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ソフトバンクGは、なぜ自社株買いを行うのか?

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ソフトバンクGが過去最大の自社株買いを発表しています。

当初は5,000億円の自社株買いを発表しましたが、わずか10日後に追加で2兆円の自社株買いを発表しました。

ソフトバンクGに何が起きているのでしょうか。

そしてソフトGはなぜ自社株買いを行うのでしょうか。

今回は、ソフトバンクGの自社株買いについてスポットを当ててみたいと思います。

 

報道内容の確認

ソフトバンクGの一連の自社株買いに関する報道は以下の通りです。今回の自社株買いの概要が分かると思います。

ソフトバンクG、自社株買い5000億円 株式の7%上限

2020/3/13 日経新聞

ソフトバンクグループ(SBG)は13日、5000億円を上限に自社株買いを実施すると発表した。米有力アクティビスト(物言う株主)による2兆円規模の自社株買い要求が明らかになるなど外部圧力も高まるなか、株主還元を強化する。SBG株が下落基調にあることも、判断を後押ししたとみられる。
株式数の上限は1億4500万株で、発行済み株式総数(自己株式を除く)の7%にあたる。取得期間は3月16日から2021年3月15日。取得した自己株式は消却を検討していくとしている。
SBGの株主である米有力アクティビスト、エリオット・マネジメントはSBGに対して2兆円規模の自社株買いを要求していた。

(以下略)

(出所 https://www.nikkei.com/article/DGXMZO56744690T10C20A3EAF000/

次に二回目の自社株買い発表に関する記事です。 

ソフトバンクG、4.5兆円資産売却 自社株買いに2兆円 
2020/3/23 日経新聞

ソフトバンクグループ(SBG)は23日、自己株式取得と負債削減に向けて4.5兆円の資産を売却または資金化すると発表した。中国・アリババ集団や国内通信子会社ソフトバンクなど投資先の上場株が主な対象になるとみられる。調達した資金は最大2兆円の自社株買いのほか、負債圧縮に充てることで財務を強化する。
SBGが投資会社として保有する株式の価値は27兆円を超える。一方、SBG自体の株式時価総額は19日時点で約6兆円と、保有株価値に比べ大幅に割り引かれて取引されていた。こうした市場の低評価を改善するため、保有資産を原資に大胆な自社株買いと負債圧縮に打って出る。
取引は今後4四半期にわたり実施するとした。調達する4.5兆円の資金は、最大2兆円の自社株買いに充てる。これは13日に発表した上限5000億円の自社株買いに追加して実施する。加えて残額を負債の償還、社債の買い入れ、現預金残高に充当する。

(以下略)

(出所 https://www.nikkei.com/article/DGXMZO57098380T20C20A3I00000/

以上の記事を見る限りでは、3月13日発表の自社株買い(5,000億円)は株主還元の強化および株価引き上げの効果を狙ったものです。そして、3月23日発表の自社株買い(2兆円)は市場の低評価の改善を狙うものです。

記事をまとめると、ソフトバンクは以下のような動きをしてきたと考えられます。

  • 外部の大口投資家から自社株買いの要求をされており、株価もかなり下落していたので、株価対策としてファンドが求める規模感には届かないが自社株買い(5,000億円)を発表
  • ところが、新型コロナウィルスの影響が大きく、また全世界的な株価暴落によりソフトバンクGが保有する株式の価値が下落することが懸念されたのか、ソフトバンクGの株式が更に売り込まれる事態に(株価急落が止まらず)
  • そのため、追加で資産を売却してでも自社株買いをすることになった

では、この自社株買いはどの程度のインパクトがあるのでしょうか。 

 

自社株買いの規模

今回の合計2.5兆円の自社株買いについては、以下の点がポイントです。

当社は、当社株式が大幅に割り引かれて取引されていると考えており、先週末の終値に基づくと、本質的な価値に対して当社史上最大幅となる73%もの過小評価となっています。今回のプログラム及び2020年3月13日に発表したプログラムによる自己株式取得は合計で2.5兆円となり、実施後は当社の発行済株式総数の45%の株式を取得し、それを消却することとなります。

(出所 ソフトバンクGプレスリリース https://group.softbank/news/press/20200323

2020年3月19日時点のソフトバンクGの株価をベースにすると2.5兆円という金額はソフトバンクGの時価総額の45%に相当するということになります。自社株買いで45%の株式を減らすということは、単純に言えば株価が2倍近くになってもおかしくないということです。

実際には、1年かけて自社株買いを実施していくため、45%という数字からはかなり上下するとは思いますが、凄まじいインパクトであることは間違いありません。

 

ソフトバンクGの狙い

ソフトバンクGの株価は巨額の自社株買い発表により2020年3月19日の安値2,609.5円を底として、現在は3,000円台後半まで株価は回復しています(2020年4月1日終値3,675円であり、3月19日安値からの増加率は約40%)。ここまでは狙い通りでしょうが、まだまだ株価としては低すぎるとソフトバンクGは評価しているものと思われます。

一方、自社株買いのきっかけの一つとなった米ヘッジファンドのエリオット・マネジメントが取得したと報道されている約30億ドルのソフトバンクG株式は、2020円2月6日現在のソフトバンクGの時価総額9兆8,787億円に対し約3%でした。その後、保有株式の増減があるかは不明ですが、現段階でエリオット・マネジメントの出資比率がソフトバンクGの意思決定を左右するほどの割合ではないことは間違いありませんが、他の投資家へ賛同を募るかもしれませんので、無視できるほどでもありません。

筆者は、今回の巨額の自社株買いは単なる株価向上策だけではないと考えています。

孫正義氏のソフトバンクG株式の保有割合は22.3%(2020年9月末時点)です。

仮に2020年3月19日時点のソフトバンクGの株価が続けば、2.5兆円で45%のソフトバンクG株式が減少することになります。そうすると、孫会長兼社長の持ち分比率は約40%まで上昇するのです。

すなわち、これだけの規模の会社であるにもかかわらず、ほとんどの意思決定を孫正義氏という個人が実質的に決めることが出来る(上場)企業となります。

そして、ソフトバンクGおよび孫正義氏は2.5兆円の自社株買いを決める前に、MBO(経営陣による自社買収=非上場化)を検討していたと報道されています。

ソフトバンクGおよび孫正義氏が考えるように、ソフトバンクGの株価が割安過ぎるであれば、MBOは良い選択肢でしょう。今回は見送られたようですが、株価が低迷するのであれば、今後も浮かんでは消える構想だと思われます。

そこでポイントになるのは、孫正義氏という個人の議決権割合が4割程度まで上昇しているのであればMBOの成立確度はかなり高くなるということです。そして、同様に、大株主である孫正義氏という個人の判断で会社の方向性が決まる以上、 エリオット・マネジメントのような投資家が何を要求しようが、ソフトバンクGは気にしなくても良くなるのです。

これこそが、ソフトバンクGおよび孫正義氏が狙った効果なのではないでしょうか。

すなわち、株価向上だけではなく、経営の(自分達にとっての)自由度の向上です。上場企業の株式(例えばアリババ、ソフトバンク)という客観的に評価が可能な保有資産価値の合計よりも、自社の株式時価総額が劣後しているのは、冷静に考えれば株式市場が現在のソフトバンクGの経営を否定しているようなものです。株式市場がソフトバンクGの本質的な経営戦略・価値を評価出来ないのであれば、しばらくは非上場化しておいても良いと孫会長兼社長が考えてもおかしくはないでしょう。

以上の想定は、うがった見方かもしれませんが、あまり外してはいないのではないかと筆者は考えています。今後のソフトバンクGの動向に注目です。