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コロナ対応の医療逼迫の原因は、病院数・病床数が多すぎるからではないか

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年末になりコロナの感染者が増加し、医療逼迫、医療崩壊の懸念がマスコミで報道されるようになってきました。

一方で「日本は病床が多過ぎるから減らした方が良い」というような日本の医療体制が過大に整備されているという説明が、コロナ発生前にはなされていました。

日本の医療体制が「過大」なのであれば、今回の第3波で医療が逼迫するというのはどのように解釈すればよいのでしょうか。日本は、コロナの感染者が増加しているとはいえ、他国と比べるとその絶対数は低いのです。

筆者は医療の専門家ではありませんが、 数字から少しだけ確認してみたいと思います。

 

医療体制における国際比較

医療分野における国際比較は様々なものがありますが、以下が非常に参考になりました。

厚生労働省の「医師の働き方改革に関する検討会」において示されている資料です。

この検討会は医師の過重労働についてスポットを当てているものですが、そこで国際比較もなされています。

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(出所 厚生労働省/第9回 医師の働き方改革に関する検討会「諸外国の状況について」)

このデータにおいて見るべきポイントは以下だと思います。 

  • 人口千人当たりの総病床数が米2.8、英2.6、独8.1、仏6.1、スウェーデン2.4、日本13.2

すなわち、日本は例えば米国に比べて人口当たり4.7倍の病床(ベッド)数があるということになります。恐らく、これが日本が世界に比べて医療体制が過大であると主張される根拠となっているのでしょう。

では、次に臨床医(患者に接して診察・治療をする医師)の数も確認してみましょう。

  • 人口千人当たり臨床医師数 米2.6、英2.8、独4.1、仏3.3、スウェーデン4.2、日本2.4

この数字で見ると全く違う光景が見えてきます。日本は他国に比べて人口当たりの臨床医の数は少ないと言えます。

そうすると、病床当たりの医師数は以下のようになります。

  • 病床百床当たり臨床医師数 米90.9、英106.9、独50.9、仏50.9、スウェーデン165.2、日本17.9

この数字が示しているのは、例えば米国に比べて日本は病床当たりの医師が5分の1であるということであり、日本は一人の医師が多くの入院患者を診ているということです。

すなわち、日本は病床(ベッド)数は多いが、その割に医師はいないということになるのでしょう。

そして、同じように臨床看護職員(病棟や外来で患者に接して行う看護を行う職員)の数も確認しましょう。

  • 人口千人当たり臨床看護職員数 米11.3、英7.9、独13.3、仏9.9、スウェーデン11.1、日本11.0

人口当たりの臨床介護職員数は日本は他国と変わりません。

一方で、以下の数字をご確認ください。

  • 病床百床当たり臨床看護職員数 米394.5、英302.7、独164.1、仏161.8、スウェーデン438.9、日本83.0

日本は臨床医と同様に、病床数当たりの臨床看護職員も少ないのです。すなわち、医師も看護師も少ない人数で多数の病床を担当していることになります。

 

所見

上記のデータは、なぜ医師の長時間労働、過重労働が多いのかを示すための資料です。そのため、偏ったものである可能性はあります。

しかし、筆者はこの単純なデータに日本の医療の問題が表れているのではないかと考えています。

すなわち、医師や看護士が多くの病院に分散されているということです。日本の病院数は世界一とされています。

人口当たりでは他国と比較して同レベルの数が存在する医師・看護士が、多くの病床(≒病院)に分散しているからこそ、一つ一つの病院は人手不足なのではないでしょうか。

そうすると、コロナ対応ができる病院が限定されており、その病院に医師・看護士が不足している以上、いくら病床数が多かったとしても、提供できる病床数等の医療サービスには限りが出てしまうのではないでしょうか。

日本の病院数の問題が、交代で勤務をする等の対応が出来ずに医師や看護士の過重労働の原因となっているものと思いますし、この病院数の問題がコロナ対応を柔軟にできない一因になっているではないかと筆者は考えます。

日本の医療体制、制度、医療費の問題は、これから更に問題が噴出してきます。少子高齢化においては医療こそが日本の論点になるはずです。今後も注目していきたいと思います。