年末といえば宝くじです。
毎年、銀座の有名宝くじ売り場である「西銀座チャンスセンター」に並ぶ購入者の映像がテレビで流れるのは風物詩の一つでしょう。
今年の年末ジャンボは1等賞金7億円、前後賞(1億5,000万円)合わせて10億円と非常に夢のある賞金額となっています。
今回はこの宝くじについて、分かっているけど他人に指摘されたくないことを、あえて少し考えてみたいと思います。
宝くじの当選確率
まずは基本を確認しましょう。
2020年の年末ジャンボ宝くじの当選金と当選本数は以下の通りとなっています。
- 1等 (7億円) 22本
- 1等の前後賞 (1億5,000万円)44本
- 1等の組違い賞 (10万円) 4,378本
- 2等 (1,000万円) 88本
- 3等 (100万円) 880本
- 4等 (5万円) 44,000本
- 5等 (1万円) 1,320,000本
- 6等 (3,000円) 4,400,000本
- 7等 (300円) 44,000,000本
- 販売額 1,320億円(22ユニット※1ユニット2,000万枚)
1ユニット=2,000万枚に1等は一つですので、1等の当選確率は2,000万分の1となります。そして、1等の前後賞が1,000万分の1の当選確率となります。
全体では22名が1等7億円を手にすることになります。
改めて年末ジャンボ宝くじの当選確率を一覧にまとめると以下の通りとなります。
- 1等 1/20,000,000
- 1等の前後賞 1/10,000,000
- 1等の組違い賞 1/100,503
- 2等 1/5,000,000
- 3等 1/500,000
- 4等 1/10,000
- 5等 1/333
- 6等 1/100
- 7等 1/10
上記を見ると、1等から3等までは当選する確率が桁違いに低いことが分かるのではないでしょうか。
1等の当選確率のレベル
1等の当選確率である2,000万分の1、すなわち「0.000005%」は、どのようなレベルと考えれば良いのでしょうか。
少々ベタですが、様々な社会事象の確率と比較してみましょう。
- 米国国家運輸安全委員会(NTSB)の調査によると、米国内で航空機に乗って死亡事故に遭遇する確率は 0.0009%(出所 東京海上⽇動リスクコンサルティング「航空機・列車における重大事故リスクへの対応」2014年)
- 米国内で自動車に乗って死亡事故に遭遇する確率0.03%(出所 東京海上⽇動リスクコンサルティング「航空機・列車における重大事故リスクへの対応」2014年)
- 日本においては、文部科学省による国内事故を対象とした推計では、今後 30 年以内に航空機事故で死亡する確率は0.002%(出所 東京海上⽇動リスクコンサルティング「航空機・列車における重大事故リスクへの対応」2014年)
- 日本における営業用トラック当たりの死亡事故件数割合0.00018%(出所 全日本トラック協会「2019年の交通事故統計分析結果【 確定版 】」)
- 道を歩いている見知らぬ人に「誕生日おめでとう」と言って本当に誕生日である確率0.27%(=1÷365)
- サイコロを6回振って同じ数が出続ける確率は0.002%
- コインの表が10回連続で出る確率0.098%
これだけ見ても、2,000万分の1、すなわち0.000005%のイメージがわかないかもしれません。
今回の年末ジャンボ宝くじ1等の当選確率は、以下と同じレベルと言えます。
- サイコロを10個振ってゾロ目が出る確率0.0000099%の半分
- 歩いている人間に雷が落ちる確率約0.00001%(≒落雷による死傷者÷日本の人口)の半分
こんなレベルです。ほぼ起こり得ないレベルの確率が「2,000万分の1=0.000005%」です。
宝くじの売上金の使い道
我々が購入した宝くじの代金は、我々だけに還元されている訳ではありません。
宝くじの売上金の使い道は以下のようになっていると公表されています。
(出所 全国自治宝くじ事務協議会Webサイト)
これを見れば分かる通り、宝くじの売上金の4割弱は、収益金として発売元である全国都道府県及び20指定都市へ納められ、公共事業等に使われています。
そして、1割強は印刷経費や売りさばき手数料等に充てられます。
結果として、我々に戻ってくる、すなわち「当せん金として当せん者に支払われる割合は5割弱」となります。
「宝くじを買う」ということの意味
筆者は、今まで相応に宝くじを買ってきました。年末ジャンボは、年末の楽しみであり、当選した際の夢を語るのも良いコミュニケーションでした。
しかし、冷静に考えれば、宝くじを買うということは以下を意味するのです。
- 宝くじを買う際に、宝くじ売り場や印刷会社に約1割の手数料を支払う
- 宝くじを買った瞬間に約4割を自治体に寄付する
- 残りの5割を購入者で分け合う
- その分け合ったおカネで1等に当選する確率は、サイコロを10個振ってゾロ目が出る確率の半分、もしくは歩いていて雷に当たる確率の半分
これは、宝くじ売り場や自治体に寄付をしながら、当たるはずもない可能性にも賭けているということです。
要は、「宝くじの運営者達にカモられている」のです。
こんなことは筆者が指摘しなくとも、誰もが分かっているのです。それでも楽しみのために、夢のために、ドキドキ・ワクワクを得るために、つい買ってしまうのです。
宝くじとは、人間の心理をうまく利用した「自治体が個人からおカネを巻き上げる仕組み」であり、「切り口を変えた税金徴収策」なのです。
単なるエンターテイメントであると、誰もが分かってはいるのです・・・。