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日本の少子化の原因には、形式を重んじる民族性があるのかもしれない

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日本は少子化の問題を突き付けられてきました。

一人の女性が生涯に産む子供の数にあたる合計特殊出生率は2020年に1.34(前年比▲0.02ポイント)となっています。低下は5年連続です。

そして、2020年の出生数は約2万4千人減り、約84万人と1899年の調査開始以来過去最少を記録しました。2021年はコロナ禍においてさらに低下することが見込まれています。

日本の少子化は深刻な状況にあります。

今回は、この日本の少子化の要因は何かについて、婚姻率という観点から、少し探ってみたいと思います。

 

婚姻率

日本において少子化が進んでいる理由はどのようなものが考えられるでしょうか。

一つの可能性としては、婚姻率、いわゆる結婚する割合が低下していることが考えられます。尚、婚姻率は人口1,000人あたりの婚姻件数です。

以下は日本における婚姻率の長期推移です。

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(出所 国立社会保障・人口問題研究所/人口統計資料集(2021))

婚姻数は2000年代初頭の80万件から2019年では60万件まで減少していきています。

同様に婚姻率は2000年が6.4であったものの、2019年では4.8となっています。

さらに2020年では、婚姻数は52万5,490件で、前年より7万3,517件減少しました。コロナ禍において婚姻数が大幅に低下したことになります。

では、この婚姻数が減少したことが少子化の原因なのでしょうか。

 

婚姻数の国際比較

次に婚姻数の国際比較を行いたいと思います。

以下は国立社会保障・人口問題研究所が公表している統計データです(各国の調査年には若干のバラつきがあります)。

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(出所 国立社会保障・人口問題研究所/人口統計資料集(2021))

この比較データで分かるのは日本の婚姻率が決して低い水準ではないということです。

経済的な問題で結婚できない若者が増えているとか、草食系が多くなったとか、様々な解説がなされることがありますが、少なくとも世界的に見て、日本人は婚姻数で差をつけられてる訳ではないことが分かるのではないでしょうか。

<参考データ/上記グラフの元データ> 

婚姻率 離婚率
エジプト 9.6 2.1
キューバ 5.2 2.7
メキシコ 4.0 1.3
アメリカ合衆国 6.9 2.5
ペルー 2.9 0.5
イラン 6.7 2.1
イスラエル 5.7 1.7
日本 4.8 1.7
韓国 4.7 2.2
シンガポール 6.3 1.8
トルコ 6.8 1.8
オーストリア 5.3 1.8
ベルギー 3.9 2.0
ブルガリア 4.1 1.5
チェコ 5.1 2.3
デンマーク 5.6 2.6
フィンランド 4.0 2.4
フランス 3.5 1.9
ドイツ 5.4 1.8
ギリシャ 4.7 1.8
ハンガリー 5.2 1.7
イタリア 3.2 1.5
オランダ 3.7 1.8
ノルウェー 4.3 1.9
ポーランド 5.1 1.7
ポルトガル 3.4 2.0
ルーマニア 7.4 1.6
スペイン 3.5 2.0
スウェーデン 5.0 2.5
オーストラリア 4.8 2.0

(出所 国立社会保障・人口問題研究所/人口統計資料集(2021)) 

日本の婚姻率は真ん中の下位あたりです。

 

出生率が異なる要因

婚姻率が他国とあまり変わらないのであれば、日本はなぜ出生率が低いのでしょうか。

その答えを得るための切り口の一つが「出生数に占める婚外子の割合」です。

以下はOECDのデータですが、トルコ・日本・韓国は出生数に占める婚外子の割合が圧倒的に低い国です。

f:id:naoto0211:20210607192215p:plain(出所 OECD Family Database「Share of births outside of marriage」2018年のデータ)

出生数に占める婚外子の割合のランキングにおける上位は、中南米や欧州諸国です。

チリは婚外子の割合が7割超、フランスは約6割です。

これは各国の習慣、文化、宗教等の複合的な問題でしょうから、良い悪いの問題ではありません。しかし、日本に比べると他国の方が婚外子でも権利が保護されている(不利益を被らない)ということがあるのでしょう。

 

所見

少子化対策の根幹は「婚外子」の権利を認めることから始まると言われることがあります。

日本は、婚姻率は国際的に見て低くないのに、少子化が厳しい要因は婚外子が少ないからであるというロジックです。

この点については、法的な問題だけではなく、文化の問題が大きいのでしょう。事実婚というと、どうしても「責任感が無い」「子供がかわいそう」というような文脈で語られることが多いように思います。

日本には、法的に、形式的に結婚という約束事をしていないカップルは子供を作ってはいけないという雰囲気があるのではないでしょうか。

日本では婚外子の権利を認めるよりも、単純に正式な婚姻が増えれば良い(昔の言葉で言えば「男が責任を取る」)という考え方もあるでしょうが、筆者としては婚外子の権利を認めることは是非とも対応しておくべきことだと考えます。日本はこれから様々な文化・宗教の背景を持つ外国人を移民として受け入れざるを得ないでしょうし、少子化対策が大事ならば、婚外子の権利を守ることをやっておいて損は何もありません。

筆者は、日本が実質よりも形式を重んじることが多くなってきたように感じられます。

いわゆる自粛警察もその例の一つです。社会のルール(とその人が信じていること)を守らない人がいると、その人を攻撃します。但し、考えてみれば、理不尽な過剰自粛になっていることも多々あるでしょう。

また、コンプライアンス=法令順守も形式主義的です。法律やルールを守ってさえいれば良いという思考を生み出してきています。

このような形式を重んじる、もしくは形式主義的な民族性が日本には出てきているのではないでしょうか(いつの時代も形式主義的だった訳ではないと思います)。

少子化を考えるにあたっては、子供を持たない選択をしている、もしくは子供は一人で十分であると考えているカップル(夫婦含む)が、なぜそのような意思決定を行ったのかを、改めて考えてみるべきです。

これには本当に様々な問題があるでしょう。

しかし、主要な問題点は、やはり子育てをするには所得に余裕がないということ、そして子育てのサポートが足りていないこと、の二点に集約されるのではないでしょうか。

要はカネと人手(もしくは時間)です。

少子化が進行していくと、日本の社会の仕組みは次々と崩壊していきます。医療制度も、年金制度も、地域のインフラも、少なくとも人口の維持を前提にしています。

子供を産みたい、育てたいと思える社会を作らないと本当に日本は終わってしまいます。そこに日本の限りある資源を投じるべきです。形式主義よりも実質主義への「雰囲気」の転換が必要ではないでしょうか。