みずほフィナンシャルグループ(みずほFG)が2021年3月期の決算を発表しました。
この2020年度通期決算で、みずほFGは純利益が前期比5%増の4,710億円となりました。
国内貸出が中小企業向けで増加したこと等があり、本業のもうけを示す実質業務純益は21%増の7,977億円と増益着地です。
「本業の収益に支えられた堅調な決算だった」とみずほFGの社長が決算を総括したとも報道されています。
今回はみずほFGの2021年3月期連結決算について確認していこうと思います。
決算概要
まずはみずほFGの2020年度決算の概要を確認しましょう。
(出所 みずほFG「2020年度決算の概要」)
みずほFGの決算は単純化すれば売上(連結粗利益)が増加し、経費が横ばいだったため、本業の利益である連結業務純益(一般企業の営業利益に相当)が+1,357億円の増益となりました。
そして、顧客部門がしっかりと増益となっているため、債券・株式市場等の金融マーケットに助けられた訳ではないことも分かります。
与信関係費用は前年度比で332億円増加(悪化)していますが、退職給付(年金等)関連の特別利益の計上もあり、最終利益は増益にて着地しています。
数字から見ると確かにみずほFGの決算は悪くなかったと言えるでしょう。
不良債権処理
しかし、コロナ禍の影響はみずほFGに不良債権を発生させていないのでしょうか。
以下は与信関係費用、不良債権(金融再生法開示債権)の状況です。
(出所 みずほFG「2020年度決算の概要」)
みずほFGの不良債権は、リーマンショック直後のような状況にはなっていません。政府の支援策等で企業の倒産が小規模にとどまっていることが影響しているものと想定されます。
2020年度決算では2,049億円の与信費用を計上していますが、そのうち723億円はフォワードルッキング対応=将来に備えての引当となっています。すなわち、現時点では不良債権にはなっていないものも含めて与信費用処理をしているのです。
不良債権比率は前期の0.75%から2021年3月期は0.89%まで増加していますが、大きな増加ではありません。リーマンショック直後から比べると、不良債権比率は半分といったところです。
但し、少し留意すべきは、みずほFGの不良債権処理が適切か、という点です。
同日に2021年3月期決算を発表した三井住友FGの不良債権処理状況は以下の通りです。
- 与信関係費用3,605億円
- 不良債権比率0.98%(⇔前期0.68%)
- 連結ベースの貸出残高は96兆円
- 与信関係費用÷貸出残高=0.38%
これに対して、みずほFGは以下の通りとなります。
- 与信関係費用2,049億円
- 不良債権比率0.89%(⇔前期0.75%)
- 連結ベースの貸出残高は83兆円
- 与信関係費用÷貸出残高=0.25%
みずほと三井住友とは同じ貸出先ばかりではないでしょうし、子会社含めて事業が異なる点も多いことは間違いありませんが、上記のように簡易に試算してみると、三井住友の方が踏み込んで不良債権対応を行っている可能性があることが分かります。
そして、2021年度(2022年3月期決算)では、三井住友FGは与信関係費用3,000億円を計画しているのに対して、みずほFGの計画は1,000億円です。
それほど規模が変わらない両行にここまでの差が出ることについては、留意しておく必要があるかもしれません。
所見
今回はみずほFGの決算に焦点を当てました。総じて好調な決算だっと筆者は考えます。
しかしながら、みずほFGを同日に発表された三井住友FGと比較すると物足りなく見えるのも事実です。
そもそもみずほFGは2019年3月期決算で金融界のサクラダファミリアと言われたシステムを減損(一括で費用処理)させ、将来のコスト削減を行いました。
それでも、経費率(営業経費÷連結粗利益)で見ると、2021年3月期決算では、みずほ64.3%に対して、三井住友FGは55.1%となっており、みずほの弱点はコスト構造にあると想定されます。
そのような状況がある中で、2021年3月期には与信関係費用についても上述のようにみずほFGと三井住友FGには差があるのです。みずほFGが決算を作るために、三井住友FGほどには不良債権処理を行っていないと考えることもできます。
まだまだ、みずほFGと三井住友FGには差があると考えた方が良いものと思います。