銀行員のための教科書

これからの時代に必要な金融知識と考え方を。

スルガ銀行のパワハラ等問題事例はかなりスゴい~第三者委員会報告書より~

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スルガ銀行が調査を依頼していた第三者委員会が調査結果を報告しました。

この第三者委員会は2018年1月に株式会社スマートデイズがシェアハウスオーナーに対する賃料支払を中止したことに端を発するシェアハウス関連融資問題の発生を受け、ステークホルダーに対する説明責任を果たすことが不可欠として、スルガ銀行が、同行から完全に独立した中立・公正な専門家のみで構成される「第三者委員会」を設置して、事案の徹底調査と原因の究明をしてきたものです。

今回は、この報告書のうち、スルガ銀行で行われていたパワハラ等の事象がどのようなものだったのかについて確認していきましょう。

 

報告書の内容

以下でスルガ銀行の内部で起きていたパワハラ事象(と関係者が感じている事象含む)につき、第三者委員会の報告内容を確認していきましょう。既に新聞等で報道されてはいますが原文を確認するとさらにリアリティーがあるかとおもいます。

 

【第三者委員会報告書(抜粋)】

センター長会議に出席していた営業店の長らのインタビューにおいて、センター長会議等に関し、以下のような発言がみられた。

  • 毎月、中間、(月末の)前日、月末と、ストレッチ目標に対する達成度合いを管理され、数字が足りないとセンター長会議の場や、電話で叱責された
  • センター長会議では、目標数値を達成できない場合には、マネジメントのあり方を叱責される
  • 前月に目標未達だったら、その未達分を翌月に加えて目標を達成しよう、というふうに言われることもあった
  • センター長会議では、昔は怒鳴られるシーンが多かったが、徐々に雰囲気が変わっていって、最近は否定されることが多くなってきた。具体的には、なぜできなかったかということを検証するというように、ある種アカデミックな場に変わっていった
  • センター長会議では、麻生氏のみではなく、パーソナル・バンクの本部の部長、副部長も怒っていた。「パーソナル・バンクがお前たちこけたら、銀行なんてどうすんだよ」等とよく言われた。毎週、行くのが嫌だった

→ここまでは、特に問題がないでしょう(筆者の感覚ですが)。

 

当委員会が全行員を対象に実施したアンケートにおける、関連する設問に対する回答状況は以下の通りである。 まず、スルガ銀行の営業ノルマを厳しいと感じたことがあるか、との設問に対し、「はい」と回答した行員は、全行員でみると39.6%、資産形成ローンの営業に携わったことのある行員でみると87.2%となっている。(「全行員」には、営業に携わらないバックオフィスの行員や、子会社の行員、出向中、休職中の行員等も含まれるため、他の設問にて、資産形成ローンの営業に携わったことがあると回答した行員のみを母数とした回答状況も並記している。以下本項において同じ。)とりわけ、収益不動産ローンを取り扱うパーソナル・バンクの行員の大半は、営業目標が厳しいとの認識を有していた実態が伺える。

 

当社のノルマ(融資実行残高目標)を厳しいと感じたことはありますか? (上段:全行員下段:資産形成ローンの営業に携わったことのある行員) 

  • (全行員)はい1,423(39.6%) いいえ2,143(59.6%) 未回答29(0.8%) 合計3,595
  • (資産形成ローンの営業に携わったことのある行員) はい299(87.2%) いいえ44(12.8%) 合計343(100%)

前問で「はい」と回答された場合、それは、何故でしょうか?

※特徴的な回答を抜粋

(1)新規以外の条件変更稟議や法人稟議を作成していると恫喝される。できないと業務終了後母店へ通い、できるまで夜遅くまで電話セールスさせられる。

(2)営業店所属長との会話の中で、営業担当社員の人数に対し過大な目標を割り当てられていることを聞いた。審査結果が否決、減額の回答に対し、営業店が一度で納得することが少なく、再申請されるケースが多い。それだけ営業数字のプレッシャーがかかっていると感じた。

(3)普通では売れる商品ではない。方針が尋常でない(ローリスク・ハイリターン)。純増目標である。 銀行目標のほとんどを、パーソナル・バンクだけがやらねばならないから。

(4)月末近辺になると今月できないのか、できるように行動しろとの指示がある。実行後、月が変わるとまた今月の数字についての支持・通知となり短期的な目標・指示の繰り返しである。日本金融新聞を購読して他の金融機関の状況をみると当社の融資目標残高が高いことを感じます。

