日経新聞が政府の氷河期100万人就職支援策について報道しています。
今回は、この支援策について簡単に所見を述べたいと思います。
報道記事
まずは日経新聞の記事を引用します。
氷河期100万人就職支援、政府 研修業者に成功報酬
2019/08/14 日経新聞政府はバブル崩壊後に高校や大学を卒業した「就職氷河期」世代の就職支援を本格化させる。30代半ばから40代半ばの人たちは、他の世代に比べ国内外の厳しい経済情勢の影響で不遇な労働状況に置かれたとみて、年齢層を絞る異例の対策を講じる。正規雇用で半年定着したら、研修業者に成功報酬型の助成金を出す。支援対象は100万人規模で、経済や社会保障の支え手になってもらう狙いがある。
経済財政諮問会議の資料によると、バブル崩壊後の就職難で、統計のある1997~2004年には毎年8万~12万人が未就職で高校や大学を卒業した。現状より3~5倍多い水準だ。
03年に35~44歳で無職やフリーターの人は57万人だったが、18年には92万人に増加した。不安定な就労状況で、所得も正社員などに比べ低いとみられる。引きこもりなどになっている人もいる。
(中略)
所得や消費が伸びず、年金や医療保険の基盤を弱める要因にもなるうえ、老後には生活困窮者が増えるおそれもある。総合研究開発機構(NIRA)によると、氷河期世代のフリーターなどが生活保護を受けるようになった場合、追加で累計20兆円規模の給付が必要になると試算している。
所得の引き上げで消費を底上げし、社会保障の担い手になってもらうことで、社会からの疎外感も薄められるとみている。就職氷河期世代のうち非正規で働く人や非労働力人口、完全失業者は計600万人超。このうち100万人程度が支援を必要としていると試算する。月内にも支援策をとりまとめる方針だ。
支援の柱になるのは成功報酬型の民間委託だ。専門知識やスキルを教える民間教育機関が非正規雇用者に半年程度の訓練や職業実習をした場合、国から経費の一部として最大20万円出す。さらに受講者が訓練などを始めてから8カ月以内に正規雇用の職に就き、半年間きちんと働ければ追加で最大40万円を支給する。
短期資格取得コースも新設する。厚生労働省が民間の業界団体に委託し、希望者に1カ月程度の集中訓練をする。建設なら小型クレーンやフォークリフト、運輸なら運行管理者や整備管理者などの資格取得を想定している。業界団体は資格を取った人に職場見学や実習の場を提供する。
自立支援相談機関やひきこもり地域支援センター、ハローワークなどが連携して長い期間、職に就けていない人の社会参加も促す。
政府の支援規模は3年間で数百億円になる見通し。政府は財源として雇用保険を充てる方針だ。
長い期間就業していない人や、単純労働に従事している人も多く、企業の求める人材とは異なる場合が多い。政府は職業訓練や資格取得など通じて、雇用のミスマッチを埋めたい考えだ。
(以下略)
以上が記事です。
所見(単なる意見)
氷河期100万人就職支援策はやらないよりはやった方が良い施策です。
国全体で見た場合は、記事でも指摘されている通り、氷河期世代が大量の生活保護費受給者になるリスクを抱えています。
この施策で一人でも多くの方が職につくことを筆者は望みます。
しかし、研修事業会社だけを儲けさせるような施策にならないかは注意が必要でしょう。
氷河期世代の年齢を考えると実質的に最後の施策を打つタイミングと言えます。ここで、失敗すると厳しい未来が待っています。この未来は、氷河期世代にとってだけではなく、国民全体、現在安定した雇用を得ている人達にとっても厳しいのです。
勤労世帯が、現在よりも更に社会福祉、年金、医療費を負担する余力は限られていると筆者は考えているからです。
冷静に考えれば、怖くてしょうがない未来であるように思います。明るい将来が見えないため、子供を持ちたくないと言っていた若手の顔が浮かびます。
但し、就職支援は良いとして、政府が、どのような職種・業界に人材を誘導しているのかについては、気になります。
日経新聞の記事だけを見れば、人手不足である建設業界がまず浮かびます。それ以外に、恐らく介護業界、輸送(運輸)業界等が挙げられるでしょう。
しかし、本当にそれらの業界への就職誘導が良いのでしょうか。
人口が減少し、様々な自動技術(自動運転等)が導入される近未来において、どの業界、業種に働き手を集めるべきか、政府はきちんと想定しているのでしょうか。
筆者は、未来を見据えて、この施策が実施されることを心の底から願ってやみません。日本の構造転換が遅れてしまえば、せっかく職を得た世代が、再度、職を失ってしまうことだってあり得ます。未来は完璧に予想は出来ません。それでも、想像して行動した方がマシです。
以上、単なる意見です。