「貧乏人ほどスタバでコーヒー買うか、タピオカのドリンクを飲む」傾向にあると聞いたら、どのように感じるでしょうか。
知人の経営者から筆者がこの話を聞いた時には、最初はバカにされているような気分になったものですが、後から妙に納得したものでした。
なぜ、スターバックス(スタバ)はあれほどの好立地での店舗展開が出来るのでしょうか。なぜ、タピオカ入りのドリンクを売っているお店が爆発的に増えたのでしょうか。
今回は、タピオカやスタバの利益率と「貧乏人ほどタピオカやスタバを好む理由」について考えてみましょう。
タピオカの動向
タピオカを用いたドリンクではタピオカミルクティーが爆発的にヒットしています。タピオカ専門店の開業が相次いでおり、その増加スピードは驚くほどです。
“業務用タピオカ”売上が14倍に
2019/06/15 00:14 Written by Narinari.com編集部ヤフーは6月14日、Yahoo!ショッピングにおける“業務用タピオカ”の売上が、今年1月と同5月の比較で約14倍になっていると発表した。
全国各地に新店舗がオープンし、行列が絶えないタピオカ専門店。1992年頃、2008年頃に続く“第3次タピオカブーム”と呼ばれる今回のブームは、昨年あたりから始まり、東京都内だけで300店舗以上もあるという。
そうしたブームを裏付けるように、Yahoo!検索における「タピオカミルクティー」の検索数は、昨年6月1日と今年6月1日の比較で約9倍に。
また、Yahoo!検索で、「タピオカミルクティー」と一緒に検索されているワードのトップに「業務スーパー」、4位に「作り方」が入り(2018年6月1日〜2019年6月1日)、最近は業務用タピオカを購入して“おうちタピオカ”を楽しむ人も増えているようだ。
同社によると、お店で購入するとだいたい1杯600円前後のタピオカドリンクだが、業務用タピオカなら1杯(30グラム)約40円前後で、紅茶や牛乳を加えても100円程度と、かなりリーズナブル。業務用タピオカにもいろいろなものがあるが、特にゆで時間の少ない冷凍タイプや、生タイプが人気を集めているという。
タピオカを入れたドリンクは、ミルクティーなどのドリンクにタピオカを入れれば完成します。アルバイトでも充分に調理が可能であり、近時増加しているテイクアウト専門店ならテナント料も抑えられます。一方で販売価格は、一杯500円以上が通常です。
様々なWebサイトで調べるとタピオカミルクティーの原価率は30%程度と想定されます。500円の売価ならば、150円の原価です。
飲食店の原価率は30%程度が良いとされていますが、タピオカドリンク専門店の場合は、原価率が低いだけでなく、上記の通りコストの安いアルバイトを使い、テイクアウト専門店としても(現時点では)成り立っていることから、他の飲食店と比べて(粗)利益率は高いと言えるでしょう。「タピオカは黒いダイヤ」とまで言われているようです。
スタバの利益
先ほどはタピオカドリンクの利益率が高いことを見てきました。
もう一つの業界として、コーヒーチェーンを見てましょう。
様々な場所にカフェがありますが、一人当たりの売上高は少額と感じたことがある方も多いでしょう。なぜ店舗を維持出来ているのでしょうか。
売り上げに対してかかった原価を示す「売上原価率(売上原価÷売上高)」は、スタバで25.2%、一方の有力コーヒーチェーンであるドトールで40.2%です(2013年度中間決算/東洋経済記事https://toyokeizai.net/articles/-/29252?page=3、※数値が古いがスタバは2015年3月期で上場廃止)。
ドトールはスタバよりサンドイッチなどのフード(食べ物)に注力しているため、売上原価率が高くなっていると想定されます。基本的に、原価はフードのほうが高く、ドリンクのほうが安くなります。
スタバは、ドリンクが販売の中心であり、フードは既に完成した加工品(=手間がかからない)を提供していることから、非常に低い原価率=高い利益率を誇ることになります。
まとめ
タピオカドリンクにしろ、スタバにしろ、低い原価率=高い利益率が特徴です。
タピオカが爆発的に増加しているのは、単にブームであるのみならず、原材料が低価格、かつ加工の手間が低い一方で、高い販売価格を得られる「利益率の高い商品」だからです。
スタバも同様に原価が低いコーヒーを中心としたドリンクが中心です。バイトでも対応が出来るため、人件費も低く抑えることが出来ます。
尚、一般的にコーヒーの原価率は10%程度と言われています。一方でセブンーイレブンのコンビニコーヒーの原価率は45%程度とされています(参考 http://hackcoffeebeans.com/cost/)。
一杯分で考えると、スタバのコーヒーを一杯300円、セブンーイレブンのコーヒーを一杯100円とすると、スタバの原価が30円程度、セブンーイレブンが45円程度となり、コンビニコーヒーの方が、実は品質が良かったりします(コンビニは薄利多売、回転数で勝負)。
冒頭にご紹介した「貧乏人ほどスタバでコーヒー買うか、タピオカのドリンクを飲む」という知人経営者の名(迷)言は、「コスパ」という観点では真実をついています。
タピオカミルクティーだろうが、スタバだろうが、おしゃれでインスタ映えもするかもしれません。しかし、冷静に考えると、コスパは悪いのです。
そして、一杯500円程度と「庶民でも買える」値段設定にしています。ちょっとした贅沢(プチ贅沢)として、考え抜かれた価格水準だったりするのです。
金持ちになる人は「本当のコスパに拘りがある」人なのでしょう。いつも何らかの商品を見ては原価を計算しているのかもしれません。
我々庶民は、その金持ちの感覚が分かっていないのです。金持ちはケチと言われることもありますが、ケチなのではなく、冷静にコスパを追求しているだけなのかもしれません。
「安物買いの銭失い」という言葉があります。タピオカミルクティーを飲む時、スタバでコーヒーやフラペチーノを飲む時、この言葉の意味をちょっとだけ考えてみると、我々もお金持ちに少しだけ近づけるのかもしれません。