銀行員のための教科書

これからの時代に必要な金融知識と考え方を。

【余話】金利、利子、利息の違い

f:id:naoto0211:20190112214159j:image

金利、利息、利子。

それぞれ、銀行と取引する際に関係する用語です。

この違いを意識して使っている人はどれだけいるでしょうか。

今回は、この似たような用語の違いについて確認してみましょう。

 

それぞれの用語の定義 

まずは金利、利子、利息について定義を見ていきましょう。

<金利>

お金を一定期間貸し借りする時にかかる費用のこと。預貯金、貸付金、債券などに対する利子、利息。一般的に、銀行などからお金を借りる場合は金利を支払い、銀行などに預金する場合は金利が得られる。

一方で、日銀のマイナス金利政策では、金融機関が日銀に預けるお金の一部の金利がマイナスとなり、逆に手数料を払うことになる。

(出所:野村証券Webサイト)

 

<利子>

債券は、利率や償還期日などが決められて発行される。債券を保有すると額面金額に対しての利率分を定期的に受け取ることができる。そのことを利子または利金ともいう。

たとえば、額面金額が100万円の債券の利率が2%の場合は、利子の額は年2万円となる。

なお、預貯金から生じる利息のことを利子という場合もある。

(出所:野村証券Webサイト)

 

<利息>

金銭などの使用の対価として、金額と期間とに比例して一定の割合(利率)で支払われる金銭その他の代替物。利子。

(出所:デジタル大辞泉)

 

以上の説明では、金利も利子も利息も、いずれもほとんど違いが無いと言えるでしょう。世の中一般では、この取り扱いで問題ないでしょう。しかし、銀行実務では少し違ってきます。

 

銀行実務における用語の使用

金利、利子、利息の使い分けについては、じぶん銀行が自社サイトで以下のように説明しています。 

<金利>
お金を借りる側が、借りたお金に追加して支払う金額の割合のことをさします。

<利子>
お金を借りる側が、貸した側に元本に追加して支払うお金のことをさします。利子は、貸し借りした金額に金利をかけて計算されます。

<利息>
お金を貸した側が、元本に追加して受け取るお金のことをさします。

これらの用語を使い分けるポイントは、割合と金額であると言えます。「利回り」と「金利」は割合をさす言葉で、「利子」と「利息」は金額をさす言葉と覚えておくといいでしょう。

(出所:じぶん銀行Webサイト)

この定義であれば非常に分かりやすく金利、利子、利息が区別できるのではないでしょうか。

金利は「割合=何%(もしくは利率)」ということ、利子は「借りる側が貸した側に払う金額」、利息は、「貸した側が借りる側から受け取る金額」ということです。

ただし、金利という用語は、「金利●%」というような割合だけを指すのではありません。「金利を頂きます」といような使い方(話し方)は銀行実務でもします。金利には割合という意味と、利息(利子)という意味が複合されています。しかし、一般的には割合・利率のことを金利は指すでしょう。

また、銀行実務では、利子という言葉はほとんど使いません。利息という用語を使います。 

これは慣習的な由来もあるでしょうが、法律に合わせているものと思います。

利息制限法では利子という言葉は出てきません。全て利息で統一されています。

一方で税金関係では利子という用語が使われています。所得税法をご覧いただければ一目瞭然です。

このような使い分けに明確な線引きはないかもしれませんが、銀行=利息、預金者・債務者=利子という使い方となっているように思います。

なお、ゆうちょ銀行の場合は、貯金者に対してゆうちょ銀行が支払う金銭については利子という用語を使っています(銀行だと利息としています)。

 

まとめ

今回取り上げた金利、利子、利息は、一般的に使われている意味は曖昧です。しかし、Googleでの検索が無い時代には、少なくとも利子と利息の違いを筆者は先輩から明確に教わりました。そして、そのまま明確に区別したまま使い分けました。

一般的には意味に違いはないものの、慣習的・実務的に使い分けられている用語は日本において様々にあるでしょう。

その用語を使えなければ(もしくは間違って使用していると)、その業界の人々から違和感を示されます。素人・アウトサイダーに見られるのです。

日本語には類語が多々あります。そして用語の使い分けには厳密に間違いはありません。全部正解かもしれないのです。しかし、実務では用語を使い分けているかもしれません。

あくまで筆者の経験則でしかありませんが、言葉の意味、単語の定義については、こだわる人はこだわります。その人にとっては、違和感のある単語を使われると、それ以外の部分が頭に入ってこなくなるのです。

厳密に言えば正解である言葉使いでも、金利、利子、利息のように慣習的に使い分けが存在する用語はあり、その使い分けでなければ拒否感を覚える人はいるのです。

(例えばですが、「貯金する」と言いますが、銀行に預ける場合は厳密には「預金する」です。従って、金融機関でお金を貯めようとするのであれば「預貯金(よちょきん)する」という使い方が正確でしょう)

言葉・単語については、仕事やコミュニケーションを円滑に進めるためにも、可能な限り意識して、使い分けるようにしたいものです。