大塚家具が2018年10月に続き11月も増収を確保しました。これは9月下旬から開催している在庫一掃セールの効果です。
大塚家具は、2018年10月に増収に転じるまで15カ月連続で売上が対前年割れとなっていました。
それでは、大塚家具の業績は持ち直したのでしょうか。また、資金繰り危機が報道されていましたが、このセールで資金繰りの課題も解決しつつあるのでしょうか。
今回は大塚家具の在庫一掃セールの効果について考察しましょう。
売上動向
まずは、大塚家具の足元の状況を確認しましょう。以下、東京商工リサーチの記事を引用します。
大塚家具、11月もセール好調で2カ月連続の売上増
公開日付:2018.12.03
(株)大塚家具(TSR企業コード:291542085、江東区、大塚久美子社長)は、10月と11月の2カ月連続して全店の売上高が前年同月を上回った。
大塚家具は10月の売上高が昨年7月以来、15カ月ぶりに前年同月を上回ったが、11月も前年同月比で全店の売上高が4.1%増えた。9月28日から11月25日まで開催した「在庫一掃セール」が好評で、応接などが売上高を押し上げた。インターネット通信販売のEC売上高も前年同月比58.0%増と伸びた。2カ月連続して前年同月比で売上が上回ったのは、昨年6月、7月以来の16カ月ぶりとなる。
大塚家具によると、「店舗の再構築や資本増強、業務提携など具体的に交渉を進めている」というが、動きはない。このため、2018年6月中間期決算から「継続企業の前提に関する注記」(GC注記)が付いたままだ。
(以下略)(出典 東京商工リサーチ http://www.tsr-net.co.jp/news/analysis/20181203_03.html)
以上が大塚家具の足元の状況です。
セールの効果
このセールでは以下の通り売上が増加しています。
- 2018年10月 前年比107.7%
- 2018年11月 前年比104.1%
減収が続き、資金繰りが厳しい大塚家具にとっては久しぶりの明るいニュースだったかもしれません。
しかし、このセールは大塚家具にとって本当に良い影響をもたらすものなのでしょうか。
短期的効果
- 短期的にはセールは間違いなく有用だったでしょう。
- 商品が売れれば現金が入ってきます。資金繰りに窮した企業にとっては重要なセールだったと言えるでしょう。
- 前年(2017年10~12月)の売上は9,797百万円です。一月にすると3,265百万円となります。
- 簡易に試算すると、3,265×7.7%(10月)=251百万円、3,265×4.1%(11月)=133百万円の合計384百万円が前年比で増収となっていると想定出来ます。
- 10~11月には6,914百万円の現金が入ってきたということになります。
- 一方で支出は3,732百万円(=3Q決算における販管費168億円×2/9=2カ月分の支出)と想定されます。
- 従って、差し引き3,182百万円の現金が手に入った可能性があります。
- もちろん、商品が売れれば補充しなければ事業は継続出来ません。
- それでも、2018年9月末時点で現金23億円、投資有価証券7億円を保有していた大塚家具にとっては現金の確保につながります。そして、本当に資金繰りが厳しければ、商品を仕入れなければ良いのです。
中長期的効果
- 在庫一掃セールは、滞留していた「売りたくても売れなかった」在庫を処分、すなわちキャッシュに変えた可能性があります。
- これにより、キャッシュの確保のみならず、今の顧客に合った魅力ある商品を店頭に並べることが出来るようになります。
- 品揃えが強化されれば、集客力が高まり、更なる売上に繋がる、という結果を生む可能性もある訳です。
- 一方で、最大80%オフの在庫一掃セールは大塚家具に安売りのイメージを植え付ける可能性があります。
- 今回のセールに味をしめたお客様は、以前のような高い価格で大塚家具で購入しようとするでしょうか。セールはうまくやらなければ、更なる売上減少・顧客離れを招きます。
所見
大塚家具の今回の在庫一掃セールはやむを得ない選択だったでしょう。キャッシュが足りなければ、できることは在庫を換金することぐらいです。その最も手っ取り早い方法が、バーゲンセールなのです。
このセールは大塚家具の資金繰り問題をわずかに先送りしたと思われます。キャッシュ増加の効果は前年比では4億円弱程度しかありません。
しかし、一方でブランド価値の棄損、以前の高級路線への回帰を難しくしたこと等の副作用がおそらく発生します。
第三者が偉そうなことを言うようですが、在庫一掃セールをやらざるを得ないほど追い込まれる前に、他社との提携等、手を打っていた方が大塚家具を延命させられていたと筆者は考えます。