(5)もともとの目標自体が非現実的な数字になっているにもかかわらず週刻みのラップ目標に達成していないと、毎日のように追いかけられ会議では罵倒されるから。(支店目標を達成するために好意にしていただいてるお客様にお願いで借り入れしてもらい、翌月にはすぐ繰り上げ返済するようなチョイ貸しが月末や期末には横行し達成しているような目標)

(6)目標値が高すぎる。できないことを叱責される。首都圏では出来ているのに静岡でできないのはおかしい。と地域差を無視した数字を挙げてくる。

(7)毎月、月末近くになってノルマが出来ていないと応接室に呼び出されて(バカヤロー)と、机を蹴ったり、テーブルを叩いたり、1 時間、2 時間と永遠に続く。給料返せなどと、怒鳴られる。こうゆう、本部長や支店長、センター長は1人2人ではない。知っている限りでは全体の半分ぐらいそうだ。数字で怒鳴ったりしない支店長は、珍しく社員の中で噂が流れるほどだ。ノルマが出来ないと夜の10時過ぎても帰れない。残業代など支払われるはずがない。

(8)善意や良心をある程度もって活動すれば断らざるを得ない案件が出てきますがこれまでの目標ですと相談を受けたものについてはすべてやらないと目標達成をすることが不可能だからです。

(9)恫喝する執行役員がいる。

(10)過度な営業目標があり、目標は必達であり、達成出来ていない社員には恫喝してもよいという文化があります。営業活動についてはマネージャークラスであっても行動記録票の提出を求められ、訪問件数・架電件数・申請件数をもとにまた叱責があります。毎日これを繰り返しであり、精神的に追い詰められていました。

(11)①過大で無理な目標設定②営業本部からの締付けが厳しく、達成率が悪いと恫喝③成績が奮わないと集合TMにて見せしめのようにひたすらTMする罰則制度④SSP会議ではパワハラで恫喝が当たり前⑤週次ラップが支店及び個人に課せられ、達成していないと本部や支店長に詰められる⑥計数報告にて現実の数字を報告すると、少ないと直されるため過大に自己申告執行役員として恫喝することに秀でている人が舵取りをしている⑧商品が売れないのは現場がやらないから、とする風土

(12)7%超の無担保ローンを月に10億実行しろ、との目標は過大であると思いませんか?

(13)相当な個人的人脈がないと成しえないと思えるレベルの目標値であった。

(14)人間否定、恫喝、物を投げる、会社をやめろ等上役、支店長からされるため。

(15)「右向け右」が極端すぎている。ローンができなければ、すべて駄目な風潮が強く、また、3.6% からのフリーローンが、7.0%以上でなければ承認をもらえない状況に、逆に今後の収益の伸びしろに危機感があるのか、と経営方針に私たちにも不満と不安がありました。また、ブロック会議内で、各自の数字を公表される状況の中、常に強力なプレッシャーを受けていました。ローン数字も 「もっと金額を盛れ!」と ODP 会議で言われます。

 

→これが公式文書で残ることがちょっとした驚きかもしれません。次も事例となります。

 

営業成績が伸びないことを上司から叱責さ れたことはありますか?

前問で「はい」と回答された場合、特に厳しく叱責された例を挙げて、その状況を説明してください。

※ 特徴的な回答を抜粋

(1)「なぜできないんだ、案件を取れるまで帰ってくるな」といわれる。首を掴まれ壁に押し当てられ、 顔の横の壁を殴った。

(2)(営業店長在任時)本部長、推進部長、ブロック長、MAからの厳しい叱責は、会議や電話にて日常的におこなわれていました。叱責のみならず、部下の取上(非公式な異動)、TM 強要、会議の場での侮辱、月曜日朝の営業報告(休日出勤強制)など枚挙に暇がございませんが、最も印象に残っているのは営業会議の場で案件がないことを理由に「今から営業してこい」と追い出されたことです。

(3)センター長会議において、実績不振店に対し集中的に叱責されることがある(不振理由は所属長のマネジメントが悪いとされることが多い)

(4)数字ができないなら、ビルから飛び降りろといわれた。

(5)センター長より営業成績が上がらないことに対し、「銀行の収益の足を引っ張る社員」、「去れ」、「お前に給与を支払うのが勿体無い」、「大した営業成績も上げずに時間外ばかりつけやがって」 など厳しく叱責されました。

(6)ほぼ毎日 30 分以上説教される。

(7)上司に呼ばれ個室で 2 人になり叱責を受けた。他の社員の前でも叱責を受けた。「なぜできないのか?」「それで?それで?だから?」「銀行員なんてやめちまえ」「できないくせに偉そう」等パワハラだと感じていた。

