大塚家具が2018年12月期1Q(2018年1~3月)の決算を発表しました。
非常に注目すべき内容となっていますので、今回は大塚家具の1Q決算について考察します。
決算概要
大塚家具の決算概要については以下の記事がまとまっていますので引用します。
大塚家具 9四半期ぶりに黒字転換、無借金も継続
2018/05/11 東京商工リサーチ
(株)大塚家具(TSR企業コード:291542085、江東区、大塚久美子社長)は、2018年12月期第1四半期が9四半期ぶりに黒字転換したと発表した。
5月11日に発表した2018年12月期第1四半期の決算報告は、売上高91億2133万円(前年同期比10.7%減)、営業利益が赤字の14億1958万円(同2億8007万円改善)、当期純利益が1億96万円(同9億1991万円改善)だった。無借金経営は継続している。
銀行出身で財務部長などを務めた取締役常務執行役員の杉谷仁司氏が4月30日に退任し、5月27日には創業地の春日部ショールーム(埼玉県)を閉店する。
最近はネガティブな情報が多いが、5月1日にEC事業拡大を目指しAmazon(アマゾン)でのネット販売に乗りだした。これまでの店舗販売からオムニチャネル化(実店舗とバーチャル店舗の販売を連携させた購買スタイル)への強化策だ。第1四半期の黒字転換を機に、大塚社長が宣言した上半期の当期利益の黒字、下半期の営業利益の黒字を達成できるのか注目される。2018年12月期第1四半期(1-3月)の当期純利益は1億96万円で、前年同期の8億1895万円の赤字から9億1991万円改善した。
黒字は、不動産流動化に係る固定資産売却益11億7666万円の特別利益が寄与した。
だが、営業利益は14億1958万円の赤字(前年同期16億9966万円の赤字)、経常利益は13億7212万円の赤字(同16億2423万円の赤字)と改善しても、本業ベースの赤字は続いている。
売上高は91億2133万円で前年同四半期比10.7%減だった。店舗売上高は2018年1-3月すべて前年同月比マイナスと振るわず、ホテルなど法人向け「コントラクト」の増加ではまかないきれなかった。
全商品の担保提供で確保した50億円の借入枠は使わず、無借金経営を継続している。だが、第1四半期の現預金は10億2634万円、前年同期より14億8414万円減少した。
特別利益という一過性の利益で黒字となったが、収益改善の兆しはみえてきた。今後は店舗の売上不振や、129億4331万円に達する商品在庫をどう削減するかがカギになっている。
大塚社長の次の一手が注目される。
以上が大塚家具の2018年12月期1Q決算概要です。
売上は減少止まらず、営業利益は減収の中、コスト削減に努め若干の赤字幅縮小、最終損益は不動産売却に伴い黒字転換、50億円の借入枠は未利用(無借金継続)といったところです。
では、以下で大塚家具の1Qについて、より詳細に見ていくことにしましょう。
大塚家具の最大の問題点は資金繰り
上記で引用した記事では大塚家具の収益改善の兆しはみえてきたとしています。
確かに、EC事業拡大を目指しAmazon(アマゾン)でのネット販売に乗りだし、これまでの店舗販売からオムニチャネル化(実店舗とバーチャル店舗の販売を連携させた購買スタイル)への強化策を行ったり、不採算店舗を閉鎖したり等、大塚家具が様々な経営改善策を打ち出していることは間違いありません。
しかし、大塚家具に時間はあまり残されていないと筆者は考えています。
企業存続に最も必要なもの、それはキャッシュです。
キャッシュが無くなってしまえば、どんなにすばらしい経営施策を持っていたとしても、どんなにすばらしい商品を持っていたとしても、企業は破綻することになります。
では、大塚家具の資金繰りはどのようになっているのでしょうか。
以下では大塚家具の現預金および換価性の高い投資有価証券の合計推移について確認しましょう。
(単位百万円) 現預金 投資有価証券 合計
2014/12/31 11,520 7,153 18,673
2015/12/31 10,972 7,233 18,205
2016/12/31 3,854 5,514 9,368
2017/03/31 2,510 3,981 6,491
2017/06/30 2,179 3,003 6,182
2017/09/30 2,036 2,683 4,719
2017/12/31 1,807 2,753 4,560
2018/03/31 1,026 2,152 3,178
以上の通り、大塚家具の現預金(投資有価証券含む)等は減少しています。
2017年9月~12月の間は、現預金等の減少ペースが遅くなったようにみえますが、これはTKPからの資本提携(増資)10億円が含まれていての数値ですので、実質的には、2017年9月~12月に10億円以上の現預金等が減少しています。
ここでさらに留意すべきは、2018年3月末分は、不動産の売却(正確には証券化)していることです。
すなわち、有形固定資産では約16億円の減少となり(ただし、これには店舗閉鎖の影響も含まれると想定)、固定資産売却益約11億円が計上されています。
少なくとも12億円程度の現預金は増えていておかしくはないのです。
(※売却した不動産の簿価が1円だったとしたら11億円の売却益があるということは11億円で不動産が売れた=最低でも11億円の現預金が入ってくる、ということになります)
よって、2017年12月末~2018年3月末にかけては、表面的には約14億円の現預金等減少ですが、実質的には最低でも25億円の減少となります。
筆者がみる限り、新たな施策を打つことは重要なのですが、業績反転の兆しがみえてくるだけでは全く問題の解決にならないのです。
資金繰りが反転しなければ本質的には解決になりません。
この段階に至れば、利益項目(営業利益、経常利益、当期利益)を分析してもあまり意味はありません。
キャッシュが全てです。
今後の想定
上記でみてきたように、大塚家具の資金繰りは悪化の一途をたどっています。
大塚家具には50億円のコミットメントライン枠(大塚家具が申し込めば銀行が「貸さなければいけない」契約)があるため、まだしばらくは企業を維持できるでしょう。
大塚家具にとって必要なのは、2018年3月末で129億円存在する商品在庫を売ることです。当たり前なのですが、企業存続のためには、この選択肢以外には存在しません。
それは、店舗でお客様に販売しても良いですし、ネットで販売しても良いのです。
とにかく、そのためだけに大塚家具は企業の総力を挙げなければなりません。
しかし、大塚家具の今の現預金等の減少スピードでは半年程度で資金繰りに行き詰まります。
残された時間は少ないのです。
筆者の想定を超えて、大塚家具は資本提携等を未だに発表していません。
通常は、このぐらいまで資金繰りで追い込まれると、他社の傘下に入ったり、業務資本提携を行い、企業を存続させます。
大塚家具が資本提携等を模索していない訳はありません。
しかし、発表できていないということは、大塚家具に買収もしくは提携する魅力がなくなってきているのかもしれません。
いずれにしろ、大塚家具の動向からは目が離せません。
(大塚家具 2017年12月決算を分析した記事は以下)