2022年10月20日の外国為替市場でドル円相場は32年ぶりに1ドル=150円台の円安水準に下落しました。
10月21日の海外為替市場では円相場が1ドル=152円台近くまで下げたところで、政府・日銀は円買い・ドル売りの為替介入を再び実施し、直後に円は1ドル=144円台半ばまで7円ほど急騰しました。その後は徐々に円安が進み、ニューヨーク市場の円相場は、1ドル=147円台後半で取引を終えています。
この歴史的な円安に際して、保有している外貨を円に換える動きが出てきているようです。銀行の両替所が混雑しているとの報道もなされています(一時1ドル=150円突破で混雑したのは…銀行の両替所 ドルを円に両替する人増加中 札幌市)。
為替がここまで変動すると、外貨を日本円に変えたい、もしくは日本円を保有し続けることが心配になったので外貨を保有したいと考える方が増えるでしょう。
特にドル独歩高、米国金利の上昇環境においては、外貨預金、その中でも米ドル預金について興味を持つ方は増えるものと思います。
今回は、日本円と外貨との両替と米ドル預金金利について少し確認していきたいと思います。
両替手数料
日本円以外の通貨を持ちたい、外貨で運用したいと考える方にとって最初のチェックポイントは、両替の手数料です。
日本円を米ドルに交換するだけで、金融機関に手数料を取られるのです。
海外旅行に行く時に空港で銀行や両替所で外貨に両替することをイメージすると分かりやすいでしょう。あの両替ではきっちりと手数料が取られています。
今回は、日本の銀行の両替手数料を確認しましょう。以下はいずれも日本円⇔米ドルの為替手数料です。
- auじぶん銀行 預入0銭、払戻25銭
- 住信SBIネット銀行 預入・払戻6銭
- GMOあおぞらネット銀行 預入・払戻4銭
- PayPay銀行 預入・払戻5銭
- ソニー銀行 預入・払戻15銭(基準、最上級ステージなら4銭まで優遇)
- 楽天銀行 預入・払戻25銭
- 三菱UFJ銀行 預入・払戻25銭(ネットバンキングの場合、店頭は100銭)
- 三井住友銀行 預入・払戻50銭(ネットバンキングの場合、店頭は100銭)
- みずほ銀行 預入・払戻40銭(ネットバンキングの場合、店頭は100銭)
上記は筆者が調べたものであり、正確さを担保する訳ではありません(キャンペーンも反映しておりません)。しかし、傾向は明確です。
すなわち、ネット銀行とリアル店舗のメガバンクとでは、手数料に圧倒的な差があります。そもそもメガバンクの店頭に行けば外貨両替をするだけで100銭=1%の手数料を取られます。
この手数料は「銭」の表記がされているので大きな影響がないように思えるかもしれませんが、かなりの差が出ます。
例えば、GMOあおぞら銀行と三井住友銀行(ネットバンキング)の双方で100万円の日本円を米ドルに換えたとしましょう。
この場合は以下のようになります。尚、ドル円は145円と仮定します。
【日本円を米ドルに交換する場合】
- GMOあおぞらネット銀行の場合:100万円×(100%-0.04%)÷145=6,893ドル
- 三井住友銀行の場合:100万円×(100%-0.50%)÷145=6,862ドル
この段階で31ドル=4,495円の差が出ています。これは100万円に対しては、約0.45%の差です。1年を米ドル預金で運用しようとした場合、預入の銀行によって既に0.45%の運用差が出ることに等しいとも言えます。日本の金利状況を考えれば、無視できないと思うレベルの差でしょう。
そして、外貨運用のポイントは、いつかは日本円に戻すことが一般的です。すなわち、米ドルを日本円に戻すときにも上記の事例だと0.45%の差がつくのです。
往復0.90%ということは、100万円に対して約9,000円です。為替手数料が無視できないことが更に明確になるのではないでしょうか。
外貨預金レート
次に外貨預金のレートの比較も行ってみましょう。
以下は1年の米ドル預金レートの比較です。
- auじぶん銀行 3.25%(円預金からの預け入れの場合)
- 住信SBIネット銀行 3.15%
- GMOあおぞらネット銀行 2.11%(普通預金のレート、外貨定期預金のレート確認できず)
- PayPay銀行 3.00%
- ソニー銀行 3.2%(但し、円預金から預入の場合6カ月6.0%の外貨定期あり)
- 楽天銀行 1.21%(円預金からの預け入れの場合)
- 三菱UFJ銀行 0.01%(ネットバンキング優遇で0.6%のキャンペーンあり)
- 三井住友銀行 0.01%(1カ月4.5%の優遇キャンペーンあり)
- みずほ銀行 0.01%(300万円以上で円預金からの預け入れの場合、6カ月2.5%のキャンペーンあり)
これを見ると更に明確になると思いますが、メガバンクに外貨預金を預け入れることは「安心感」はありますが、資産運用という観点では意味がありません。
仮に住信SBIと三菱UFJ銀行で1年間外貨定期預金での運用を行ったとしましょう。その結果は以下のようになります(税金考慮後、1円未満切り捨てで試算)。預入額は100万円相当とします(分かりやすく日本円ベースで以下表記しています)。
- 住信SBIネット銀行:100万円×3.15%×(100%-20.315%)=25,100円
- 三菱UFJ銀行の場合:100万円×0.01%×(100%-20.315%)=79円
以上のようにこの場合は1年間で25,000円の差が出ます。完全に無視できないレベルの違いです。
まとめ
今回は、いわゆるネット銀行とメガバンクの外貨両替手数料および外貨預金金利を簡単に比較しました。
証券会社も同様ですが、「お金持ち」でなければリアルの店舗を持つ銀行と取引をする意味はほとんどありません。メガバンクには潰れないという安心感はあるでしょう。しかし、個人レベルで運用を行うならば、断然ネットバンクが有効です。
円安が進み日本人の資産は他国から見ると一気に目減りしました。外貨に興味が出たとしても、この資産運用では少しでも自身に有利な取引を行うことを目指したいものです。