情報銀行という言葉を耳にする機会が増えてきています。
先日、金融庁が開催している金融審議会「金融制度スタディ・グループ」では、まさに情報銀行への取り組みについて紹介されていました。
今回は、この銀行における情報銀行への取り組みについて確認していきましょう。
情報銀行とは
まずは情報銀行についての定義について確認しておきましょう。
以下は総務省が発表している指針にて触れられている定義です。
情報銀行(情報利用信用銀行)とは、個人とのデータ活用に関する契約等に基づきPDS等のシステムを活用して個人のデータを管理するとともに、個人の指示又はめ指定した条件に基づき個人に代わり妥当性を判断の上、データを第三者(他の業者)に提供する事業。
(出典 総務省「情報信託機能の認定に係る指針ver1.0」(案))
また三井住友銀行は「情報銀行は、個人との契約に基づき、個人の為にパーソナルデータの管理や運用を行う事業」と定義しています。
銀行と呼ばれていますが、別に銀行である必要はありません。
総務省が発表している指針でも法人格であること、一定程度の資力があること等は要求されていますが、銀行であることを要求されている訳ではありません。
それでも、銀行が参入しようとしているのは以下の観点からです。三井住友銀行の資料から抜粋します。
SMBCは、パーソナルデータを安心・安全に預り・運用する機能の提供が、これからの金融機関に求められている新たな社会的使命と考え、情報銀行の事業化に取り組んでいる。
<パーソナルデータ にかかる社会課題>
Society5.0の実現へ向けて、データの利活用が求められているが、 パーソナルデータが使われることへの「不安」や、利益や便益が還元されないことへの「不満」が課題となっている。
<情報銀行による課題解決>
これに対し、データポータビリティにもとづく情報銀行が提唱されているが、情報銀行が「個人(ユーザー)の代理人」の役割を果たすことによって、これらの課題が解決されると考えている。
<情報銀行の担い手>
そこで、「安心してパーソナルデータを預けられる」という観点において、SMBCグループが永年培ってきた社会的信用が求められているとの認識の下、情報銀行実現へ向けた検討を進める方向。
出典:金融審議会「金融制度スタディ・グループ」(平成30事務年度第1回)資料
銀行が「情報銀行」に商機を見出しているのは、銀行が持つ「信用」が強みとなると認識しているからなのです。
具体的な取り組み事例
それでは、銀行が情報銀行としてどのようなビジネスを想定しているのか、その実例を見ていくことにしましょう。
金融審議会「金融制度スタディ・グループ」(平成30事務年度第1回)の開催資料として公表されている三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)の取り組みがイメージしやすいでしょう。
以下、三菱UFJ信託銀行の資料を掲載(抜粋)します。
(出典:金融審議会「金融制度スタディ・グループ」(平成30事務年度第1回)資料)
所見
MUFGの取り組みは具体的でわかりやすいものです。
筆者は情報銀行を担うのが銀行である必要は全くないと考えてはいますが、銀行側にとってみれば、この分野でプラットフォーマーになれるかは非常に重要でしょう。
銀行は、「お金を流通(=金融)」させる事業という定義を超えて、「情報を流通」させる事業であると、自らの定義を変えていくことになるのかもしれません(すでに変わってきているとも言えますが)。
MUFGの情報銀行事業が成功するかは筆者には分かりません。ただし、間違いなく、意思決定の迅速化(大企業病等からの脱却)、他業種との協働(自前主義からの脱却)等が必要になるでしょう。いずれも銀行が苦手なところです。
MUFGの信託銀行が、顧客に支持されるプラットフォームとなるか、今後の動向を注目しています。