銀行員のための教科書

これからの時代に必要な金融知識と考え方を。

リボ払いでカード会社に食い物にされていませんか?

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現金の流通・保管コストが重いという問題意識から日本のキャッシュレス政策は始まりました。今や、キャッシュレスという用語を聞かない日はないぐらいです。

キャッシュレスでは「〇〇ペイ」と言われるPayPayを代表とするような決済方法が、還元率の高さから脚光を浴びています。

しかし、元々日本においてキャッシュレスの主役はクレジットカードでした。

加盟店=お店から得ることができる決済手数料がこのまま競争で減少していくと、元々は相応の決済収益を確保出来ていたクレジットカード会社の業績への影響が大きくなる可能性があります。

この場合、クレジットカード会社はどのような収益改善策を採用するでしょうか。筆者は今以上の「リボ払い」強化に進んでいくものと考えています。

リボ払いを使ったことのある方もいらっしゃるでしょう。しかし、リボ払いは利用者にとってメリットがある反面、デメリットを持っています。

今回はリボ払いについて考察してみましょう。

  

リボ払いとは

まずは、クレジットカードのリボ払いがどのようなものかについて簡単に確認しましょう。以下は国内クレジットカード大手JCBのWebsiteからの引用となります。 

リボ払いとは、リボルビング払いの略で、欧米で一般的に利用されているクレジットカードの支払方法です。

リボ払いのしくみは、毎月の支払額を一定の金額に固定して、金利とともに返済していくというものです。よく似た支払方法に分割払いというものがありますが、こちらは支払回数を決めて支払うというしくみになっています。

リボ払いは、一回払いや分割払いとは異なり、高額商品を購入した場合でも、毎月の返済額は一定になるため、手もとにまとまったお金がないという場合でも支払いができるという特徴があります。ただし、利息が発生するため、リボ払いを利用しすぎると、支払い総額が高額になるケースがあります。そのため、リボ払いは、無理のない範囲で計画的に利用することが重要になるのです。

(出所 JCB/Websiteより抜粋)

リボ払いは主に2つの方式があります。これについても確認しておきます。

<残高スライド方式>
残高スライド方式とは、あらかじめ決められている支払残高によって、毎月の支払額が変動するしくみのことです。
例として、支払残高が10万円未満の場合、毎月の支払額が5,000円、支払残高が10万円以上15万円未満の場合、毎月の支払額が1万円と設定されているケースで考えてみましょう。毎月少額の買い物を続けて、支払残高が10万円未満を維持してきましたが、ある月に大きな買い物をして、支払残高が12万円となったとします。すると、それまでは毎月5,000円の支払いとなっていたのが、支払残高10万円以上となったことで、毎月の支払額が1万円にアップするのです。

<定額方式>
定額方式は、支払残高が増えても、毎月支払う額は一定を保ったままのしくみになります。
ある月に大きな買い物をして支払残高が増えた場合でも、毎月の支払額には変わりがありません。しかし、支払い金額を低く設定すると、その分支払残高の減りが遅く、支払期間が長期化するため、手数料がかさみます。

以上がリボ払いの基本的な知識となります。

利用者から見た場合のリボ払いのメリットは、基本的に毎月の返済額を一定に抑えられることです。手元にお金が無かったとしても高額の商品を購入できます。

一方、デメリットは、毎月の返済額が一定であるからこそ、リボ払いで消費し過ぎてしまうことです。気づけばリボ残高が積みあがっていることになりかねません。

今回はこのリボ払いのデメリットに焦点を当てていきます。 

 

リボ払いのシミュレーション 

リボ払いで最も注意すべきは「元利定額方式」の支払いです。

以下のシミュレーションをご覧ください。

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このシミュレーションは30万円の商品をリボ払いで購入した場合を想定しています。

金利は15%、月2万円の定額払いです。

このシミュレーションのポイントは以下です。

  • 1回目の支払い時の手数料(=金利)は、支払総額20,000円のうち3,750円であり約19%を占める
  • 元利定額払いの特徴として、支払全体に占める手数料(=金利)の割合が当初は高い
  • 言葉を換えれば、毎月返済をしても金利ばかり払っており、元本がなかなか減らない
  • そのため、30万円(元本)を2万円(毎月の支払額)で割れば15(回)となるが、実際の支払回数は17回となっている

毎月の返済額が同じで利用しやすいリボ払いですが、上記の通り多額の金利負担が発生します。

多くのカード会社は、リボ払いに切り替えると多額のポイントを還元するキャンペーンを行っているように、リボ払いはカード会社にとっては最も儲かる商品です。

例えば、リボ払いに切り替えれば5%程度のポイントをつけるといったキャンペーンがあったとします。通常のショッピングでは利用額の1%程度のポイントがつけば良い方でしょう。しかし、それが5%も付与されると聞くと、非常にお得なキャンペーンに感じるでしょう。しかし、リボ払いの金利は通常は15%程度です。5%のポイントを還元してもカード会社は儲かります。

個人にとってみれば、月の支払い残高を一定にしておけば、実際のリボ払い利用残高(=借入残高)が膨らんでも、毎月の生活にはあまり影響が出ません。これによって最終的に返済しなければならない借入額がどんどん積みあがっていくことが起こり得ます。

これはクレジットカード会社に借金漬けにされているようなものです。行き過ぎれば、どこかで破綻が訪れるのは自明の理です。

 

所見

リボ払いというのは毎月の支払額が一定となっている借金です。金利を手数料と言い換えたり、「リボ払い」と借金ではないような用語を使っていますが、単なる借金です。

その支払い方法は、金融の世界では「元利均等払い」と言われており、基本的には住宅ローンと同じです。当たり前ですが、返済期間が長くなれば、最終的に支払う金利の総額は増加します。カード会社は、利用者にずっとリボ払いの残高を残して欲しいと願っています。それがカード会社を支える収益だからです。

恐ろしいのは、リボ払いの場合、支払額が一定になっているために、借金が増えているという認識を利用者が感じにくいことです。クレジットカードのリボ払いは行動経済学における「知見」が悪い方向に(=カード会社に有利に)活かされている商品です。

リボ払いは、将来的な損失よりも目先の利益を優先する「近視眼的な人間の性向」に基づいた商品です。人間のクセを利用しているのです。

リボ払いを筆者はお勧めしません(但し、若い頃に給料が低すぎて使ってしまったことがありますが)。それは人間のクセ、弱さを巧みについてくる商品だからです。どうせ同じお金を使うなら、カード会社に払うのではなく、もっと人生にとって意味のあることに使いたいと筆者は考えます。