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三井住友フィナンシャルグループは何故SMBCグループと呼称しているのか

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メガバンクの一角である三井住友フィナンシャルグループをご存じの方は多いでしょう。中核企業は三井住友銀行ですが、三井住友カードは国内で有名ですし、SMBC日興証券も大手証券の一角です。

この三井住友フィナンシャルグループですが、金融業界では基本的に「SMBC」と呼ばれています。(おそらく企業からも同様にSMBCと呼ばれているのではないでしょうか)

実はこれは少し不思議なことです。

三井住友フィナンシャルグループは英語では「Sumitomo Mitsui Financial Group,Inc.」と表記されます。従って、普通に頭文字を取れば「SMFG」なのです。

他のメガバンクである三菱UFJフィナンシャル・グループの英語表記は「Mitsubishi UFJ Financial Group, Inc.」であり、「MUFG」と呼ばれています。これは自然な略称と言えるでしょう。

今回は、三井住友フィナンシャルグループがなぜSMBCと呼ばれているのかについて、簡単に確認していきたいと思います。

 

自社の宣言

先に申し上げておくと、三井住友フィナンシャルグループは、自らを「SMBC」と呼ぶことにしています。

2018年4月に以下のようにグループ呼称およびグループロゴを変更しています。

<変更前>

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<変更後>

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(出所 三井住友フィナンシャルグループWebサイト)

三井住友フィナンシャルグループは、 2018年4月にグループのブランド価値向上のため、グループのマスターブランドを「SMBC」と定め、新たなグループ呼称およびグループロゴの設定、グループ各社の社名ロゴの変更を行うことを発表しました。

この目的は、「SMBC」の浸透をはかり、ブランド力向上を目指すこととされていました。上場企業である三井住友フィナンシャルグループの会社名や三井住友銀行の店舗名は変更ありませんでした。このグループ呼称・ロゴの変更の影響では、店舗の看板掛け替えは一部にとどまり、呼称の変更に伴う諸費用は3億円程度と当時報道されています。

元々、三井住友フィナンシャルグループは「SMFG」の呼称及びロゴを上場(経営統合)した2002年から使用していました。しかし、2018年に方針を転換しているのです。

 

呼称・ロゴの変更理由

この呼称・ロゴの変更理由については、三井住友フィナンシャルグループ二十年史で以下のように説明されています。

(コラム)
ブランド戦略の見直し

当社は、2018年4月、グループ経営を強化するなかで、新たなグループブランド戦略を導入した。2017年4月にスタートした中期経営計画の策定時に議論をしていたものの、事業本部制・CxO制の導入による新たなグループ経営体制の立ち上げ・定着を優先させるため、ブランド戦略の見直しを見送った経緯があった。しかし、2017年度の取り組みを通じて持株会社を中心とするグループ経営体制がしっかりと定着してきたことから、2018年度から新たなグループブランドの展開、浸透を図ることとした。

具体的には、これまで当社グループは、持株会社名である「三井住友フィナンシャルグループ」およびその略称である「SMFG」をグループ呼称として用いてきたが、グループのブランド価値の向上およびグループの一体感強化の観点から、グループのマスターブランドを「SMBC」に定めるとともに、新たなグループ呼称として「SMBCグループ」を使用することとした。「SMFG」をグループのマスターブランドにすることも考えられたが、①SMBCブランドの認知度の高さ(とりわけ海外)、および②仮にSMFGをマスターブランドとする場合には、SMBC日興証券等、「SMBC」を冠にしたグループ会社の社名変更が必要になることなどを勘案し、最終的に「SMBC」をマスターブランドに選定した。

マスターブランド選定に合わせ、新たなグループロゴも設定した。当社のコーポレートカラーを踏襲し、トラッドグリーンの背景に、フレッシュグリーンの「ライジングマーク」と白抜きの「SMBC」を配置した。同時に、マスターブランドを採用するグループ各社の社名ロゴも、原則「グループロゴ+会社名」の形に統一し、グループとしての一体感を強化した。 SMBCブランドには銀行のイメージが強いことから、2018年4月のSMBCグループ年度方針打合会において、社長の國部は、「持株会社を中心にグループ経営を強化していく方針には些かも変わりはない」と強調し、「SMBCブランドの下、グループ一体的なサービス提供にますます取り組む」ことをグループ役職員に求めた。

(出所 SMBCグループ二十年史「第2編 第2章 新たなガバナンスの下でのグループ・グローバル経営の強化」)

この二十年史のコラムにあるように、①SMBCブランドの認知度の高さ(とりわけ海外)と②SMBC日興証券等、「SMBC」を冠にしたグループ会社の社名変更を避けたいとの思惑から、SMFGからSMBCへ呼称・ロゴを変更したとしています。

 

まとめ

三井住友フィナンシャルグループは、傘下の銀行が主導してきた従来の経営を転換し、持ち株会社の権限を強める経営改革を進めてきました。特に「SMFG」の呼称は持ち株会社が上場した2002年から使っていたのです。

しかし、現在はSMBCの呼称を使っています。

これは何を意味するのでしょうか。

やはり三井住友フィナンシャルグループは銀行中心の色が強いということなのだろうと筆者は理解しています。三井住友フィナンシャルグループ発足後は、信託銀行が傘下になく、証券会社も弱い状況において、三井住友フィナンシャルグループは結局は三井住友銀行(Sumitomo Mitsui Banking Corporation=SMBC)だけが目立っていました。

金融業界ではSMFGとは呼ばれず、SMBCと呼ばれていましたし、海外でも取引で目立つのはSMBCだったでしょう。

結局のところ、持ち株会社主導の経営は進めているものの、知名度という点ではSMFGをSMBCを上回るブランドに育てることが出来なかったということなのです。

そのため、現状追認でSMBCをグループの呼称として定めることにしたと筆者は考えています。