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コロナ第6波はいつがピークなのか

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みずほリサーチ&テクノロジーズが、2022年2月4日に、最新の感染状況を基にした新型コロナウイルスの流行見通しを公表しました。

タイトルは「東京の感染ピークアウトは 2 月前半に~今から緊急事態宣言を発令するメリットは限定的~」です。

この見通しでは、1月以降に人流がコロナ前比で3割近く減っており、2月上旬には感染者数がピークを越えると試算しています。そして、緊急事態宣言を発令しても感染を抑える効果は限定的と結論付けました。

今回は、このみずほリサーチ&テクノロジーズのレポートを確認していきたいと思います。

 

足元の状況

みずほリサーチ&テクノロジーズのレポート(https://www.mizuho-ir.co.jp/publication/report/2022/pdf/express-jp220204.pdf)から、まずは足元の状況を確認していきましょう。

以下は、全国の新規感染者数の推移です。

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このグラフで見てわかる通り、2022年2月に入り日本の新型コロナウイルス新規感染者数は全国で1日当たり10万人の大台を突破しています。これは、2021年夏の第5波におけるピーク(約2.6万人)の4倍近い水準です。

この感染者数の大波はいつまで続くのでしょうか。

以下は参考となるかもしれない東京と沖縄の新規感染者数の推移です。

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オミクロン株の感染拡大が早い段階で始まった沖縄では、2022年1月中旬をピークに新規感染者数が減少傾向へ転じています。東京など他地域ではまだ感染拡大が続いているものの、新規感染者数の前週対比増加率は徐々にペースダウンしており、足元では第6波に収束の兆しが見えつつある可能性があります。

 

東京の感染・医療シミュレーション結果

つぎにみずほリサーチ&テクノロジーズのレポートでは、東京の感染・医療シミュレーションについて触れています。

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人出の動きを表すGoogle社の小売・娯楽モビリティは、2022年1月16日週にコロナ禍前対比▲23.1%、1月23日週に同▲27.0%と低下しています。

東京の週間新規感染者数は、今後、2022年2月6日週(2月6~12日)にかけて15.2万人(1日当たり平均2.2万人)まで増加するとみずほリサーチ&テクノロジーズは予想しています。その15.2万人のうち大半は現役世代(10.5万人)ですが、子供・幼児も3.5万人と4分の1程度を占める計算です。

一方、みずほリサーチ&テクノロジーズのシミュレーションでは、2月13日週(2月13~19日)以降は新規感染者数が減少に転じるとの結果になりました。

東京の感染ピークアウトは2月前半、もう間もなくであると予想されています。

そして、感染に少し遅れて変動する重症者数は、2月中旬~下旬に昨夏の第5波並みの水準まで増加するとのシミュレーション結果となりました。重症病床数に対する重症者数の比率(重症病床使用率)は8割弱まで上昇する計算です。但し、2月末以降は、感染の収束に少し遅れて重症者数もピークアウトし、重症病床使用率は3月末には20%前後の水準へ改善していくと見込まれています。

 

緊急事態宣言は必要か

東京都内の病床使用率は2022年2月1日の時点で50.7%となり、都が緊急事態宣言の発出の要請を検討するとしていた50%を超えています。

みずほリサーチ&テクノロジーズは、今から緊急事態宣言を発令して追加的に人出を減少させるメリットがどの程度あるかについてもシミュレーションしています。それが以下のグラフです。

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緊急事態宣言の発令による追加的な人出減少効果は、宣言発令時に実施する具体的な対策の内容によって変わると考えられるものの、みずほリサーチ&テクノロジーズでは2月末まで宣言を発令して2月6日週~2月27日週の人出を上記シミュレーションの想定から▲5%Pt押し下げられると仮定し、先行きの新規感染者数への影響を試算しています。その結果が上記グラフです。

緊急事態宣言を発令して人出を一段と減少させると、感染減少ペースを幾分速めることができるものの、新規感染者数の推移に大きな変化はありません。宣言発令による大きな経済的コストと比較すると、今から宣言発令するメリットは限定的であろうと、みずほリサーチ&テクノロジーズは結論付けています。

 

まとめ

日本政府は、感染力が強いものの重症化率は低いとされるオミクロン株の特性を踏まえ、社会経済活動を維持するためにも、宣言の発出はできるだけ回避したい考えであると報道されています。

筆者が、今回、このみずほリサーチ&テクノロジーズのレポートを取り上げたのは、まさに今回こそは「科学的に」政府には判断して欲しいからです。

もちろん、国民が不安に思っているのであれば、それに対応していくのも政治です。

しかし、ここまで様々な経済活動を犠牲にしてきた中で、もし仮に緊急事態宣言を発出したとしても、あまり効果が無いことが見込まれているのであれば、さすがにそろそろこのような対応は止めても良いのではないかと筆者は考えています。

今後数週間の感染者動向および政府の対応に注目していきたいと思います。