(出典 画像はG20 argentinaの公式ホームページより引用)
アルゼンチンでG20が開催されていました。
この会議では仮想通貨の規制についても議論されるとされていました。
事前に公開されたFSB(金融安定理事会)議長の書簡では、仮想通貨について、金融の安定性にとって影響が小さいとされていたこともあり、新たな規制が導入されるには至らないとの見方が直前では多くなっていました。
www.financepensionrealestate.work
今回の記事では、このG20で、仮想通貨についてどのような議論がなされたのかについて確認することにします。
報道内容
G20でどのような議論が行われたのかについては、新聞報道等がまとめています。
まずは、日経新聞の記事を引用します。
仮想通貨規制にカジを切ったG20
2018/03/21 日経新聞ニュースアルゼンチンの首都ブエノスアイレスで20日閉幕した20カ国・地域(G20)の財務相・中央銀行総裁会議は、国際社会が仮想通貨の規制強化に大きくカジを切る転換点となった可能性がある。これまで仮想通貨の価格を大きく上昇してきた背景には、仮想通貨の裏付けにある革新的なブロックチェーン技術への期待も含まれていたようだ。だが仮想通貨とその技術の将来性を分けて考えよう、というのが今回のメッセージといえる。
「想像以上の熱気だった」。ある金融当局幹部は20日夕、午前のセッションを興奮気味に振り返った。財務相が出席する会合としては異例の15分延長。参加者からは、投機による急激な価格動向や脱税、マネーロンダリングなど仮想通貨の負の側面を指摘する発言が相次いだという。これらはそのまま同日午後に公表された共同声明に列挙された。
共同声明は仮想通貨のことを「暗号資産」と表現。法定通貨のような決済手段とは切り分けて考える姿勢が鮮明だ。そのうえで金融監督者が集まる金融活動作業部会(FATF)の基準の見直しに「期待」する、と記載した。財務相同行筋によれば、見直しとは現在は単なるガイダンスとなっている交換業者の登録制や利用者の本人確認の導入を強制力のある審査基準に格上げすることを意味している。FATFは7月に報告書をまとめる。G20の会合にはFATFのメンバーもオブザーバーとして出席しており、今回の議論を反映する公算は大きい。共同声明はFTAFに対し加盟国以外にも同様の対応を働きかけることを要請した。
これまでは仮想通貨に厳しい規制をかけるとブロックチェーン技術がもたらす技術革新の芽を摘んでしまうのではという慎重論も根強かった。だが今回の共同声明は、仮想通貨とその裏付けになる新たな技術と明確に分けている。「暗号資産の基礎となる技術」が経済を改善する可能性に触れつつ、「しかしながら、仮想通貨は…」と分けて負の側面を列挙している。
ある金融当局者は「仮想通貨市場が拡大すればブロックチェーン技術の可能性が広がる訳ではない」と話す。逆もまた真と考えるなら、世界の金融当局は規制強化による仮想通貨の市場縮小にも目をつむるかもしれない。そんな考えが浮かぶほど、仮想通貨がもたらす副作用への警戒心が強くにじんだG20だった。
G20での公式表明
上記ではG20における仮想通貨の議論についての報道をみてきました。
この項目ではG20の共同声明を確認したいと思います。
まずは、原文を掲載し、その後、和訳を参考としてつけています。
20 March 2018
We acknowledge that technological innovation, including that underlying crypto-assets, has the potential to improve the efficiency and inclusiveness of the financial system and the economy more broadly. Crypto-assets do, however, raise issues with respect to consumer and investor protection, market integrity, tax evasion, money laundering and terrorist financing. Crypto-assets lack the key attributes of sovereign currencies. At some point they could have financial stability implications. We commit to implement the FATF standards as they apply to crypto-assets, look forward to the FATF review of those standards, and call on the FATF to advance global implementation. We call on international standard-setting bodies (SSBs) to continue their monitoring of crypto-assets and their risks, according to their mandates, and assess multilateral responses as needed.
出典 G20(argentina)ホームページ
https://back-g20.argentina.gob.ar/sites/default/files/media/communique_g20.pdf
(以下、Google翻訳による和訳)
我々は、基礎となる暗号資産を含む技術革新が、金融システムと経済の効率性と包括性をより広範に改善する可能性を秘めていることを認識している。 しかし、暗号資産は、消費者および投資家の保護、市場の完全性、脱税、マネー・ロンダリングおよびテロ資金調達に関して問題を提起する。 暗号資産にはソブリン通貨の主要な属性が欠けている。 ある時点では、金融安定性に影響を及ぼす可能性があります。 我々は、暗号資産に適用されるFATF標準を実現することを約束し、その標準のFATFレビューを楽しみにし、FATFにグローバル履行を進めるよう呼びかけている。 私たちは、国際基準設定機関(SSBs)に、その命令に従って、暗号資産とそのリスクの監視を継続し、必要に応じて多国間対応を評価するよう求めます。
(※筆者註:FTAFはマネーロンダリングに関する金融作業部会であり、国際協調を推進するために設立された政府間機関)
Communiqué Annex Issues for further action
(以下抜粋)
We ask the FSB, in consultation with other SSBs, including CPMI and IOSCO, and FATF to report in July 2018 on their work on crypto-assets.
https://back-g20.argentina.gob.ar/sites/default/files/media/annex_g20.pdf
(以下Google翻訳による和訳)
私たちは、CPMI、IOSCO、FATFなどの他のSSBsと協議して、2018年7月に暗号資産に関する作業を報告するようFSBに要請します。
以上がG20で発表されている公式コメント(共同声明)です。
まとめ
以上、仮想通貨についてのG20での議論内容をみてきました。
日経新聞に記載があった通り、仮想通貨(crypto-currency)ではなく仮想資産(crypto-assets)と表現していることが目を引きます。今後、各国は仮想通貨を、「通貨」ではなく「資産」として扱うようになる可能性があります。
この影響はどのあたりに出てくるのでしょうか。
例えば、ビットコインを海外に送金するという行為も、送金ではなく、海外への資産譲渡(もしくは交換)という法的構成になることが考えられます。
また、通貨ではなく資産とされることで、全世界的にみて課税対象となることが十分にあり得ます。キャピタルゲイン課税はもちろんのこと、株式のような源泉分離課税ではなく事業所得等での総合課税となる可能性もあります。消費税の対象とされる可能性もゼロではないでしょう。
また、議事録は公表されていないので各国がどのような議論を交わしたかは筆者には分かりませんが、消費者・投資家の保護に加え、脱税・マネーロンダリング・テロ資金供与等の問題について話し合われたことは間違いありません。
すなわち、上記のような問題点をクリアできるような規制導入の検討がこれからなされるということなのです。
本人確認やセキュリティ強化、場合によっては資産保管(信託保全等)等が議論の俎上に乗るのです。
そして、その報告は2018年7月になされるということなのです。
今回、仮想通貨に対して規制が導入されなかったことをもって、仮想通貨の買い材料だとしている記事等もあるかとは思いますが、規制は導入が見送られた訳ではないということを、認識すべきでしょう。