円
なお、出金額の状況は以下の通りです。
- 2014年度出金額合計:2億6,660万円
- 2015年度出金額合計:29億432万円
- 2016年度出金額合計:351億6,038万円
- 2017年度出金額合計:8,666億7,171万円
国内の仮想通貨交換事業者の手数料
以下は仮想通貨交換事業者の手数料(販売所はスプレッドと呼ばれますが、実態は同様)です。
なお、販売所は仮想通貨交換事業者が投資家との売買の当事者となる取引です。イメージとしては銀行等にかなりの手数料を取られる外貨両替のようなものです。
取引所の方は、投資家同士の取引仲介ですので、東京証券取引所と同じような役割です。
以下が現物取引の手数料です。
- ビットコイン:販売所1~5%、取引所-0.05%~0.2%
- イーサリアム:販売所0.1~5%、取引所0%~0.7%
- リップル:販売所0.1~5%、取引所0%~0.45%
- ビットコインキャッシュ:販売所0.1~5%、取引所0%~0.7%
- ライトコイン:販売所2~7%、取引所0%~0.7%
取引所の方が販売所に比べて手数料率を低く抑える傾向にあることが分かります。
これは、仮想通貨交換事業者が自身でリスクを負っていない以上、当然と言えるでしょう。
国内における仮想通貨使用可能店舗数
仮想通貨は、そもそも「通貨」と言われるように商取引に使用されることを前提にしています。
実態上は商取引に使われることはほとんどなく、投機の対になっているといわれています。
以下は、仮想通貨を利用できる店舗についてまとめられたものです。
ヒアリングによる3社分の集計値のため、必ずしも全容を表すわけではないでしょうが、参考となる数値ではあるでしょう。
- ビットコイン(BTC) 52,190店舗
- イーサリアム(ETH) 80店舗
- フィスココイン(FSCC) 2店舗
- ネクスコイン(NCXC) 2店舗
- カイカコイン(CICC) 2店舗
- ネム(XEM) -
まとめ
以上が仮想通貨についての現状です。
これだけまとまった報告は、読者の皆様もご覧になったことがないのではないでしょうか。
仮想通貨も同様ですが、すべての投融資の判断には客観的な数値を基にした方が良いと思います。
数値を把握せず、雰囲気や思い込みだけで投融資するのは、短期的にはうまくいくこともあるかもしれませんが、想定しないリスクを抱え込むことになります。中長期的にみれば数値を根拠とした判断の方が良いように筆者は思えます。