銀行員のための教科書

これからの時代に必要な金融知識と考え方を。

コロナウィルスは簡単に休業出来ないはずの銀行の店舗も休業に追い込む

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コロナウイルスが大きな影響を及ぼしています。

預金者の経済活動を支えるために簡単に休業が出来ない銀行ですら、金融庁が銀行店舗の臨時休業を認めたと報道されています。

しかし、銀行の店舗はなぜ簡単に休業が出来ないのでしょうか。民間企業なのですから、銀行自身の判断で休業を選択出来るのではないでしょうか。

今回は、銀行店舗の休業について簡単に確認してみましょう。

 

報道内容

まずは概要を確認するために、銀行の店舗休業についてNHKの記事を引用します。

新型ウイルス 銀行など店舗の臨時休業認める 金融庁
2020年3月2日 NHK WEB NEWS

新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、金融庁は、銀行など金融機関の店舗で働く従業員が感染し預金者などに影響が及ぶおそれがある場合には、店舗の臨時休業を認めることにしました。
銀行や信用金庫、信用組合の店舗は決済の機能をになう重要な公共インフラだとして、法律で平日は原則休業できませんが、災害などやむを得ない場合には金融庁に届け出をすれば臨時に休業することができます。

金融庁は、店舗で働く従業員が新型コロナウイルスに感染して預金者などに影響が及ぶおそれがある場合についても、臨時の休業を認めることにしました。

(以下略)

(出所 https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200302/k10012309691000.html?utm_int=nsearch_contents_search-items_004

この記事にあるように銀行の店舗は民間企業でありながら、勝手に休むことは出来ません。「お上」へのお伺いを立てなければならないのです。 

では、銀行の休業はどのような規制がなされているのでしょうか。

 

銀行店舗の休業規制

2019年8月に銀行や信用金庫といった金融機関が平日に休業できるよう改正した銀行法施行令が施行されました。

この改正理由は、地方銀行や信用金庫、信用組合等が少子高齢化で地域の店舗網の維持が難しくなっていることに対応したものです。改正により銀行店舗の隔日での営業も可能になり、少人数で店舗を運営できるようになりました。もちろん人件費などのコスト削減も期待されています。

2019年の銀行法施行令改正までは、銀行等の店舗の休業日は、個人や企業の経済活動に影響を与えないように原則として土曜や日曜、祝日、年末・年始に基本的に限定すると定められていました。

では、実際の法律等はどのような内容となっているのでしょうか。以下で法律の条文を確認してみましょう。

 

【銀行法】

(休日及び営業時間)
第十五条 銀行の休日は、日曜日その他政令で定める日に限る。
2 銀行の営業時間は、金融取引の状況等を勘案して内閣府令で定める。

(臨時休業等)
第十六条 銀行は、内閣府令で定める場合を除き、天災その他のやむを得ない理由によりその営業所において臨時にその業務の全部又は一部を休止するときは、直ちにその旨を、理由を付して内閣総理大臣に届け出るとともに、公告し、かつ、内閣府令で定めるところにより、当該営業所の店頭に掲示しなければならない。銀行が臨時にその業務の全部又は一部を休止した営業所においてその業務の全部又は一部を再開するときも、同様とする。

 

【銀行法施行令】

(休日)
第五条 法第十五条第一項に規定する政令で定める日は、次に掲げる日とする。
一 国民の祝日に関する法律(昭和二十三年法律第百七十八号)に規定する休日
二 十二月三十一日から翌年の一月三日までの日(前号に掲げる日を除く。)
三 土曜日
2 前項各号に掲げる日のほか、次に掲げる日は、銀行の営業所の休日とすることができる。
一 銀行の営業所の所在地における一般の休日に当たる日で当該営業所の休日として金融庁長官が告示した日
二 銀行の営業所の設置場所の特殊事情その他の事情により、当該営業所の休日としても業務の健全かつ適切な運営を妨げるおそれがないものとして当該営業所につき金融庁長官が承認した日
3 銀行は、前項第二号に掲げる日をその営業所の休日とするときは、その旨を当該営業所の店頭に掲示しなければならない。

 

【銀行法施行規則】

(休日の承認の申請等)
第十五条 銀行は、令第五条第二項第二号の規定による休日の承認を受けようとするときは、承認申請書に次に掲げる書面を添付して金融庁長官等に提出するものとする。
一 理由書
二 令第五条第三項の規定による掲示の方法を記載した書面
2 金融庁長官等は、前項の規定による承認の申請があつたときは、次に掲げる基準に適合するかどうかを審査するものとする。
一 金融機関相互間の内国為替取引を通信回線を用いて処理する制度の運営に支障を及ぼすおそれがないこと。
二 当該申請に係る営業所の顧客の利便を著しく損なわないこと。

(臨時休業の届出等)
第十七条 銀行は、法第十六条第一項の規定によるその業務の全部又は一部の休止又は再開の届出をしようとするときは、届出書に次に掲げる書面を添付して金融庁長官等に提出しなければならない。
一 理由書
二 法第十六条第一項の規定による掲示の方法を記載した書面
三 その他金融庁長官が必要と認める事項を記載した書面
2 法第十六条第一項に規定する内閣府令で定める場合は、次に掲げる場合とする。
一 法第二十六条第一項、第二十七条又は第五十二条の三十四第一項若しくは第四項の規定により銀行の業務の全部又は一部の停止を命ぜられた場合
二 法第十五条第一項に規定する銀行の休日に、業務の全部又は一部を営む銀行の営業所において、当該休日における現金自動支払機その他の金融庁長官が別に定める機械(以下「現金自動支払機等」という。)による業務の全部又は一部を休止する場合
三 銀行の無人の営業所においてその業務の全部又は一部を休止する場合(前号に該当する場合を除く。)
四 台風、地震その他の異常な気象、海象又は地象により営業所においてその業務を営むことが当該営業所の役員、職員又は利用者の生命又は身体に重大な危険を生じさせるおそれがあることにより当該営業所の業務の全部又は一部を休止する場合
五 外国に所在する銀行又はその委託を受けて当該銀行の業務を営む者の当該業務を営む営業所においてその業務の全部又は一部を休止する場合
六 当該銀行を所属銀行とする銀行代理業者(法第五十二条の六十一第二項の規定により銀行代理業者とみなされた銀行等(同条第一項に規定する銀行等をいう。)を含む。次項において同じ。)において当該銀行のために営む銀行代理業の業務の全部又は一部の休止に伴い銀行の業務の全部又は一部を休止する場合

 

この施行令では、銀行の休日は土日・祝日、12月31日~1月3日となっていることが分かります。この法令のため、銀行は土日、祝日、年末年始に休んでいることが多いのです。

もちろん土日、祝日、年末年始や深夜早朝でも、銀行自身が店舗を営業すると決めれば、営業することは可能です。銀行を規制する法令は、最低限で営業していなければならない日を決めているに過ぎません。

今回のコロナウィルスへの対応としての銀行の店舗休業は、上記の法令に基づき金融庁が対応しています。

金融庁は、銀行が店舗を休業出来なかったために、銀行員のみならず預金者にコロナウィルスの感染が拡大する(可能性がある)ことを容認することはないということです。金融庁は銀行に休業を認めていたとすれば、監督官庁としての責任は免れるでしょう。

これが銀行の店舗における休日・休業に関する基礎的な理解です。