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IT重説(重要事項説明)の開始

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2017年10月から賃貸契約仲介にかかるITでの重要事項説明が開始されます。
今回はこのいわゆるIT重説について考察します。

IT重説とは

IT重説とは、インターネット等を利用し、対面以外の方法で不動産の売買契約および賃貸借契約における重要事項説明を行うことです。

1971年の宅地建物取引業法改正以降、宅地建物取引士による「対面」での重要事項説明が義務とされてきましたが、これからは賃貸仲介においてはオンラインシステムを用いた「非対面」での説明を認めることになりました。

対象となる不動産取引

2017年10月から解禁されるのは賃貸借に関する仲介のみです。

国土交通省から出されている通知には以下のように記載されています。

宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方(不動産業課長通知)
第三十五条第一項関係
2 宅地又は建物の貸借の代理又は媒介に係る重要事項の説明にITを活用する場合の取扱いについて

宅地又は建物の貸借の代理又は媒介に係る重要事項の説明にテレビ会議等のITを活用するに当たっては、次に掲げるすべての事項を満たしている場合に限り、対面による重要事項の説明と同様に取り扱うこととする。
なお、宅地建物取引士は、ITを活用した重要事項の説明を開始した後、映像を視認できない又は音声を聞き取ることができない状況が生じた場合には、直ちに説明を中断し、当該状況が解消された後に説明を再開するものとする。

(1) 宅地建物取引士及び重要事項の説明を受けようとする者が、図面等の書類及び説明の内容について十分に理解できる程度に映像を視認でき、かつ、双方が発する音声を十分に聞き取ることができるとともに、双方向でやりとりできる環境において実施していること。

(2) 宅地建物取引士により記名押印された重要事項説明書及び添付書類を、重要事項の説明を受けようとする者にあらかじめ送付していること。

(3) 重要事項の説明を受けようとする者が、重要事項説明書及び添付書類を確認しながら説明を受けることができる状態にあること並びに映像及び音声の状況について、宅地建物取引士が重要事項の説明を開始する前に確認していること。

(4) 宅地建物取引士が、宅地建物取引士証を提示し、重要事項の説明を受けようとする者が、当該宅地建物取引士証を画面上で視認できたことを確認していること。

IT重説のメリット

IT重説には大きなメリットがあります。

一つは「遠隔地の顧客の移動や費用等の負担軽減」です。

子供が遠方の大学に入学するため、大学等の近くで下宿先を探した後に、地元に戻った両親が契約者として重要事項説明を受ける場合には、遠方の宅建業者(賃貸仲介業者)を再度訪問するにはコストも時間もかかります。IT重説はこれを回避する良い手段となります。

同様に重説実施の日程調整の幅の拡大・来店困難者への対応(長時間は外出できない、夜間しか対応できない等の賃借人への対応)が可能となります。

また宅建業者側にも多大なメリットがあります。

これまでは賃貸借契約を締結する際に各店舗で必ず宅建士が重説を行わなければなりませんでした。これが、インターネットでのIT重説が可能ということになると一ヶ所に宅建士を集めてしまえば良いということになります。各宅建士の重説のタイムラグを少なくし、効率的に少人数で重説ができることになります。

これは特に大規模に展開している宅建業者としては非常にありがたい話となるでしょう。

フランチャイズ展開をしているアットホーム等の大規模仲介業者にとってみれば、IT重説の開始は更なるビジネスチャンスになるのです。
IT重説等、WEBでの仲介サポートサービス開始/アットホーム | at home VOX(アットホームボックス)
LIFULL HOME’S、賃貸でIT重説、オンライン内見に対応した新サービス開始 | 株式会社LIFULL(ライフル)

IT重説の今後

現在は賃貸借取引にかかる重説だけが解禁されていますが、現在、IT重説の法人間売買取引社会実験の継続実施がなされています。

実施期間は2017年8月1日から2018年7月末まで(予定)となっています。

当初の実験(2015年8月31日から2017年1月31日)では法人間の売買事例が2件しかなく事例が少なく判断できないということでしょう。

個人の売買については実験の対象外とされていますので、しばらく解禁されることはないでしょう。

筆者は法人、個人とも不動産売買におけるIT重説の解禁は現段階では難しいと考えています。宅建業者からの反対もあるでしょう。それに、売買当事者にとって不動産売買はそう簡単にあるものではありません。よって効率性よりも正確性、納得性等が重視されるからです。

今後の方向性

これからの住宅の賃貸借契約は、個人が締結する際に宅建業者の社員と一回も会わないまま、もしくは現地を一回も訪れないままに契約をすることが増加してくるでしょう。

現在はスマートロックの技術も普及し、宅建業者の社員が物件の内覧に立ち会う意味は若干薄れてきてはいます。

また、現在でも物件の内側もスマートフォンである程度は確認可能です。VR技術等が普及すれば更に物件内部の確認は実施しやすくなるでしょう。

但し、物件を見に行かずネットでのチェックだけで済ましてしまうことを、筆者は個人的には良いことだとは思いません。

周囲の騒音がどの程度か、時間帯によってはどうか、日の当たり方はどうか、周辺環境はどうか、共用部はどうか等、チェックすべき項目はたくさんあり、それを現在の技術ではカバーできないと認識しているからです。

不動産業にITが完全に入り込むには、まだまだ時間がかかるでしょう。