銀行員のための教科書

これからの時代に必要な金融知識と考え方を。

銀行の建物が立派である理由はビジネスモデル

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テレビドラマ「半沢直樹」が始まってしまいました。

この半沢直樹に出てくる銀行の建物が随分と立派だと感じたことはないでしょうか。

なぜ、銀行の建物は見栄えが良いものにしているのでしょうか。

なぜ、銀行の本店は巨大なのでしょうか。単純に勤務している従業員が多いからでしょうか。

銀行業は儲かるから立派な建物を建てるのでしょうか。立派な建物を建てるから銀行業は儲かるのでしょうか。

今回は、このような素朴な疑問を考察してみましょう。

 

銀行とは何か

なぜ、銀行は見栄えの良い建物を使っているのでしょうか。

これは、実際には、銀行というビジネスの本質にかかわる観点です。

銀行の機能は様々にありますが、筆者は銀行業が巨大な産業になった要因は「信用創造」を作り出したことあるものと考えています。

この信用創造とは、銀行が貸し出しを繰り返すことによって、銀行全体として、最初に受け入れた預金額の何倍もの預金通貨(※)を作り出すことをいいます。この信用創造機能により銀行は多額の貸出を行うことができ、収益を上げているのです。

(※預金通貨とは、銀行に預けてある当座預金や普通預金のような流動性の高い預金のことをいいます。 預金口座からいつでも引き出せるため、現金と同じ決済機能を有しています。)

我々が銀行に預けたお金は、どこにあるのでしょうか。そのまま銀行の金庫に眠っているわけではありません。

預金は企業や国・地方公共団体へ貸し出されます。もちろん家計へも住宅ローンやカードローンなどの形で貸し出されますし、銀行同士でも貸し借りをしています。

銀行に預けられたお金は一斉に引き出されることはないという経験則があるため、銀行は、預金の必要な分を残して貸出に回しています。

預金した人も、貸出を受けた人も、その金額分を使用できることになりますから、世の中のお金は貸し出された分だけ増えることになるのです。

例えば、100万円の預金に対し、引出しに備えて銀行の手元に1割残す(支払準備金)とすると、銀行は90万円を貸し出すことができます。貸し出された90万円は経済活動で使われて他の人に渡ります。その人が90万円を預金すると、この時点で世の中に預金が190万円あることになります。新たに預けられた90万円は、さらに1割を残して貸し出されていきますから、これを繰り返して最終的には100万円の預金が1,000万円の預金となってもおかしくない訳です。

これは経済社会を円滑に機能させる銀行の重要な役割で、銀行の信用創造機能です。

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(出所 全国銀行協会「金融の役割とは?」)

これは「おカネがおカネを生んでいく」仕組みに他なりません。

信用創造の仕組みの中では、銀行の金庫には預金額と同じ量の現金がある訳ではありません。預金者が一斉に預金を引き出さないことを統計的、経験則的に銀行は知っているからです。

すなわち、この信用創造は、預金者はいつでも銀行が自分の預金を現金に替えてくれると信用しているから成り立つのです。

これが銀行のビジネスモデルのポイントであり、銀行の本質は「信用」なのです。

 

銀行が信用されるためには

では、どのような銀行が信用されて預金を預けてもらえるでしょうか。

どのような銀行だったら預金者から預金を一斉に引き出されないでしょうか。

有名なところ、儲かっていそうなところ、立派に思えるところ、格式高そうなところ、歴史がありそうなところ、そんな銀行だったら、預金者にきちんとお金を返してくれそうではないでしょうか。

銀行には目に見える商品はありません。

銀行が信用されるためには、立派な建物に入り、格式で預金者を圧倒し、この銀行にお金を預けても安心と思わせる必要があったのだと筆者は考えます。

すなわち、信用を得るためには、立派な建物が分かりやすかったのです。

筆者は若い頃、銀行の本店・店舗が立派なのは、儲かっているからだと思っていました。その要因は当然にあるでしょう。

しかし、今の経営者はあまり意識していないかもしれませんが、銀行の建物が立派だった本質は預金者から信用されるためなのです。そして、債務者に対しても雰囲気で圧倒することができます。

「おカネはおカネのあるところに寄ってくる」と言いますが、まさに、おカネを持っていそうなところにおカネは集まってきます。

銀行が立派な建物を使うのはビジネス上は理にかなっているのです。

しかし、今後は建物では信用を獲得できないかもしれません(ほぼ間違いないでしょう)。

少なくとも銀行取引がネットを中心としたものに移行していくのは間違いありません。

そこで信用を獲得するのは実物(リアル)の建物の立派さではありません。

短期的には、スマートフォンのアプリの使いやすさだったり、画面の見やすさ、外部サービスとの連携等が銀行の信用を左右することになるでしょう。

Amazon、facebook、Googleも「本社が立派」だからといってユーザーから信用された訳ではありません(AppleにはiPhoneという実物がありましたが)。

そして、Appleのロゴを見ると様々なイメージが湧くのではないでしょうか。古いかもしれませんが、SONYにもそのような「何か」がありました。カッコ良さ・革新性があったのです。

今後、銀行が信用されるには、このような他の要素が必要になってきます。

将来的には、銀行の本店・店舗が立派だったことが信じられない時代が来るのかもしれません。

半沢直樹というドラマが始まったというニュースを見るとそんなことを筆者は考えてしまうのです。

(尚、筆者はドラマ「半沢直樹」の新シーズンは見ていませんが、前回のシーズンは全部見ました。筆者はこのドラマが少々苦手です。エンターテイメントとしては面白いのですが、金融庁検査等の本当にきつかった現実の過去を思い出してしまうからです)