イランが、精鋭部隊司令官殺害への報復として、イラク駐留のアメリカ軍拠点を弾道ミサイルで攻撃しました。
これを受けて株価は下落しています。
過去、中東における緊張が高まったのは湾岸戦争(1991年)とイラク戦争(2003年)が挙げられます。
今回は、中東における戦争と株価の影響について簡単に確認してみましょう。
戦争と株価の関係
①湾岸戦争
1990年8月2日にイラクがクウェートを侵攻しました。
そして、1991年1月17日にイラクへの空爆によって湾岸戦争が始まりました。
湾岸戦争は2月28日に米国をはじめとした国連軍が勝利を収め終結しています。
戦争の発端となったイラクのクウェート侵攻の際、株価は暴落しました。
しかし、湾岸戦争開始後は逆に株価が上昇しています。
②イラク戦争
2001年の米国株式市場は9.11テロで大きく下落しましたが、 その後、 2002年の前半までは上昇しました。当時の解説では、 米国の住宅市況の活況が続いたことや、販売促進策を強化した自動車の販売好調等が株価の上昇要因として挙げられていました。
株価は 2002年後半から下落しています。この時期は、 通信大手ワールドコムが粉飾決算の発覚をきっかけに破綻したこと等、投資家の間で企業会計に対する不信が高まったタイミングです。
そして、株価は米英などがイラク侵攻を始めた2003年3月が底です。 侵攻前から戦闘は短期決戦となることが予想されており、軍需によるGDP 押し上げ期待等があったものと思われます。また減税政策も取られました。
③日経平均株価とダウ工業株30種
以下はイベント(戦争開始等)発⽣前50⽇と発⽣後150⽇の⽇⽶の株式市場の動きを図表にしたものです。
(出所 三井住友DSアセットマネジメント なるほど!ザ・ファンドQ&A Vol.62/2017年9月8日)
これを見れば、特に米国においては戦争が開始されると株価は下落ではなく、むしろ上昇していることが分かります。
戦争と為替の関係
次に参考までに中東における戦争と為替の関係も確認しておきましょう。
以下の図表は、イベント発⽣前50⽇と発⽣後150⽇の円相場(対⽶ドル・ユーロ)の動きです。
(出所 三井住友DSアセットマネジメント なるほど!ザ・ファンドQ&A Vol.62/2017年9月8日)
為替市場は戦争等が開始した直後は円高になる場面がありますが、その後は円安にも円高にもなっています。
所見
2003年のイラク戦争では「開戦によって不透明感が払拭されたこと」が株価の上昇要因になったとの意見も聞かれました。
米国とイランが開戦となったとしても、株価は下落せず、上昇に転じる可能性があることは認識しておいても良いかもしれません。
地政学リスクは景気後退の引き金にならない限り株の買い場となるとの意見は以前から存在し、「地政学リスクは買い」という経験則は存在するのです。
現時点の米国とイラン間の状況だけを見れば、企業業績やマクロ経済動向、 原油価格、 そして中央銀行の金融政策の方が株価には影響があると考えても良いのではないでしょうか。
(なお、戦争は本当に回避して欲しいと筆者は願っております。)