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朝日新聞社が潰れる日は来るのか~不況業種が生き残っている事例~

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近年、新聞社の業績が悪化しています。

マスメディアは存在しなければ国・政府にとって都合の良い一方的な情報しか国民に伝えられず、国・政府が国民を思うがままに支配することになってしまいます。

民主主義国家としては、マスメディアの存在は必要といって良いでしょう。

マスメディアの報道は国民が国政に関与する際の重要な判断の材料を提供し、国民の知る権利に奉仕するものなのです。

一方で、近年はインターネットの普及に伴いマスメディアを利用しなくとも情報が入手出来る時代となりました。

加えて、偏向報道・捏造報道が指摘されるようになり、またテレビの番組はバラエティ色が強くなる等、既存マスメディアの魅力が薄れたともいわれています。ニュースソースとしてSNSを重視する人も増えてきているでしょう。

このような状況下、新聞の購読者は減少傾向が止まりません。

新聞は構造不況業種となってきていることは否定できないでしょう。

新聞社自身が自己否定をすることは難しいでしょうから、新聞社の業績が悪化していることについて報道で目にすることは少ないかもしれません。しかし、業績悪化自体は事実です。

今回の記事では、新聞社としては有名な朝日新聞社を事例として新聞社の業績について確認すると共に、構造不況業種で生き延びている企業がどのような収益構造となっているのか、なぜ生き残っているのかをみていくことにしましょう。
(なお、筆者は朝日新聞社に恨みがある訳ではありません。あくまで企業分析の事例として挙げておりますのでご留意下さい。)

新聞社を取り巻く環境

まずは新聞社を取り巻く環境についてみていきましょう。

ここでは日本新聞協会の発表文を引用します。

新聞協会経営業務部はこのほど、「日刊紙の都道府県別発行部数と普及度調査」結果をまとめた。2017年10月現在の総発行部数は、前年比(以下同) 2.7%減の4212万8189部だった。減少幅は14年の3.5%に次いで大きい。部数でみると114万7958部の落ち込み。13年連続で減少した。

新聞協会加盟117紙の部数を集計した。内訳は朝夕刊セット35紙、朝刊単独69紙、タ刊単独13紙。前回調査以降、岐阜がセットから朝刊単独紙になった。
一般紙は2.7%減の3876万3641部、スポーツ紙は2.6%減の336万4548部だった。一般紙は13年連続、スポーツ紙は17年連続で減少した。
http://www.pressnet.or.jp/news/headline/180101_11787.html

これが新聞の状況です。
2004年は5302万1564部でしたから、13年で1000万部、約2割も減少しているということになります。

これが新聞社全体を取り巻く環境です。

朝日新聞社の業績(概要)

上記のような新聞社を取り巻く環境の中、朝日新聞社の業績はどのようになっているでしょうか。以下で簡単に確認しましょう。

<朝日新聞社の連結業績推移>
2013年3月期 売上高4,720億円、経常利益173億円
2014年3月期 売上高4,695億円、経常利益170億円
2015年3月期 売上高4,361億円、経常利益132億円
2016年3月期 売上高4,201億円、経常利益188億円
2017年3月期 売上高4,010億円、経常利益152億円

以上のように、過去5年で売上高は▲15%、経常利益は▲12%となっています。

この業績水準は新聞社としては、どのようなレベルなのでしょうか。

他社とも比較してみましょう。

 

<日本経済新聞社 連結業績>
2016年12月期 売上高3,590億円、経常利益118億円

<産業経済新聞社 連結業績>
2017年3月期 売上高1,230億円、経常利益7億円

 

業績比較をすると朝日新聞社の業績が他社比では良好であることが分かります。

特にインターネット時代にもある程度対応しているとの評価を得ている日本経済新聞社よりも業績が良いというのが特徴的でしょう。

なお、新聞社の発行部数は以下の通りのようです。

朝日新聞社は国内2番手に属しています。

<新聞社の発行部数(2015年) >
日本ABC協会が発表した各新聞社の発行部数は以下の通りとなっているようです。
読売 893万部
朝日 676万部
毎日 327万部
日経 265万部
産経 164万
http/multipedia.jp/newspaperranking japan/

 

朝日新聞社の簡単な業績状況は上記の通りですが、もう少し業績の内容について踏み込んでみていきましょう。

朝日新聞社のセグメント別業績

朝日新聞社の連結業績は他新聞社よりも良好であることを上記では述べました。

では、朝日新聞社の業績の詳細については何か特徴はあるのでしょうか。

以下をみてください。

数値は2017年3月末時点のものです。

<従業員数(連結)>
メディア・コンテンツ事業 6,091人
不動産事業 750人
その他の事業 530人
合計 7,371人

<セグメント別業績>

2016年3月期

  • メディア・コンテンツ事業 売上高3,862億円、営業利益70億円
  • 不動産事業 売上高243億円、営業利益43億円

2017年3月期

  • メディア・コンテンツ事業 売上高3,677億円、営業利益16億円
  • 不動産事業 売上高247億円、営業利益49億円

<主要な設備の状況(数値は簿価)>

  • 東京本社 252億円
  • 大阪本社・中之島フェスティバルタワー 459億円
  • 中之島フェスティバルタワーウエスト 475億円
  • 有楽町センタービル49億円
  • 赤坂溜池タワー 4億円
  • 有楽町駅前ビル(イトシア) 35億円
  • 総局・支局等(全社)取材拠点319カ所 58億円
  • 販売店舗(全社)販売拠点379カ所 101億円
  • 有形固定資産合計 2,191億円

