銀行員のための教科書

これからの時代に必要な金融知識と考え方を。

あえて言うならば、学校休校よりも公共交通機関対策こそが重要では?

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新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐために政府が全国一律の休校要請を行いました。

小中高校について一斉に休校を促すものです。

今回はこの要請について、ほんの少しだけ考察します。

 

小中高の在学者数

政府が出した要請によって影響される生徒の数はどの程度でしょうか。

文部科学省の「令和元年度学校基本調査調査結果」によると以下となります。

  • 小学校は、636万9千人
  • 中学校は、321万8千人で
  • 高等学校は、316万8千人 

(出所 文部科学省「令和元年度学校基本調査調査結果」https://www.mext.go.jp/content/20191220-mxt_chousa01-000003400_1.pdf

合計すると1,275万人程度となります。

 

駅の乗降客数

まずは以下のグラフをご覧下さい。

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(出所 日本リテールファンド投資法人/2019年8月期(第35期) 決算説明会付属資料)

我々は、日々の通勤で嫌というほど満員電車を味わっていますが、日本の駅の乗降客数は世界的に見ると異常です。

新宿駅だけで一日400万人です。米国のタイムズスクエアの10倍以上となります。

バスについては、全国で一日換算で1,200万人程度の乗車となっています(国土交通省の自動車輸送統計年報では、2018年で乗合バスの輸送人員は4,347,726千人であり365で割ると一日当たり約1,200万人です)。

航空便では、国土交通省の平成30年航空輸送統計(暦年)によると、国内線が10,300万人、国際線(日本のエアラインのみ)が2,330万人となっています。これは一日当たりにすると約35万人です。

いずれにしろ、公共交通機関の狭く密閉された空間で、これだけの人員が移動をしているのです。

 

ちょっとした「異見」

国の宝は子供です。その子供をコロナウィルスから守るという発想自体は全く異論ありません。

しかし、感染拡大だけに焦点を当てるのであれば、最も感染の可能性が高いのは「公共交通機関」ではないでしょうか。

もし鉄道会社等に感染者が相次ぐようなことになった場合には、公共交通機関の運行本数は減少し、更に狭い空間で人が移動することも想定されます。

「公共交通機関における新型インフルエンザ等対策に関する調査研究(報告)」 によれば、(あくまでインフルエンザの)流行のピーク時(最大40%程度が欠勤する状況)の朝ラッシュ時の運行本数を、平時の2~5割と回答した鉄道路線が半数以上(12 路線)を占めます。

また、乗務員の欠勤率が1割程度となったとき、平日ダイヤを維持できない鉄道事業者は半数以上(13 事業者)を占めています。

(出所 国土交通省/公共交通機関における新型インフルエンザ等対策に関する調査研究(報告) https://www.mlit.go.jp/pri/kikanshi/pdf/55-3.pdf

公共交通機関については、運行を制限すると経済面で大きな問題が出ることは間違いありません。筆者としてはコロナウィルス対策として公共交通機関を止めるべきではないと考えています。

しかし、小中高の休校が有効なコロナウィルス対策なのでしょうか。休校しても共働きの親が多い現状では学童保育等に子供達は集まってしまうのではないでしょうか。

北海道の知事が「緊急事態宣言」を発表し、今週末の外出を控えるよう道民に異例の呼びかけを行ったことは、究極的な選択肢を示しました。

本当に政府がコロナウィルスの感染拡大を防止したいのであれば、様々な選択肢が検討され、それが国民に議論された過程も含めて示されることを筆者としては望みます。