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Uber(ウーバー)の2019年12月期2Q決算~ソフトバンクGの株価に影響したのか?~

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米配車サービスUber(ウーバー)の2019年12月期2Q決算内容がアナリスト等の想定を下回ったことから、ソフトバンクグループの株価が下落したと報道されています。

多数の人がUberというサービスを耳にしたことがあるのではないでしょうか?

ライドシェアの大手であり、ソフトバンクグループも大株主として出資しています。2019年5月には株式公開を実施、多額の資金を調達しました。

成長企業として有名なUberの2019年12月期2Q決算はそんなに悪かったのでしょうか。

今回は、Uberの2019年度中間決算について確認しましょう。

 

報道内容

まずはUberの決算についての報道記事を確認してみましょう。

ソフトバンクG株、1年9カ月ぶりの7日連続安に-ウーバー最安値
2019年8月13日 Bloomberg

ソフトバンクグループ株がおよそ1年9カ月ぶりに7日連続安を記録した。同社が出資する配車サービス大手の米ウーバー・テクノロジーズは、先週発表した決算内容に対しアナリストの間で失望感が広がっており、株価の下落基調が止まらない。

13日のソフトバンクG株は一時前営業日比3.2%安の4852円まで下落。7日続落は2017年12月以来だ。

ウーバーが8日に発表した4-6月(第2四半期)決算は、調整後売上高が市場予想に届かず、純損益は52億4000万ドル(約5520億円)の赤字だった。予想を上回る決算を発表していた競合リフトとの比較で、アナリストの間では失望感が広がり、黒字転換のタイミングを巡る議論が再燃している。  

ウーバー株は決算を受けた9日の取引で6.8%安と大幅安したのに続き、日本市場が休場だった12日も7.6%安の37ドルと、終値での上場来安値を付けた。

ブルームバーグのデータによると、筆頭株主であるソフトバンクGはウーバー株を13%保有し、持ち分の市場価値は9372億円となっている。リフトの筆頭株主は楽天で、持ち分は1955億円。

以上の通り、Uberの売上高は市場予想に届かず、純損益は52億4000万ドル(約5,520億円)と巨額の赤字を計上しました。

 

Uberの決算のポイント

では、Uberの決算はどのように評価すれば良いのでしょうか。

そもそも、5,500億円もの赤字を出して企業として存続出来るのでしょうか。

 

<Uberの決算のポイント>

  • 調整後売上高(Adjusted Net Revenue)の4~6月における前年比増収率は+12%。
  • 2018年2Q=+58%、2018年3Q=+34%、2018年4Q=+16%、2019年1Q=+14%、2019年2Q=+12%と成長は鈍化
  • 但し、為替影響を除けば2019年2Qは増収に転じているとの同社説明あり。為替調整後の売上高の増収率(%YoY Constant Currency Growth)は2018年2Q=+57%、2018年3Q=+38%、2018年4Q=+19%、2019年1Q=+18%、2019年2Q=+26%
  • 2019年2Q(1~6月)は、売上高6,265百万ドル(前年同期比+17%)、営業利益▲6,519百万ドル(前年同期比▲5,302百万ドル)、最終利益▲6,248百万ドル(前年同期比▲3,378百万ドル)
  • 2019年6月末時点の現預金は11,744百万ドル(制限の現預金のみ)であり前年同期比+5,338百万ドル

以上の通り、Uberは大幅な赤字を出しています。そして、(少なくとも数字上は)成長が鈍化しています。株式マーケットはこの成長鈍化について特に失望したと言えるでしょう。

一方で、多額の赤字を計上していても、多額の現預金を確保しています。これは2019年5月に株式公開・増資したことによるものです。

しかし、半年で5,500億円も赤字を出しているのであれば、1年程度で資金が底をつく可能性もあるのではないでしょうか。

そこでUberのキャッシュフローについても確認しておきましょう。

  • 最終赤字▲6,262百万ドルのうち、株式ベースの報酬(Stock -based compensation)が3,952百万ドルと2/3を占める。すなわち、実際には現金の流出が伴わない費用が最終赤字の要因として計上されている。
  • よって、営業キャッシュフローは▲1,644百万ドルと最終赤字に比べて大幅に赤字額が縮小している。

以上で分かるように、Uberは成長企業として赤字が続いていますが、先行投資(研究開発についても株式報酬を活用)等によるものです。

キャッシュフローについては最終赤字に比べて赤字額は少額です。現在の手元資金であれば短期的に資金繰りに行き詰まる可能性は低いでしょう。

 

まとめ

以上がUberの2019年12月2Q決算のポイントでした。

Uberの成長速度については留意が必要ですが、サービスの利用者数は堅調に増加しており、同社の業績についてはもう少し長い時間軸で評価していく必要があるのではないでしょうか。

また、ソフトバンクグループはUberだけに投資している訳ではありません。Uberの決算が想定よりも悪く株価が下落したとしても、投資先の一銘柄だけでソフトバンクグループの株価が影響するというのも、解釈としては疑問が残ります。この点については、ソフトバンクグループの投資家は冷静に判断すべきかもしれません。