(8)担当しているチームの目標数字に対し進捗が不調であったとき、チーム全体を前に立たせ、できない理由を言わされた。時間は2時間以上にのぼり支店の社員の前で給与額を言われそれに見合っていない旨の指摘を受け、週末に自身の進退(退職)を考え報告を求められた。

(9)上司からではなく、一部幹部から叱責された。毎週1回のペースで行なう会議では、無担保ローン1件5,000千円以上の案件を上程することが必須で、営業本部の幹部が参加して、案件を上程できなかった回が続いてしまうと厳しく叱責された。当時の部署の上司は、幹部にさらに強く叱責され ていた。

(10)毎日 2~3 時間立たされて詰められる、怒鳴り散らされる、椅子を蹴られる、天然パーマを怒られる、1ヶ月間無視され続ける等々

(11)かなり昔ではあるが「死ね」「給料どろぼう」「出来るまで帰ってくるな」などは平気で言われた

(12)月末に融資案件がダメになると「他の支店に頭を下げてこい」「数字を頼んでこい」など

(13)休み前金曜日に、「月曜までに案件とってこい」などの指示

(14)上司の机の前に起立し、恫喝される。机を殴る、蹴る。持っていった稟議書を破られて投げつけられる。

(15)毎日、毎日、怒鳴り続けられ昼食も 2 週間ぐらい全然、行かせてもらえず夜も11時過ぎまで仕事をさせられ体調が悪くなり、夜、眠れなくなって、うつ病になり銀行を1年8ヶ月休職した。

(16)目標が達成できなかった時に、支店長席の前に1時間以上立たされて叱責を受けた。支店長が激高し、ゴミ箱を蹴り上げたり、空のカフェ飲料のカップを投げつけられたことがある。

(17)徹底的に目標数字ができない理由を追及された。死んでも頑張りますに対し、それなら死んでみろと叱責された。

(18)審査部融資管理のとき、部長にお前らは営業で仕えないからこの部署に来た、会社として数字を作るためには債権回収することは営業と同じ、ここでできなければお前たちは会社を辞めるしかない。俺が拾ってやったんだから死ぬ気でやれ。時間がなければ土日も働けと日常的にいわれていた。

(19)毎週の報告で「そんな数字では受けれない」という叱責。お前のところは(新店舗で)既存顧客がいないんだから(有担保)ローンとセットで無担保を取って来い。センター長会議では成績の悪い店舗は叱責の嵐でした。数字がないなら今すぐ営業して来いと退席させられた方もいらっしゃいました。

(20) 無担保融資については、実行額が少ないなら金額増やせ(顧客本位ではない)、実行件数が少ないなら行動量を倍にしろ、など今日のTM件数は何件だ、と毎日叱責。役席であっても行動管理票をもとに毎日詰められた。精神的に毎日詰められていた。保険担当者は支店長から「有担保セットであってお前の努力でじゃないんだから勘違いするな、給料泥棒だ」と言われていた。支店長は営業社員を軽視しており「営業は誰でも出来る仕事で営業社員はそれしか出来ないんだから、数字だけやってりゃいいんだよ」となどと発言していた。

(21)融資実績が上がらない人は口なし(意見をしてはいけない)雰囲気。目標に対して達成率が低いとどうするんだと椅子を蹴られ、机を叩かれ、恫喝されながら育った。当時は数字があがらないならば休日はなしという雰囲気。数字があがらないならば、時間外請求するな。融資実績があがらないならば、会社に給与返せ。いつまで会社から定額自動送金してもらっているんだというモラルの欠片もない会社だった。

(22)フリーローンの営業目標未達成時に、未達であるなら現在交渉中の顧客に余分に借りてもらうよう依頼し、実行後すぐに繰上返済するよう言えと言われた。

(23)毎日ローンのノンストップ運動をやっており、途切れたり、数字ができなかった場合に、ものを投げつけられ、パソコンにパンチされ、お前の家族皆殺しにしてやるといわれた。上司を目の前で土下座させて謝罪させた。いすの背面をキックされた。

(24)月末に勘定が閉まったあとに、今月あといくら融資実行するのか確認の電話が毎月営業推進部長からかかってきていた。当月の数字が伸び悩むときは営業推進部署に呼び出しがあり、担当の執行役員に対して「処遇はお任せします」と言わされていた。

(25)お客様と十分に合意形成がなされていない段階でも、SSP なる会議への出席、案件上程を要求され、会議中にはターゲットになる者を特定され、多人数の前で罵声を浴びせる。結果その被害者が精神的に追い詰められて休職や退職に至ったら、それを反省するどころか、営業推進を一生懸命に行った結果だと肯定し、その数や追い詰め方を自慢し競い、賞賛されるような状況にあった。まさしく恫喝、強要でパワハラ以外の何でもないことが各地で行われていることを知っていながら、誰も止められなかった、本気で止めようとしなかった。

 

→以上かなり厳しいのがわかります。

 

(以下は改ざん等の事例です。参考として掲載します。)

営業上の成績(融資実行残高目標)の達成のために、会社の社内規程や業務手続等の社内ルールに違反した融資を実行したことがありますか?

