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みずほFGの中間決算にみる苦境と裏の目的

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(画像はみずほFGのホームページより)

みずほFGが2018年3月期の中間決算を発表しました。

この中間発表においてグループの構造改革も発表しています。

報道では長引く低金利の影響により収益力が低下したことが要因とされています。

(報道例)
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20171113/k10011222061000.html
リンク先 NHKホームページ

これは一面では正しいのですが、大きな要因はそれだけではありません。

今回はみずほFGの決算内容および構造改革について考察していくものとしましょう。

みずほFG中間決算のポイント

報道ではみずほFGの構造改革(人員・店舗削減)について触れられていることが多いのですが、決算内容について、まずはしっかりと確認しておく必要があります。

構造改革を行う必要性は決算内容によるところがあるということです。

<決算内容のポイント>

みずほFGに限らず銀行の決算は、マイナス金利政策等の影響で貸出収益が落ちこみ収益が厳しいというイメージをお持ちの方は多いかもしれません。

しかし、みずほFGは、前年同期比では粗利益(通常の企業の売上高に相当)の落ち込み約1,300億円のうち、資金利益(貸出の金利含む)の落ち込みは約290億円しかありません。

ではどのような収益が落ち込んでいるのかというと最大の落ち込みは約815億円のマイナスとなった特定取引等利益なのです。
特定取引は有価証券等の売買等によって発生するものです。

(参考 特定取引の定義)
銀行が、特定取引勘定で行う有価証券等の市場取引やデリバティブ取引等から生じた収益と費用の差額です。特定取引勘定とは、銀行が、金利、通貨、有価証券等の相場の変動などを利用して市場取引により利益を得ることを目的とした取引(トレーディング目的の取引)を、貸出や預金のようなトレーディング目的以外の取引と区分して経理するための勘定項目です。
出典 あおぞら銀行ホームページ
http://www.aozorabank.co.jp/ir/library/highlight/yougo.html

すなわち、みずほ銀行の収益落ち込みの最大の要因は有価証券の売買等によるものなのであり、貸出金利の低迷だけでは説明ができないのです。
このようなこともあり、傘下銀行の本業の収益である実質業務純益(一般企業の営業利益に相当)は、▲41%減少しています。

これを経常利益、最終利益で埋め合わせたのが貸倒引当金(債務者の破綻に備えた引当金)の戻り入れです。
想定よりも企業の決算が良くなったりしたために「まさかの時の備え」が戻ってきたということになります。この戻り入れだけで1,145億円の利益が発生しています。

では、特定取引収益の落ち込みはどのような要因なのでしょうか。

みずほFGの決算をみると、国債等債券損益が前年同期比で▲669億円となっています。
傘下銀行の前年同期(2016年9月)の資料をみると国際業務の特定取引利益のうちデリバティブのトレード利益が798億円となっています。2017年9月では国際業務の特定取引利益が125億円(前期比▲668億円)と大幅に減少しているのです。
現時点で発表されている資料だけでは詳細は分かりませんが、外国債券のトレードやデリバティブのトレードが不調に終わっているといえます。

そして、みずほFGの中間期末の有価証券評価差額のうち、(国内)債券は2017年3月末より約300億円減額となり▲93億円(含み損)となっています。また、有価証券評価差額のうち、外国債券は約80億円改善してはいますが▲1,367億円(含み損)となっています。
この国内外の債券を売却等して決算を作るのはかなり厳しくなっているものと想定されます。

すなわち、みずほFGは債券の売買等により決算を作れなくなってきているともいえます。

この要因は、確かに低金利の影響が大きいのです。特に国内では金利が下がるところまで下がってしまいました。債券は金利が低下すると価格が上昇します。金利低下が続いている環境下では、債券に投資していれば、債券価格が上昇していきますので、決算を作りたい(利益を計上したい)時に売却等により利益を計上することができるのです。

しかし、みずほFGの決算をみる限りは、この含み益をほとんど出し尽くしている可能性はあります。

みずほFGの決算評価

みずほFGの実質業務純益(一般の会社の営業利益)は前期比▲41%と大幅減益となりました。

これは報道されているように低金利の影響があることは間違いありません。

しかし、上述のように特定取引等利益が減少していることは無視できない事実なのです。
筆者の考えでは、みずほFGとしては債券の含み益がなくなってきており利益を出しづらくなっていると想定しています。しかし、今回の中間決算はそのような単純なものばかりではありません。

まず、貸倒引当金の戻り入れが多額に発生することが想定されており、株主にとって重要な最終利益はある程度の数字が確保できる見通しが立っていたであろうことは重要な前提となります。

その上で、筆者はみずほFGの経営陣が2017年9月では「あえて実質業務純益を大幅減益で着地させた」と想定しています。
この理由は簡単です。

本業の収益が悪いのであれば従業員に対してリストラを求めやすくなるからです。2018年は労働契約法の改正により、一定の条件を充たせば有期雇用の臨時従業員が無期雇用への転換を企業に求めることができるようになります。

みずほFGは約1.9万人の従業員を削減すると今回発表しました。

みずほFGには連結ベースで約2万人の嘱託・臨時従業員が在籍しています。

この非正規雇用をある程度削減することも、業績が悪いとなればやりやすいでしょう。

以上の背景、理由があったために、みずほFGは今回の決算となったものと筆者は想定しているのです。

物事には裏表があるということではないでしょうか。

 

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