新生銀行がSBIホールディングスが実施中のTOB(株式公開買付)に反対の意向を表明する方針を固めたと報道されています。
但し、新生銀行には他に自社を救ってくれるホワイトナイトが見つかっていません。
単純に反対したとしても、SBIホールディングスが高値で株式を購入してくれるなら売ろうと考える既存株主は相応に存在するでしょう。
また、SBIホールディングスが指摘しているように、新生銀行経営陣には公的資金を放置してきた責任があります。
新生銀行は公的資金を注入されているが、返済が進んでいません。現在は公的資金が普通株式に展開されており、政府は一般株主と同じ立場となっており、単なる大株主です。
そのため、政府は新生銀行の株式を売却しようと思えば、いつでも売れる状況にはあります。ただし、新生銀行の株価は長期に渡り低迷しており、安値での処分は国民負担が生じるため政府も踏み切れません。結果として、約3,500億円の公的資金が注入されたままとなっています。
このSBIホールディングスによる新生銀行へのTOB問題は、新生銀行が今なお抱える公的資金(すなわち根本的には国民からの借金)を処理できる可能性が高いのは誰か、という点こそがポイントになるはずです。
今まで、公的資金を返済できなかったのは、新生銀行の経営陣が収益を長期的に改善できなかったからであることは否定できません。収益が改善していれば、株価も上昇し、政府が保有株式を株式市場で売却する道もあったでしょう。そして、収益が改善していれば、ホワイトナイトも現れたでしょう(こちらは「たられば」の話でしかありませんし、収益改善がなされていたらSBIホールディングスからTOBは仕掛けられていません)。
すなわち、新生銀行はSBIホールディングスに対して対抗するのが難しい状況にあります。
では、新生銀行にはもう手がないのでしょうか?
ここに一つの突拍子もないアイディアがあります。
それは新生銀行がホワイトナイトとしてみずほFGを迎え入れるというものです。
もちろん、みずほFGは、システム障害問題があり、他行を支援する余裕なんてないように思えるでしょう。
しかし、このアイディアは、追い込まれているみずほFGにとっても有用になる可能性があります。
第一に、みずほFGは、長期信用銀行である日本興業銀行が源流の一社です。
新生銀行は、長期信用銀行の日本長期信用銀行が破綻し一時国有化した後に、投資家連合に売却された銀行です。
すなわち、みずほFGと新生銀行は、その源流が同じ業態なのです。元々の企業風土は似ていた部分もあるでしょうし、リテールに経営資源を集中させてきた新生銀行と、リテールにあまり強さの感じられないみずほFGならば、相乗効果が出る可能性もあるでしょう。
また、SBIホールディングスは、その動き方がやや強引なところがあります。そして、ソーシャルレンディング事業では大口の貸倒が発生し、結果として廃業となる等、対応を間違えると一般顧客に影響を及ぼすこともあります。政府・金融庁としては、他に相手がいないのでSBIホールディングスが新生銀行に手を出すことを容認していると思いますが、決して手放しで喜んでいる訳ではないでしょう。
そこで、みずほFGの出番です。
みずほFGはご承知の通り、システム障害問題で追い込まれています。ただし、新生銀行を買収もしくは吸収し、最終的に公的資金の返済の道筋をつけられるのであれば、政府・金融庁には「貸し」を作ることも可能でしょう。
政府・金融庁には、新興証券会社に銀行を買収されることを懸念している勢力もいるはずです。みずほFGという銀行が、新生銀行を買収するという同業による買収の方が望ましいと考えているかもしれません。
資金力という点では、みずほFGはSBIホールディングスを圧倒的に上回ります。
奇策でしかありませんが、新生銀行がみずほFGをホワイトナイトになるという案も、悪くはないように思います。(あくまで筆者の私見です)