(写真出所 藤田観光グループ 第88期 中間事業報告)
ビジネスホテルを展開し、ホテル椿山荘東京を運営する藤田観光が厳しい経営環境に陥っています。
コロナ禍において、ホテルは各社とも非常に厳しい状況にあります。
今回は、コロナが、ホテル事業を運営する企業に対してどの程度の影響を与えているのかを確認すると共に、事例としての藤田観光の今後について考察しましょう。
決算概要
藤田観光は12月決算の企業です。
少し前になりますが2020年12月期中間期決算を2020年8月に発表しています。その際の記事を以下引用します。
藤田観光、過去最大の赤字 133億円、ホテル客激減
2020.8.7 SankeiBizビジネスホテル「ワシントンホテル」などを展開する藤田観光が7日発表した令和2年6月中間連結決算は最終損益が133億円の赤字だった。中間決算として過去最大の赤字額で、赤字は4年連続。新型コロナウイルス感染拡大で訪日外国人客や国内出張客が激減した。売上高は62・5%減の126億円、本業のもうけを示す営業損益は101億円の赤字だった。
一部施設で休業した間の人件費など22億円を特別損失として計上した。ホテルと婚礼、リゾートの3事業とも減収となり、主力施設の一つである「ホテル椿山荘東京」(東京)では結婚式の延期やキャンセルが相次いだ。政府の緊急事態宣言解除後は国内客が回復傾向にあるとしている。
2年12月期業績予想は、新型コロナの影響で合理的な算定が難しいとして公表していない。
(出所 SankeiBiz https://www.sankeibiz.jp/business/news/200807/bsd2008071801005-n1.htm)
この記事で分かるのは、藤田観光が中間決算としては過去最大の赤字を出しているということです。但し、中間決算では4年連続の赤字としており、今までも業績が厳しかったことも分かります。
損益状況
それではもう少し詳しく藤田観光の業績について見ていくことにしましょう。
(出所 「2020年12月期 第2四半期決算について」2020年8月7日 藤田観光株式会社)
以上が藤田観光の2020年12月中間決算数字です。
売上高が大きく減少し、営業利益以下も大幅赤字となっています。
(出所 「2020年12月期 第2四半期決算について」2020年8月7日 藤田観光株式会社)
この図表で分かる通り、今回の営業利益の大幅赤字要因は、主に減収によるところが大です。WHG事業(いわゆるビジネスホテル等)の減収影響で98億円の利益減、ラグジュアリー&バンケット事業(いわゆる結婚式や宴会等)の減収影響で42億円の利益減です。
固定費を36億円削減しても赤字は全く埋められなかったことが分かります。
(出所 「2020年12月期 第2四半期決算について」2020年8月7日 藤田観光株式会社)
上図は主な運営施設の前年同期比売上高です。どの施設も壊滅的に売上高が減少していることが分かります。
(出所 「2020年12月期 第2四半期決算について」2020年8月7日 藤田観光株式会社)
上記は、藤田観光における2020年1~6月の前年同期比売上高の動向等です。コロナの影響がどれほどホテル運営企業に及ぶかを如実に語っています。
財務・資金繰り状況
上記の決算によって、藤田観光の財務状況は厳しいと言わざるを得ません。
<2020年6月末時点>
- 現預金128億円(同+94億円)
- 投資有価証券152億円(同▲35億円)
- 短期借入金89億円(同+57億円)
- 1年以内返済予定の長期借入金75億円(同+0億円)
- 長期借入金505億円(同+168億円)
- 純資産104億円(前期末比▲161億円)
- 自己資本比率9.7%(前期末比▲15.7ポイント)
2020年6月末時点で、藤田観光は128億円の現預金および152億円の投資有価証券を有しています。
2020年1~6月の6ヵ月間で藤田観光のフリー・キャッシュフロー(営業CFと投資CFの合計)は▲127億円の赤字でした。よって、現在の手元現預金・投資有価証券があればしばらくは持ちこたえることができるように思えるでしょう。
しかし、藤田観光は2020年1~6月の間に225億円も借入を増加させています。そして、純資産が104億円、自己資本比率9.7%まで低下しています。2020年12月期の下期も同様の損益状況であれば債務超過に転落する可能性もあります。そうすれば、銀行が追加で融資するかは微妙になってくるでしょう。もちろん2019年12月末時点では当座貸越枠とコミットメントラインで220億円の枠があり、そのうち29億円だけを使用していました。まだ借入枠に余裕はある可能性はあります。しかし、いつまでも銀行団が債務超過を看過することはありません。
所見
藤田観光は2020年11月に3Qの決算発表を行います。
2020年1~6月の状況が続いている場合には、何らかの対応策を打ち出さなければ経営危機に陥る可能性もあります。
ホテル業種というのは、これほどコロナで経営が追い詰められているということです。大手であっても実情はこのようなものなのです。
もちろん、コロナ前から藤田観光は業績が苦戦していました。しかし、それでもここまで経営にダメージを与えるとはなかなか想定できなかったでしょう。
藤田観光は、恐らく資本増強策を検討しているはずです。もしかすると第三者との資本提携も視野に入れているかもしれません。
藤田観光にはまだ魅力的な資産が存在しています。ホテル椿山荘東京だけだったら、喉から手が出るほど欲しい不動産事業者は多数存在するでしょう。
しかし、わずか1年前には藤田観光が(経営建て直し中とはいえ)ここまで追いつめられると予想していた人はいなかったのではないでしょうか。
椿山荘の庭園は非常に素晴らしいものです。藤田観光の今後に筆者は注視しています。