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コロナの影響を受けているコンサートの市場規模はどの程度なのか

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新型コロナウィルスの影響で、コンサートを中止・延期するアーティストが相次いでいます。

Perfume や EXILE が公演を中止したことや、RADWIMPS がコンサート中止にかかるツイートの中で「もし自己破産したら」 との言葉が出て、 大きな話題ともなりました。

一方で、コンサートを決行した東京事変は大きな批判を浴びています。

しかし、コンサートは以前と比べ、 アーティストにとって非常に重要な収入獲得手段となっていることも事実です。

今回は、現在の音楽業界の動向を確認すると共に、 音楽コンサートがキャンセルとなった際の影響について、 簡単に見ていくことにしましょう。

 

現在の音楽業界の流れ

まず、音楽業界のアーティストが収入を得る手段として一般人が思い付くのは、 何といっても CD の売上でしょう。

日本レコード協会が発表している 「日本のレコード産業 2019」 によれば、 2018年の音楽ソフトの市場規模は、オーディオレコード1,576億円、音楽ビデオ827億円、音楽配信645億円の合計3,048億円(億円未満は切り捨て。以下同様)となっています。

音楽配信(ダウンロードやサブスクリプション等)金額の推移は 2013年に底を打ち(416億円)から2018年に645億円まで拡大しています。

そのうちサブスクリプションは 2013 年の30 億円から 2018年に 348 億円まで急激に拡大しています。

それでも、CDの売上は減少が続いています。

以下は音楽ソフト (オーディオレコード、 音楽ビデオ等)のマーケット動向です。 

 
【音楽ソフトの暦年「生産」金額】
  • 1998年 6,074億円=日本の生産ピーク
  • 2008年 3,617億円
  • 2018年 2,403億円
【音楽ソフトの暦年「生産」数量】
  • 1998年 48,017万枚
  • 2008年 39,349万枚
  • 2018年 19,463万枚
以上の通り、音楽ソフトはこの20年で半分以下に生産が減少しています。
この要因は、CD アルバムの販売滅です。
日本レコード協会の統計では、1999年からアルバムとシングルの CD「生産」金額が分けて発表されています。
 
【CD生産金額/アルバム·シングル別】
  • 1999年 シングル 468億円、アルバム 4,503億円
  • 2008年 シングル 339億円、アルバム 2,119億円
  • 2018年 シングル 394億円、アルバム 1,146億円

【CD生産数量/シングル·アルバム別】 

  • 1999年 シングル 6,114万枚、アルバム 27,627万枚
  • 2009年 シングル 4.474万枚、アルバム 16,516万枚
  • 2018年 シングル 4,855万枚、アルバム 8,865万枚
このようにシングルCDよりも、販売単価の高いアルバムの生産が急減しています。
アルバムCDの需要が大きく減少してきたことが要因でしょう。
このように日本の音楽産業では、 アルバムの売り上げが著しく低下していることが、業界に大きく影響を及ぼしてきました。 
 

音楽業界の対応策

CD の売上減を補うために音楽業界はコンサートに力を入れてきました。

以下はライブエンタテインメントの市場規模のグラフです。 
f:id:naoto0211:20200306183653j:image (出所 ぴあ総研/ライブ・エンタテインメント市場規模の調査結果(確定値))

ぴあ総研のライブ・エンタテインメント市場規模の調査結果 (確定値) では、2018年のライブ・エンタテインメント市場 (音楽コンサートとステージでのパフォーマンスイベント)規模は、ぴあ総研が統計を開始した2000年以降で最高の5,862億円(前年比13.8%増)となっています。

公演回数は前年比 0.6%減となりましたが、1公演当たり動員数が増加したことから、動員数は前年比11.3%増の7,645 万人となっています。
ライブ・エンタテイメント市場の内訳は、上記グラフの通り、音楽コンサートが3,875億円、ステージ(ミュージカル、演劇、歌舞伎、お笑い、寄席、バレエ等)が1,987億円となっています。

音楽コンサートは、公演数が前年比1.6%減(59,678公演)となりましたが、動員数は前年比9.1%増(5,043万人)と伸び、動員一人当たり単価も増加したことから、市場規模はプラス成長を維持しています。

CD売上が減少してきた中で、2009年の1,543億円から2018年の3,875億円まで音楽コン
サートは市場が拡大してきました。

他の調査として一般社団法人コンサートプロモーターズ協会の調査もありますが、以下の通り同様の傾向を示しています。

  • 1999年 公演9,500本、動員1,610万人、売上814億円
  • 2009年 公演17,391本、動員2,606万人、売上1,255億円
  • 2018年 公演31,482本、動員4,862万人、売上3,448億円

音楽業界におけるアーティストはCDでの収入減少を、まさにコンサートでカバーしてきたというのが大きな業界動向ということが分かるでしょう。

 

現状の問題点

以上、音楽業界における大きな流れを見てきました。

CDが売れなくなった理由は、複合的なものでしょう。YouTube等で無料で視聴するということも可能になっていますし、CDアルバムのように「自分は聞かない曲」が入っているものは敬遠され、「自分の聞きたい曲」だけを購入する行動が増えました(ダウンロードはまさに一曲から購入可能です)。

音楽のアーティストは、CDの売上減少をコンサートで打ち返してきたというのが、近年の流れです。

今回のコロナウィルスの影響によるコンサート中止がどの程度の期間となるかは不明ですが、アーティストの収入に影響を及ぼすのみならず、報道されているように、場合によっては公演中止で(収入はないにもかかわらず)費用だけが発生することも想定されます。

ぴあ総研の調査では一公演当たりの平均売上は6百万円強、コンサートプロモーターズ協会の調査では一公演当たりの平均売上は10百万円強となっています(実際には人気アーティストの集客が大きく、一公演当たりの売上の中央値はもっと低いと想定されますが)。

アーティストの重要な収入源であるコンサートについては、早急な再開が音楽業界にとっては望まれるでしょう。 また、無観客となってしまっても、ネットでの配信を行う、音楽ソフトとして収録して販売する等の収益策を早急に構築する必要があると思われます。