空き屋問題という言葉を最近聞くようになってきたのではないでしょうか。
今後、われわれにとって大きな影響を受けるであろう空き家問題について今回は考察します。
空き家問題とは
空き家問題の原因は複合的です。人口減少、雇用の都市部集中、高齢化による介護施設の利用増加、税務対策等様々な要因がからみあいます。
ただ、言えることは問題が深刻になるのはこれからということです。
総務省では5年毎に住宅・土地の統計調査を公表しています。
総務省の統計によると2013年には空き家が820万戸あります。これは全国のそう住宅数の13.5%にあたります。うち、賃貸用は429万戸となり空き家の半分以上を占めます。空き家の総数はこの20年で倍増しています。
さらに空家率は山梨県や四国四県で高い割合となっていますが、首都圏でも10%を超えています。上表の通りの状況です。
また、国土交通相の発表資料によると新設住宅着工戸数は2016年で約97万戸に対して、滅失戸数は約11万戸となっており、足元では住宅が毎年増えている状況は変わりません。
空き家問題の将来予測
(株)野村総合研究所が2015年に発表した予測によると2033年には空家率が30%程度となります。総世帯数は2020年の5,305万世帯をピークに2025年には5,244万世帯に減ります。一方で、2033年の総住宅数は約7,100万戸へと拡大し、空き家数は約2,150万戸となる予測となっています。
なお、将来予測は外れることが多いのは事実です。毎年始めに専門家と呼ばれる人たちが為替や株価を予想したりしますが、当たっている人は本当に一握りですし、当たった人も継続して当てている訳ではないでしょう。ところが人口関連の推計は異なります。人口の推計はほとんど外れることがありません。10歳の子供が100万人いるとすれば、この子供たちは10年後にはほとんど減少することなく20歳になっています。この人々は労働力となり、子供を産み、家を買うといったように行動もある程度は予想ができます。人間の生活はそんなに簡単には変わりません。そのため人口推計およびそこから派生・予想される見通しは当たる可能性が比較的高いのです。
よって、2033年、今から約15年後には空き家がさらに大量になっている可能性は非常に高いのです。
空き家問題の影響
空き家増加による影響は様々なところで述べられていますが、金融の観点からはやはり不動産価格の下落要因、もしくは賃料の抑制要因になるということになります。そして、その影響を受けるのは不動産業向けの融資です。当然、個人向けのアパートローンも含まれます。
日銀が2016年3月にレポートを出していることからも国・公的機関が空き家問題も含む不動産融資に対して危機意識を持っていることが分かります。金融機関のアパートローン問題は最近になって問題とされるようになってきたのではないのです。
今後の金融機関における課題
日銀は2016年3月に金融システムレポート別冊シリーズとして「地域金融機関の貸家業向け貸出と与信管理の課題ーアンケート調査結果からー」を公表しました。
このレポートにおけるポイントは以下の通りです。
- 賃貸不動産業向け貸出が総貸出に占める割合は、地域銀行では10%弱、信用金庫で15%強
- 信用金庫を中心に2割を超える先も少なくない
- 過去2年間の増加幅が大きい先も多い
- 貸家業向け貸出を積極的に推進している金融機関の本店所在地域は、地方圏の構成比が地域銀行で8割弱、信用金庫で5割に上る
- アンケート調査によると、第一に、貸家業向け融資において、該当地域の人口・世帯数推計値、地域別・物件特性別の入居率や家賃動向を情報として活用している地域金融機関は少ないのが実情
- 第二に、個別物件毎の家賃・入居率の確認頻度および事業主の預金口座における賃料収入の入金状況把握の改善が図られる余地がある
- 第三に、貸家業向け貸出のポートフォリオ管理の実施が限定的
日銀レポートにある通り今後の金融機関は来るべき空き家増加時代に備えてアパートローンを中心とした与信管理をしっかりとやっていかなれば不良債権問題を勃発させかねません。アパートローンの実務・企画・推進等に携わっている方は特に留意が必要です。