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コロワイドの大戸屋HD買収は資金繰りに懸念

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外食大手のコロワイドが大戸屋ホールディングス(大戸屋HD)への敵対的 TOBを成功させました。ほどんどの経営陣を入れ替え、業績のてこ入れを図るとしています。

コロワイドは買収を重ねることで拡大してきた企業です。このようなやり方もアリでしょう。

しかし、コロワイドに、このコロナ禍の中で大戸屋を買収する余裕はあるのでしょうか。

今回は、コロワイドによる大戸屋HDの買収に関連して、コロワイドの財務状況等を確認してみましょう。

 

コロワイドの業績財務状況

以下はコロワイドの直近の業績・財務状況です

【2021年3月期第1四半期連結業績財務状況】

  • 売上高305億円(前年同期比▲48.4%)
  • 事業利益(営業利益) 54億円(赤字転落)
  • 最終利益▲42億円 (赤字転落)
  • 資産合計2,410億円
  • 親会社の所有者に帰属する持分(自己資本) 200億円
  • 自己資本比率8.3%

コロワイドはコロナ影響を受け、売上が激減し大幅な赤字に転落しています。 自己資本も薄い状況にあります。

 

資産・負債状況

以下はコロワイドの現金および社債・借人金の状況(2020年6月末)です。

  • 現預金239億円(2020年3月末比▲83億円)
  • 社債及び借入金405億円(同+81億円)

これを見れば分かる通り、社債・借人金を増加させたにもかかわらず、現預金は減少しています。

すなわち、借入が無ければわずか3ヶ月で▲184億円もの現預金が減少(流出)したことになります。

この要因を探るためにキャッシュフローも確認しましょう。

  • 営業CF ▲65億円
  • 投資CF ▲45億円
  • 財務CF +28億円

キャッシュフローで見ると、本業不振により営業 CFが赤字となっています。

それにもかかわらず、営業譲受や有形固定資産の取得(投資)によって投資CFも赤字となっています。

それを補うために主に短期借入を増加(+79 億円)させている一方でリース負債の返済(▲44億円)もあり、財務CFは+28億円にまりました。

結果として前述の通り▲83億円の現預金が減少しています。

 

所見

コロワイドは大戸屋HDのTOB(敵対的買収) を成功させました。その資金は61億円と報道されています。

2020年6月末時点で239億円の現預金があるため、61億円であれば拠出は問題ないと思われますが、一方で、2020年4~6月で本業での資金流出(=営業CF)が▲65億円となっている企業です。

仮に、2020年7~9月で同様に▲65億円の本業による資金流出が続いているとすれば、大戸屋HDへのTOB資金▲61億円+上記▲65億円=▲126億円がさらに流出している可能性はあります。

自己資本が薄いこともあり、銀行が追加融資を渋っていたとすると、コロワイドの現預金は100億円程度まで減少してしまっている可能性もあるのです。

大戸屋HDは2021年3月期1Qで最終損益が▲15億円となっている企業です。純資産も17億円まで低下しています。このまま赤字が続くと債務超過に転落する可能性も否定できません。 大戸屋HDの現預金は2020年6月末時点で26億円ありますが 、これは24億円の短期借入を行った結果です。

すなわち、コロナ影響が続く場合には、大戸屋HD は資金繰りに苦労する可能性が高いということになります。

コロワイドも上述の通り資金繰りに余裕があるとは思われません。

すなわち、今回の買収は資金繰りが厳しい企業を、資金繰りが厳しい企業が買収したことになります。

全ては外食に顧客が戻るか、にかかっていますが、留意が必要でしょう。今後のコロワイド、大戸屋HDの決算に注目しています。