2,000万円問題が話題になる等、老後の生活に対しての関心が増加してきているものと思います。
老後資金を準備するにあたり重要な要素として、企業が用意する退職金があります。これは、公的年金である厚生年金(会社員等が加入)とは別個に企業が支給するものです。
現役時代には、子育て、持家購入等で簡単には貯蓄も出来ません。それを補うのが賃金の後払いの性格を持つ退職金(一時金・年金)です。
今回は、この退職金の状況について確認しましょう。簡単には見過ごせないことが分かるでしょう。
退職金の状況
以下は、厚生労働省が実施している就労条件総合調査の結果について、時系列にまとめたものです。数値は、定年退職者のうち大卒・大学院卒、管理・事務・技術職の平均退職給付額(退職一時金と退職年金の合計)となります。
まずはこちらをご確認ください。
- 2018年調査=退職金制度がある企業80.5%、一人平均退職給付額1,983万円、月収換算38.6ヵ月
- 2013年調查=退職金制度がある企業75.5%、一人平均退職給付額1,941万円、月収換算37.6 ヵ月
- 2008年調査=退職金制度がある企業83.9%、一人平均退職給付額2,280万円、月収換算 42.7ヵ月
- 2003年調査=退職金制度がある企業86.7%、一人平均退職給付額2,499万円、月収換算 42.8ヵ月
- 1997年調査=退職金制度がある企業88.9%、一人平均退職給付額2,871万円、月収換算 45.3ヵ月
以上をご覧になってどのように感じるでしょうか。
当該調査については調査対象企業によるブレがある可能性はあるものの、 基本的には退職金(一時金・年金)は右肩下がりの状況にあります。
また、そもそも退職金制度がある企業の割合自体も低下しています。
端的に言えば、企業は賃金の後払いという位置付けであったはずの退職金を削減してきているのです。
所見
1997年から2018年までの約20年間において退職金は約1,000万円も平均支給額が減少しました。
老後に2,000万円が預金として必要だとすると、上記でご紹介した厚生労働省の就労条件総合調査によれば、すでに退職金では老後の必要資金は賄えないことになります。
給与水準も実感としては上がらない中で、働き方改革により残業も削減されています。ニュースでは給料水準について採り上げられることが多いですが、老後という観点では、退職金は無視できません。
約1,000万円も退職金の平均額が減少している要因は様々でしょう。 超低金利の環境が続き、退職金の一部である企業年金の運営は難しさを増しています。
しかし、それでも約1,000万円もの退職金減額は従業員として認めることが出来るでしょうか。
そもそも会社員は年金保険料 (こちらは公的年金分)と健康保険料が上昇し、給与の手取りは厳しくなっています。
そこに退職金も減額されているのです。
組織率の低下が続く労働組合は、退職金の交渉でも存在感を失っているということでしょう。
まずは、自身の退職金がどの程度の水準となるかをチェックするところから老後設計は始めてみるのが必要ではないでしょうか。