焼き肉チェーンの「牛角」等を展開する外食大手のコロワイドが、定食チェーンの大戸屋ホールディングスを2020年9月に買収しました。
この買収劇は敵対的買収として話題にもなりましたが、大戸屋は赤字です。
コロナ禍の中で、コロワイド自体の業績はどのようになっているのでしょうか。大戸屋を買収しても問題なかったのでしょうか。
今回は、コロワイドの業況について簡単に見ていくことにしたいと思います。
コロワイドの業績
新型コロナウィルスの影響で外食を控える傾向が広がったこと等から、コロワイドの2020年4〜9月までの上半期の決算は、売上が前年同期比▲39%の728億円、最終的な損益は70億円の赤字となっています。
【コロワイド2021年3月期上半期】
- 売上収益729億円(前年同期比39.3%減)
- 事業損失89億円(前年同期は45億円の事業利益、赤字転落)
- 親会社に帰属する当期損失58億円(同1億円の利益、赤字転落)
業績はコロナで大きく落ち込み、赤字転落となっています。
この赤字により資本合計は296億円、自己資本比率は8.9%まで低下しています。
コロワイドの財務基盤はかなり「弱い」状況にあります。
資金繰り状況
上記の通り大赤字となっているコロワイドですが、資金繰りの状況はどのようになっているのでしょうか。
2020年9月末時点では現預金は359億円あります。2020年3月末時点では322億円でしたので、現預金はむしろ増加しています。
一方で、2020年9月末時点の社債及び借入金は1,410億円であり。2020年3月末時点の1,111億円を299億円上回りました。
簡単に言えば、借金をしなければコロワイドの現預金は急減していたことになります。
但し、2021年3月期2Qにおける営業キャッシュフローは▲16億円です。コロワイドは業態柄店舗投資により減価償却費が重い企業です。2021年3月期2Q(4〜9月)では減価償却費だけで104億円となっています。
減価償却費は会計上の費用であり、実際にキャッシュの流出は起きません(既にキャッシュは支出済みです)。
そのため、赤字額ほどにはキャッシュが流出しない業態であることには留意が必要でしょう。
大戸屋の業績
コロワイドが買収した大戸屋の2020年4~9月期の連結決算は、最終損益が46億円の赤字(前年同期は2億円の赤字)です。上半期として過去最大の赤字幅となっています。
業績悪化と共に有利子負債も膨らみ、2020年9月末には14億円の債務超過に陥ってもいます。
コロワイドが大戸屋を買収したのは2020年9月ですので、下半期からは大戸屋の赤字もコロワイドは受け入れなければいけません。
コロワイドの今後
以上、コロワイドの業況について確認してきました。
簡単に言えば、コロワイドには余裕がありません。もちろん、コロナ前から不振が続く赤字の大戸屋を買収している余裕も、筆者が見る限りありません。
コロワイドは、2021年3月期通期の業績見通しを売上収益1,892億円(前期比▲19.6%)、事業損失58億円、親会社に帰属する当期損失55億円としています。要は、下半期は今よりも業績は改善する見通しなのです。
コロナ感染者拡大、一部地域での休業・時短要請がなされる状況下においては、コロワイドの業績が想定通りに改善するかは不透明です。
そして、コロワイドには「のれん」が資本300億円弱を大きく超える800億円超あります。コロワイドの各業態の業績が今後も苦戦するならば、のれんの減損処理を迫られる可能性もあります。債務超過に転落する可能性もあるのです。
コロワイドの今後の動向に注目していきたいと思います。