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ワクチン接種を回避する傾向にあるのは誰か?今後の課題は?

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新型コロナウィルスの感染者数が落ち着きを見せています。

この要因は様々に語られていますが、ワクチン接種の影響もあるのではないでしょうか。

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(出所 厚生労働省Webサイト)

このワクチン接種については、独立行政法人経済産業研究所が「どういう人々が新型コロナウイルスのワクチンを接種したがらないか」を発表しています。

今回はこの発表を確認していきたいと思います。

 

ワクチン接種を回避する人の傾向

独立行政法人経済産業研究所は、「どういう人々が新型コロナウイルスのワクチンを接種したがらないか:インターネット調査における検証」を発表しています。

この調査は、「新型コロナウイルスの蔓延を終息させるためには多数の人々がワクチンの接種を済ませることが重要であるが、ワクチン接種に対して抵抗感を持つ人々が多いことも知られている。どのような人々が新型コロナウイルスのワクチン接種に対する抵抗感を持っているかについての実態把握が急務である。」との認識の下で実施されたものです。

検証対象としたのは2021年4月下旬の経済産業研究所が実施したインターネット調査です。

結果は以下の通りです。

有効回答者数は11,846名で、まだ接種していない人々(11,637名)のうち、「接種するつもり」は60.9%で、「まだ決めていない」が30.1%、「接種しないつもり」が9.0%だった。

「接種するつもり」の人々に比べて、「まだ決めていない」人々は、女性、低学歴者、低所得者、預貯金額の少ない人々、うつ傾向がある人々、やせている人々で多く、高齢者、夫婦のみの世帯、高血圧か脂質異常症の人々、最重視する情報源がテレビ(NHK)の人々、他人を信用する人々、新型コロナへの恐怖が強い人々で少なかった。

ワクチンを接種しないつもりと回答した人々は、女性、低学歴者、預貯金額の少ない人々、全般的な不安傾向がある人々、新型コロナへの恐怖の小さい人々、やせている人々で多く、高齢者、夫婦のみの世帯、高血圧か脂質異常症の人々、最重視する情報源がテレビ(NHK)の人々、他人を信用する人々で少なかった。

(出所 経済産業研究所「どういう人々が新型コロナウイルスのワクチンを接種したがらないか」2021年6月)

そして、結論としては、「女性、高齢者以外、社会経済状況が低い人々、他人を信用しない人々、うつや不安の傾向がある人々はワクチン接種に否定的な傾向が見られた」とまとめています。

尚、この調査で筆者が目を引いたのは最重視する情報源がテレビ(NHK)の人々はワクチン接種に否定的ではなかったというところです。

当該調査本文には以下のように説明されています。

新型コロナウイルスの情報源として最も重視しているものとして、テレビ(NHK)を挙げた人々は、テレビ(民放)、インターネットの検索エンジン(Google、Yahooなど)、ニュース系アプリ・サイト(Gunosy, Smartnewsなど)に比べてワクチン接種意欲が高かった。情報媒体と新型コロナウイルスのワクチン接種の関係については、伝統的で権威のある情報源を頼る人々はワクチン接種への抵抗が少ないとするアイルランドとイギリスの研究や、NY Timesなどの主要な新聞を情報源とする人々よりも保守的な情報源を頼る人々の方がワクチン接種意欲が低いという研究があり、情報源がワクチン接種意欲と関係することが、これらの研究や本研究から示唆される。ただし、NHKを重視するためにワクチンを受容するという因果関係が存在するのか、それとも、NHKを重視するような人々はワクチンを受容する傾向があるという相関関係なのか、観察研究では本研究からは把握できず、更なる研究が必要である。

(出所 経済産業研究所「どういう人々が新型コロナウイルスのワクチンを接種したがらないか」2021年6月)

筆者もブログを書いて情報を発信している側でもあります。この結果については考えさせられるところがあります。

 

現在のワクチン接種状況

では、日本の現在のワクチン接種状況はどのようなものでしょうか。

<男性全年代>

1回目接種率71.4%、2回目接種率67.3%(2021年11月4日時点)

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(出所 政府CIOポータル「新型コロナワクチンの接種状況(一般接種(高齢者含む))」)

<女性全年代>

1回目接種率71.9%、2回目接種率68.3%(2021年11月4日時点)

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(出所 政府CIOポータル「新型コロナワクチンの接種状況(一般接種(高齢者含む))」)

このように、男女の差で接種率はほぼ変わりません。強いて言うならば女性の方が接種がわずかに早かったというところでしょうか。

一方で、65歳以上のワクチン接種状況は、1回目接種率91.6%、2回目接種率90.8%(政府CIOポータル)となっています。

その点では、経済産業研究所の想定通り、高齢者の方がワクチン接種率が高くなっているとも言えます。(もちろん政府の政策があったからという側面が前提にあります)

「社会経済状況が低い人々、他人を信用しない人々、うつや不安の傾向がある人々」についてのワクチン接種状況については、日本では公的データがないように思われます。

但し、海外では社会的状況が低い人(人種・貧困の問題)で接種率が異なるとの報道もありますので、経済産業研究所の調査に関する結果は正しい可能性は否定できません。

 

所見

公的機関がワクチン接種を回避する人の傾向を発表し、「女性、高齢者以外、社会経済状況が低い人々、他人を信用しない人々、うつや不安の傾向がある人々はワクチン接種に否定的な傾向が見られた」とまで公表していたことについては、非常に有用だったと筆者は考えています。このような結論を出すことで批判される虞もあったでしょうが、必要な政策がどのようなものであるかを判断するためにはデータが必要です。

ただ、一方で、当該調査結果が実際の政策に活かされたかという点では、課題が残ったのではないでしょうか。経済産業研究所の調査では以下のように示唆されていました。

集団免疫を目指してワクチン接種を全世代で推進しようとすれば、本研究の結果からは、何とかして若年層にワクチンを接種してもらう方法を模索することが必要になる。たとえば、健康経営の一環としての職場でのワクチン接種の推奨など、職場レベルでの対応が求められるかもしれない。ただ、ワクチン接種に積極的でない社会経済的状況の低い人々は中小企業や非正規雇用など、大企業中心の健康経営の枠組みでは手の届かない人々が中心で、対応には限界があり、若年層で社会経済的状況の低い人々にとってインセンティブになる取り組みがないとワクチン接種にブレーキがかかる可能性が高い。正のインセンティブの例としては、一定の年齢(たとえば50歳)未満の人々でワクチンを接種する人々に商品券などを付与する、ワクチン接種者には抽選で賞品がもらえるようにすることがあり、負のインセンティブの例としては、国内版のワクチンパスポートを作って、これを保有する人々と保有しない人々で行える行動の範囲に差を儲ける(マスクを着用するか否か、イベントに参加できるかなど)ことがある。ただ、いずれも財源確保や制度設計の難しさにおいて問題をはらんでおり、公平性の問題を惹起する懸念もある。

(出所 経済産業研究所「どういう人々が新型コロナウイルスのワクチンを接種したがらないか」2021年6月)

コロナ感染症への政府施策は、筆者には科学的な対応というよりは、極めて政治的な対応であったように感じています。また、日本らしい公平性の考え(悪平等、みんなで貧しくなりましょうというイメージ)があったようにも思います。

日本という国家が、今後は「何を大事にして動いていくべき」なのか、コロナ対策を通じて、考えてみるのも良いのではないでしょうか。(コロナ対策に留まらずです)