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藤田観光の2020年度3Q決算は、財務的には崖っぷちの状態に

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(写真出所 藤田観光Webサイト)

ホテル椿山荘東京を運営する藤田観光が2020年12月期3Q(1~9月)決算を発表しました。

コロナ禍において、ホテルは各社とも非常に厳しい状況にありますが、藤田観光も同様です。

藤田観光は大幅な赤字によって財務体質がかなり弱っています。企業としての存続に問題はないのでしょうか。

今回は、藤田観光の2020年度第3四半期決算について確認してみましょう。

 

決算概要

まず、藤田観光の2020年12月期第3四半期決算の概要を確認しましょう。

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(出所 藤田観光「2020年12月期第3四半期決算説明資料」)

以上の通り、藤田観光の決算は大幅な赤字です。非常に厳しい決算と言えるでしょう。

セグメント別の売上高で見ると以下のようになっています。

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(出所 藤田観光「2020年12月期第3四半期決算説明資料」)

藤田観光は、ホテル椿山荘東京のイメージが非常に強いと思いますが、近時の収益の柱はWHG(ワシントンホテル、ホテルグレイスリー)事業でした。

このWHG事業がコロナ影響によって大幅に落ち込んでおり、藤田観光の業績を著しく悪化させています。セグメント別の利益は以下の通りです。

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(出所 藤田観光「2020年12月期第3四半期決算説明資料」)

WHG事業が最大の赤字セグメントですが、ラグジュアリー&バンケット事業=ホテル椿山荘東京等の婚礼・宴会・宿泊も大幅赤字であり、他のセグメント含め全てのセグメントで赤字となっています。

この赤字によって、藤田観光の財務基盤は大きな打撃を受けました。

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(出所 藤田観光「2020年12月期第3四半期決算説明資料」)

上記スライドにあるように純資産は61億円まで減少しています。自己資本比率は6%まで低下しました。現在の損益状況が続き、期末にかけて減損損失が発生した場合には、債務超過に転落する可能性も排除できません。

藤田観光はかなり追い込まれている状況にあります。

 

足元の動き

藤田観光はかなり厳しい決算状況にありますが、2Q(4~6月)に比べると、3Q(7~9月)は売上高も回復傾向にあります。

以下は、3ヵ月毎の藤田観光のセグメント別売上高です。 

(単位百万円) 1Q(1~3月) 2Q(4~6月) 3Q(7~9月)
実績 1Q比 実績 1Q比 2Q比
WHG事業 5,377 697 13% 1,576 29% 226%
ラグジュアリー&バンケット事業 3,523 707 20% 1,597 45% 226%
リゾート事業 1,017 169 17% 1,403 138% 830%
その他 716 408 57% 508 71% 125%
売上高合計 10,634 1,981 19% 5,084 48% 257%

(出所 藤田観光決算資料より筆者作成)

セグメントとしては大きな割合ではないもののリゾート事業は回復してきています。WHG事業、ラグジュアリー&バンケット事業でもホテルの稼働率は回復傾向にあります。

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(出所 藤田観光「2020年12月期第3四半期決算説明資料」)
上記の通り、藤田観光は、Go To トラベルキャンペーンの恩恵を比較的受けていると言えるでしょう。

4Q(10~12月)では、ラグジュアリー&バンケット事業(≒ホテル椿山荘東京)の宿泊部門の売上が前年を上回る見込みとなり、料飲部門においても週末の慶事・記念日利用や、小グループ、宿泊者利用の増加に伴い、4Qの売上が前年の90%まで回復見込みと発表されています。

またWHG事業の稼働率推移は以下の通りです。

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(出所 藤田観光「2020年12月期第3四半期決算説明資料」)

東京都内事業所は稼働率が低迷していますが、他のビジネスホテルと比較して完全に劣後しているとまでは言えないでしょう。観光庁の宿泊旅行統計調査によれば8月の東京都におけるビジネスホテルの稼働率は23.6%、シティホテルの稼働率が17.3%となっているためです。

 

今後の動向

以上、藤田観光の業績について見てきました。

次に財務状況・資金繰りについても確認しておきましょう。

<2020年9月末時点>

  • 現預金63億円(前期末比+28億円)
  • 投資有価証券147億円(同▲40億円)
  • 短期借入金92億円(同+60億円
  • 1年以内返済予定の長期借入金77億円(同+2億円)
  • 長期借入金493億円(同+156億円
  • 純資産62億円(同▲161億円)
  • 自己資本比率6.0%(同▲19.4ポイント)

藤田観光は2020年12月期3Qまでに+218億円の借入を行いました。ところが、手元キャッシュは28億円しか増加していません。すなわち、赤字により多額のキャッシュが流出していることが分かります。

加えて、純資産が62億円、自己資本比率は6%まで低下しています。これ以上、銀行から新たな長期資金を調達するのは厳しい可能性が高いでしょう。(もちろん、2019年12月末時点では当座貸越枠とコミットメントラインで220億円の枠があり、そのうち29億円だけを使用していました。この既存枠からの借入は可能と思われます。)

そして、まだ投資有価証券が残っていますので、それを売却すればしばらくは資金繰り上の問題は乗り越えられますが持続的ではありません。

そのため、藤田観光に出来ることはまずはコスト削減でしょう。以下の通りコスト削減に注力していることが分かります。

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(出所 藤田観光「2020年12月期第3四半期決算説明資料」)

但し、このようなコスト削減を行っても、本質的にはホテル等の稼働率が回復しない限りはキャッシュの流出は止まりません。

現在の財務状況および決算状況を勘案すると、藤田観光は、恐らく資本増強策を検討しているはずです。もしかすると第三者との資本提携も視野に入れているかもしれません。

藤田観光にはまだ魅力的な資産が存在しています。ホテル椿山荘東京だけだったら、喉から手が出るほど欲しい不動産事業者は多数存在します。

しかしながら、この段階でも資本増強策も資本提携も発表されていないということは、協議・交渉等が苦戦しているということなのでしょう。やはりコロナ禍の中ではホテルに投資するのはリスクと考える投資家が多いのでしょう。

但し、ファイザーの新型コロナワクチンが90%超の予防効果であったと報道されています。もちろん、しばらくは人の往来、特に海外からの旅行者は望みにくいかもしれませんが、ワクチン開発によって先行きが見通すことができるようになれば、投資家等の風向きは変わるかもしれません。

とにかく、藤田観光については、今後の資本増強・提携策に注目したいと思います。