地方銀行(地銀)が、地方創生の実現に向けて、地域の事業者と一体となって地域商社を設立し、地域の魅力ある産品を大都市圏や海外に届ける取り組み等が広がっています。
地域商社については、2017年の銀行法改正により、銀行グループが取組可能なビジネスの範囲が拡大したことを契機に本格化し、地銀が関与する地域商社は現時点で26社にまで拡大しています。
今回は、この地域商社について少し確認してみたいと思います。
地域商社数の推移
全国地方銀行協会の調査では、地銀が関与・設立した地域商社数の推移(累積)は以下の通りです。(2017年の銀行法改正前の設立分も含む)
(出所 全国地方銀行協会Webサイト)
地銀が関与している地域商社の主な事業は、地元産品の国内外への販路開拓、新商品開発・ブランディングの支援等です。
この他、地元の生産者等の経営をサポートする様々な事業に取り組む地域商社も存在しているようです。
以下は、地銀が関与した地域商社の一覧です。
銀行名 | 会社名 | 所在地 | 主な事業 |
---|---|---|---|
北海道 | 北海道総合商事(株) | 北海道札幌市 | 商品貿易及び売買業務 貿易コンサルティング業務 等 |
北海道 | (株)HAL GREEN | 北海道恵庭市 | 農産物の流通事業 |
北海道 | (同)OMEGAファーマーズ | 北海道士別市 | 食用油の原料生産・搾油加工・販売 農産物販売 |
みちのく | (株)オプティムアグリ・みちのく | 青森県青森市 | スマート農業ソリューションを活用し生産者と連携した農作物の生産と販売 スマート農業に関する総合商社機能の提供 等 |
岩手 | manordaいわて(株) | 岩手県盛岡市 | 営業代行による販路拡大支援業務 地域デザイン拠点創出業務 等 |
秋田 | 詩の国秋田(株) | 秋田県秋田市 | マーケティング事業 ブランディング事業 等 |
山形 | TRYパートナーズ(株) | 山形県山形市 | 地域商社事業 コンサルティング事業 |
千葉 | ちばぎん商店(株) | 千葉県千葉市 | EC運営事業 クラウドファンディング運営事業 等 |
第四北越 | (株)ブリッジにいがた | 新潟県新潟市 | 販路開拓事業 観光振興事業 等 |
北國 | 北國マネジメント(株) | 石川県金沢市 | EC事業 企業再生事業 等 |
静岡 | (株)ふじのくに物産 | 静岡県静岡市 | プラットホーム構築事業 新規事業構築支援 等 |
紀陽 | (株)ロカリスト | 和歌山県和歌山市 | 特産品等の販路拡大支援 広告代理業・企業ブランディング 等 |
山陰合同 鳥取 |
(株)地域商社とっとり | 鳥取県鳥取市 | 鳥取県の農水産物・食品加工品等の県外への販売 地域事業者との共同商品開発、製造、販売 等 |
中国 | (株)せとのわ | 岡山県岡山市 | マーケティング戦略立案支援 企画開発支援 等 |
広島 | (株)たびまちゲート広島 | 広島県広島市 | 旅行業 小売業 等 |
山口 | 地域商社やまぐち(株) | 山口県下関市 | 農林水産物(加工食品、飲料、生鮮等)の卸売および販売業務 商品開発にかかる企画 等 |
阿波 | 阿波銀コネクト(株) | 徳島県徳島市 | ECモール運営事業 コンサルティング事業 |
阿波 百十四 伊予 四国 |
Shikokuブランド(株) | 香川県高松市 | ブランディング事業 販路開拓事業 |
福岡 十八親和 |
iBankマーケティング(株) | 福岡県福岡市 | 地域総合商社事業 マネーアプリ「Wallet+」運営事業 等 |
十八親和 | (株)西海クリエイティブカンパニー | 長崎県西海市 | スマートシティ事業 ブランディング&マーケティング事業 等 |
十八親和 | (株)ミナサポ | 長崎県南島原市 | 小売電気事業 IT人材育成事業 等 |
筑邦 | (株)マキコミ | 福岡県久留米市 | 特産品開発及び販売 ペット用品開発及び販売 等 |
肥後 | (株)くまもとDMC | 熊本県熊本市 | 地域ブランド商品の発掘 着地型コンテンツ造成 等 |
大分 | Oita Made(株) | 大分県大分市 | 県産品販売業(ショップ・ECサイト運営) 観光業 等 |
宮崎 | (株)Withみやざき | 宮崎県宮崎市 | トレーディング事業(卸売・EC) マーケティング・ブランディング事業 等 |
鹿児島 | (株)春一番 | 鹿児島日置市 | 農産物生産 農産物卸売 等 |
(出所 全国地方銀行協会Webサイト掲載データから筆者加工)
上表を見ると、北海道銀行や十八親和銀行は積極的な展開を行っているように思われます。
また四国の第一地銀四行が組んで地域商社を立ち上げるというのは非常に興味深いと言えます。地銀は各地域の「殿様」です。四国の第一銀四行もお互いプライドがあるでしょうが、一緒に組むということは、それだけ四国全体への危機感があるものと思われます。
ECモール運営
地域商社の動きでは、ECへの取組も特徴的です。
地銀の地域商社が運営するECモールは以下となっています。
(出所 全国地方銀行協会Webサイト)
例えば、Oita MadeのJAPAN BLUE万年筆は、筆者も欲しい(でも高い)と思っていたものです。
精密板金加工を得意とする大分県佐伯市の企業が3年を費やし、不可能とされてきた、天然藍で彩色した革新的な金属素材を開発したことに始まり、万年筆の有名メーカーであるセーラー万年筆を動かし、JAPAN BLUE万年筆が生まれたとされています。
素材の金属を活かした商品は、以下の写真のように非常に美しい発色です。
(出所 Oita Made https://oitamade.jp/view/item/000000000219?category_page_id=craft)
所見
地域商社のECモールは、どこもしっかりと作られています。とても銀行員が関与しているとは思えません。
地銀が生き残る道は、基本的には地元の経済が活性化することにしかありません。地元経済の衰退が続けば、それは地銀の衰退と同義です。地域商社の活躍は、地元経済を盛り上げる一助にはなります。
但し、門外漢の地銀が、地域商社を運営していくことには今後様々な問題が出てくるでしょう。今は立ち上げたばかりのところが多く、注目が集まっています。銀行内でも応援団は多いでしょう。しかし、事業は継続していくことが重要です。一時的な成功よりも、長期の地元経済への貢献こそが地域商社の役割のはずです。各地銀が立ち上げた地域商社が10年後も残っているのか、中長期の動向にこそ最も注目していきたいと思います。