(出所 日本銀行金融研究所貨幣博物館Webサイト)
日本銀行(日銀)が2020年上半期の決算を発表しました。
コロナ禍における日銀の決算はどのような状況にあるのでしょうか。
コロナの影響により株価が急落した際には、日銀の債務超過まで心配されていましたが、株価が回復してきた現時点では、含み損益はどのようになっているのでしょうか。
今回は、日銀の2021年3月期2Qの決算内容について確認していきましょう。
日銀の2021年3月期中間決算概要
最終利益に当たる当期剰余金は9,288億円でした。上期としては4年連続の増加、過去最高の水準となっています。
貸出金は前年同期比2.2倍の約105兆円となり過去最高でした。コロナ対応である企業の資金繰り支援策で、民間金融機関への資金供給が増えたことが影響しました。
また、国債の保有残高は530兆円と前年同期末比10.5%増加、J-REITは同19.9%増の0.6兆円、ETFが同24.5%増の34兆円となり、いずれも保有残高が過去最高となっています。
結果として、2020年9月末時点の日銀の資産は前年同期末比21.1%増の690兆円と、中間期として9年連続で過去最高を更新しています。
B/SとP/Lは以下の通りです。
(出所 日銀Webサイト)
但し、この貸借対照表では分かりづらいので以下が参考となるでしょう。
(出所 日銀Webサイト)
日銀の資産は、ほとんど国債と貸出金、及び上場企業のETFです。急激に日銀の資産は増加しており、今や日本のGDPをはるかに超えることになりました。
尚、資産の推移は以下の通りとなっています。
(出所 日銀Webサイト)
2020年3月以降は急激に資産が増加しています。
含み損益
日銀の資産が増加していることは分かりました。
但し、日銀の資産が以前注目されたのは、日銀が保有する株式が含み損になり、日銀が債務超過に陥るのではないかとの疑念があったからです。
現状はどのようになっているのでしょうか。
まずは債券です。
(出所 日銀Webサイト)
日銀が最も保有しているのは日本国債です。530兆円の保有残高があり、その含み損益は+11.6兆円となっています。
国債等の債券は、利回りが低下すると債券価格が上昇します。急激な利回り上昇があった場合には含み損が発生・拡大するものと思われますが、日銀が国債を大量に購入し、金利を低く抑えている現状下においては、含み損に転落する可能性は低いものと思われます。
(出所 日銀Webサイト)
金銭の信託(信託財産指数連動型上場投資信託)=株式のETFについては、2020年3月末時点では0.3兆円の含み益となっており、ほとんど簿価と時価が変わらない状態にありました。
一方で、2020年9月末時点では、世界的な株価回復により株式ETFだけで5.8兆円の含み益となっています。
2020年9月末時点の日銀の自己資本は9.6兆円です。現時点では問題ないといえるでしょう。
まとめ
新型コロナウィルス感染症拡大に伴う金融市場の混乱に対して、日銀が取ったETF購入の拡大という施策について筆者は間違ったものではないだろうと考えています。
しかし、そもそも「平常時」からETFを通じて株式を購入し続けていたため、いざという時に保有額の大きさがクローズアップされてしまっているのは事実でしょう。
そして、危機を乗り切ったとしても、国債を含めてETF(株式)・REITの出口(売却)をどのようにしていくのかという重すぎる課題が残っています。
経済成長をするしか問題の解決はないように筆者は思いますが、今後も日銀が保有する資産の動きは注視していきたいと思います。