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BTS所属事務所である「HYBE」の株価暴落要因とは

韓国を代表するアーティストであるBTS(防弾少年団)がグループ活動の一部休止を発表しました。

投稿された動画では、BTSのメンバーが「いつからか機械のようになった」と打ち明け、「今は方向性を見失っている。しばらく立ち止まって休息する」と発言したと報道されています。

映像公開後、BTSの所属事務所である上場企業のHYBE(ハイブ)は「BTSはチーム活動とソロ活動を並行する新しいチャプターを開始することになる」という声明を発表しました。

但し、BTSの動画公開後のHYBEの株価は前日比▲25%と暴落し、大きな話題となりました。

今回は、このHYBEの株価について少し考察してみたいと思います。

 

HYBEの業績

HYBEは韓国証券取引所で株式が取引されている上場企業です。2020年10月に新規株式公開し、当時の社名は「ビッグヒットエンターテインメント」でした。

このビッグヒットエンターテイメントの株式は公開初日に高値を付けた後に急落し、多くのBTSファンが損失を被ったという報道がなされましたので、ご記憶にある方もいるのではないでしょうか。

HYBEの業績ですが、2021年度は以下の通りでした。

(出所 HYBE「4Q HY2021 Business Result」)

HYBEの2021年度の売上高は約1,260億円(1兆2,577億ウォン、韓国ウォン=0.1円換算)で、営業利益は約190億円(1,902億ウォン)、最終利益は約141億円(1,410億ウォン)でした。増収率は前年度比で+58%、営業利益は前年比で+30%と大幅増収増益です。

この要因はアルバムが伸びているだけではなく、ライセンス商品やコンテンツが伸びていることが大きく影響しています。HYBEはプラットフォーム事業に力を入れており、Weverseというファンコミュニティープラットフォームも運営しています。ツイッター、YouTubeが合わさった独自のオウンドメディアといったところです。コンサートはまだ回復途上にありますが、今後大幅に回復してくるでしょう。

このHYBEの業績は、結局のところBTSが過半を占めているとされています。

BTSが活動を一部休止してしまったならば、HYBEの株価が大きな影響を受けるのは当然でしょう。

 

HYBEの株価と暴落要因

このHYBEの株価は以下の通りとなっています。

(出所 Bloomberg)

既に高値からは半分以下となっており、特に足下では急落しています。

年初来リターンは▲57.4%です。

でもHYBEの株価が下げ止まったと言えるかは微妙なところです。そもそもHYBEの株価を筆者は割高であると考えています。

株価収益率(PER)は6月17日現在で37.5となっており、十分に高い水準です。HYBEの時価総額は6,141億円相当ですが、純資産は2,883億円相当ですので、PBRも高い状況にあります。そもそも、売上高が1,260億円しかないのに時価総額が6,141億円です。

HYBEの株価が急落した要因は、BTSの一部活動休止にあることは間違いありませんが、その背景には「高過ぎた株価」「高すぎる業績期待」があるものと思われます。

(出所 HYBE「1Q HY2022 Business Result」)

上記スライドはHYBEの2022年1Q決算の内容です。

端的に言えば、前年度比では増収増益ですが、前四半期(2021年10~12月期と2022年1~3月期)との比較では減収減益となっています。

BTSの発表がある前に、既に業績が頭打ちとなっている兆候があったということなのです。

そして、同社が推進するプラットフォームビジネスは、あくまでBTSが呼び水となってファンのアクセスを集めていることは間違いないでしょう。BTSの活動が減少すれば、サイトの集客力が低下する可能性は捨てきれません。

このような要因が重なって、暴落に至ったと筆者は考えています。