前問で「いいえ」以外の回答をされた場合、具体的にどのような規程、ルール違反をしたか、説明してください。 前問等で「いいえ」以外の回答をされた場合、それは、どのローン商品に関してのことですか?(複 数回答可)

※ 特徴的な回答を抜粋

(1)審査部にもう少し様子を見るようにと判断されたローン案件をほかの支店が、審査部が止めたにもかかわらず役員の一言で実行した。(フリースタイルローン)

(2)お客さまにお願いして、必要のないローンを短期で借りていただいたことがあります。(PSL、RPP)
(3)リフォーム案件でリフォーム完了後の実行が、融資条件となっていたのだが、完了予定が当初より延期となった。その月に数字のためどうしても実行したかったため、リフォーム完了前に融資実行 を行った。(住宅ローン)

(4)原本確認など(収益不動産向けローン)

(5)自己資金(中古 1 棟)

(6)書類の代筆等(資産形成ローン)

(7)登記簿謄本の改ざん、物件のレントロールの改ざんなど(資産形成ローン)

(8)自己資金通帳等の元本確認不足(アパートローン)

(9)お願いで借り入れしてもらっているお客様へ利息分の商品券を渡している支店長がいると聞いたことがある。(フリーローン)

(10)数字を落とせないとの認識から、当時の上司の指示で承認条件履行の書類を作った。(フリースタイルローン)

(11)資金使途がないお客様に架空のペットという資金使途でローンを実行したことがある。(無担保フ リーローン)

(12)実行後、相続税即日納付を、一旦定期預金で留保し、後日の納付とした。

(13)今回の自己資金、レントロール等の書類の二重扱い等(シェアハウスに関する有担保ローン、およびそれに付随した無担保ローン)

(14)ローンに限らず、この会社の一番上の層の人間は、聞いていない!知らないことにしろ!下の人間がやるんだよ!の社風、当たり前になっていますね。

(15)自己資金エビデンスが改竄されているであろうことを認識しているが融資実行。レントロールの内容が実際と変更されているであろうことを認識しているが融資実行。(資産形成ローン)

(16)取扱い禁止業者の登録がある業者からの案件相談を相談チャネルの名前を変えて申請しているのを見聞きした。(資産形成ローン)

(17)書類改竄の見逃し。(資産形成ローン)

(18)融資条件と顧客に捉えられる様な形で、定期預金等の交渉を行った。(アパートローン)

(19)入社した当時、先輩社員が通帳の切り貼りをしていたという噂を聞きました。他人の印鑑を多数持っていた先輩もいました。

(20)「ちょい貸し」・・・決算日実行。翌日回収。実需がないにもかかわらず、知り合いや取引先に頼んで、決算日一日のみ融資をする。 「数字をふくらませる」・・・貸付金額を当初のお客様の融資希望額以上にふくらませる。お客様 にいかに膨らませた金額で申込みをさせるか、MTG等でテクニック伝授があった。「自爆」・・・ノルマ達成のために、自分もしくは配偶者等の家族名義でローン実行。

(21)稟議上で架空の人物を登場させる。(無担保ローン)

(22)有担保ローンのレートダウンの条件としてフリーローンを融資している人がいた。(リザーブドプランプラス、フリースタイルローン、パーソナルスタイルローン)

(23)社員の家族や友人の名前で借入をし社員が返済・金利を負担している。(フリーローン)

(24)審査部承認前の融資契約。(資産形成ローン)

 

以上がスルガ銀行の第三者委員会報告書の内容でした。

 

所見

パワハラ事象は、受ける側の認識が重要な要素となります。

確かに、パワハラ等の被害にあった従業員は辛い思いを過ごしてきた方もいらっしゃるでしょう。退社した方もいるのではないでしょうか。

今回のスルガ銀行の報告書は、ある意味で銀行の公式文書です。この文書に、ここまで赤裸々に記載がなされているのは驚きと言えます。

しかし、この事例はスルガ銀行の特殊事例でしょうか。一般の企業でも同じことはあるのではないでしょうか。

今回のスルガ銀行の事例は恐らくパワハラの典型的な事例です(筆者の世代はこれはパワハラではなかったのですが)。この典型的な事例を共有することが、次のパワハラを生まなくなるのかもしれません。