 

この数値をみると朝日新聞社の保有する有形固定資産の内、ほとんどは賃貸用のビルであることが分かります。

特にセグメント別の業績をご確認ください。

朝日新聞社は本業である新聞紙の発行ではあまり儲けていません。
収益・保有資産だけをみれば朝日新聞社は「不動産屋」といえるでしょう。

(ご参考)他社の業績動向

ここで少しデータが多くなってしまいますが、他社の業績についてみて頂きたいと思います。

いずれも基本的には構造不況業種もしくは構造不況だった業種といえます。

数値は全て直近である2017年9月中間決算のものです。

 

フジ・メディア・ホールディングス

売上高 3,118億円(前期比▲4.8%)
営業利益 117億円(同▲ 12.3%)

<放送事業>
売上高 1,452億円(同▲8.5%)
営業利益 35億円(同▲77.9%)

<都市開発事業>
売上高 514億円(同▲8.1%)
営業利益 104億円(同+29.2%)

 

倉敷紡績

売上高789億円(前期比+0.8%)
営業利益 24億円(同+0.9%)

<繊維事業>
売上高326億円(同▲6.3%)
営業利益3億円(同▲2.8%)

<不動産事業>
売上高24億円(同▲ 1.9%)
営業利益15億円(同▲2.9%)

 

JR九州(九州旅客鉄道)

売上高1,894億円(前期比+10.1%)
営業利益327億円(同+15.8%)

<運輸サービス>
売上高895億円(同+6.6%)
営業利益180億円(同+18.1%)

<駅ビル・不動産>
売上高309億円(同+25.6%)
営業利益117億円(同+13.1%)

 

日清紡ホールディングス

売上高 2,328億円(前期比▲1.7%)
営業利益 4億円(黒字転換、+27億円)

<エレクトロニクス>
売上高 771億円(同+1.4%)
営業利益▲45億円(赤字幅減、+11億円)

<ブレーキ>
売上高 762億円(同+2.2%)
営業利益 25億円(黒字転換、+30億円)

<不動産>
売上高37億円(同▲9.1%)
営業利益27億円(同▲8.6%)

 

ツカモトコーポレーション(和装)

売上高 100億円(前期比▲10.6%)
営業利益 1億円(大幅黒字)

<和装>
売上高21億円(同▲16.1%)
営業利益0億円(黒字転換)

<不動産賃貸>
売上高5億円(同▲22.2%)
営業利益2億円(同▲4.3%)

 

以上、様々な業種における企業の事例でした。

いずれの業界も好調だった時期がありますが、現在は厳しい環境におかれています(JR九州も不動産がなければ上場できなかったでしょう)。

皆さんはこの業績をみてきてお感じになることはありますでしょうか。

構造不況業種(もしくは構造不況業種だった)といわれているような企業は、安定的な収益源として不動産を有効に活用している企業が生き延びています。

本業が厳しくとも、そして経営者に例え経営能力がなかったとしても、立地が良い、元の値段が安いというような不動産を保有する業績の長い企業は、簡単には潰れません。不動産が下支えしてくれるのです。

今回挙げた企業ではフジ・メディア・ホールディングスが典型的でしょう。フジテレビの業績はかなり厳しくなってきていますが、サンケイビルが収益に貢献しており、黒字をしっかりと確保しています。

これが日本の企業の現実なのです。

優良な不動産を保有する企業は、自社のビジネスモデルが古くなり、競争力が無くなったとしても、保有不動産が収益をかせぐことにより生き延びることができているのです。

これが筆者の経験則です。

朝日新聞社の今後

新聞社にとって発行部数が減少していくことは二重の意味で苦しいものです。

一つ目は当然に購読者が払う新聞購読料収入の減少です。

もう一つは、発行部数が下がることによる新聞紙面への広告掲載料の引き下げです。

いずれも新聞社にとっては重要な収益源です。

朝日新聞社も講読者数は減少の一途でしょう。日本の総人口が減少する中では不可逆です。どんなに素晴らしい新聞記事(朝日新聞のことを指している訳ではありません)を発表することができたとしても全体のパイが増えない以上、じり貧になることは目にみえています。
しかし、朝日新聞社には業歴の長い他社同様、好立地の賃貸物件があります。

収益不動産がある以上、朝日新聞社は同業他社よりは生き延びる可能性が高いといえます。

ただし、その時には新聞社が不動産賃貸事業をやっているというよりは、賃貸事業を営む不動産会社が新聞紙の発行も事業としている、ということになっているかもしれません。
結論からすると朝日新聞社はそう簡単には潰れないということです。

これが現実でしょう。

 

なお、朝日新聞社は非上場企業ですが、先ほど事例紹介したように、本業ではなかったはずの不動産事業で業績を下支えしている上場企業も存在します。

このような経営を許してきたのは日本の株主によるガバナンスが効かなかったからであろうと思います。

株式投資家にとっては、安定してはいるものの面白くない投資先となっているでしょう。選択と集中を行い利益率を高める等、企業価値を向上させていくことが、本質的には投資家が求めている結果だからです。

一方で、銀行員からみた場合には不動産の下支えがあると「安心して貸出ができる先」となります。

日本の企業は業歴が長い企業が多いと言われますが、その要因は銀行によるガバナンスが効いてきた結果(債権者によるガバナンス)ともいえるのです。