債券と株式は逆相関の関係にあると言われます。
債券は金利上昇時に「値下がり」し、金利下落時には「値上がり」します。株価が上がるときには景気が良くなり金利も上がる(債券は値下がり)ため、債券と株式は逆の動きをしているとされています。
長く続いた金融緩和の時代は終焉を迎え、米国は金利を上げ始めました。
金利上昇の局面で何が起こるのか、今回は一般的な知識を確認しておきましょう。
債券と株式の一般的な理解
債券と株式の動きについては一般的に以下のように理解されています。
継続的に景気が良くなり、金利が上昇する環境下では、金利水準が過熱しつつも、資金調達ニーズの高まりは続き、企業業績向上への期待が高まります。投資対象としての魅了は債券から株式に移り、投資マネーは債券市場から株式市場へ移動するので、金利上昇と株価上昇が起こります。
反対に、金利上昇が悪い影響を及ぼす場合があります。これは金利が上昇することにより、企業は借入れコストが上昇する為、設備投資の縮小を行います。また、個人消費でも住宅ローン金利が上昇することから、住宅購入を見送ることも考えられ、企業業績低迷への不安が高まり株価は下落する傾向があります。
(出典 SMBC日興証券ホームページ)
これが債券と株式の一般的な理解です。
債券価格と金利
ここで、少し蛇足として債券と金利の関係について触れておきます。
債券価格と金利の関係は理解しているつもりで、意外と混乱してしまうことがあります。すなわち、金利が上がると債券価格は下落し、金利が下がると債券価格は上昇します。
「金利が上がると、なぜ債券価格が下がるのか」を直感的に捉える事例を以下で挙げておきます。
100円の価格がついた債券は毎年2%の利払い、すなわち毎年2円の利払いがある(2%の金利水準)。ここで、市場における金利が仮に上昇し、3円の利払いが行われる状況(3%の金利水準)になったら、2円の利回りが約束された債券の魅力は低下してしまう。その価格は100円を下回ることになるだろう。
いっぽう、市場において金利が低下し、1円しか利払いが行われない環境(1%の金利水準)になれば、2円の利払いを約束された債券に対して人気が殺到し、価格が100円を上回ることになる。
(出典 日経ビジネスオンライン)
単純に言えば、債券価格と金利の関係はこれだけなのです。
実際の動きと留意点
以下の図表が示す通り、1990年代後半以降、株式と債券は長期間にわたり、とりわけ経済成長期において連動する傾向にある(ロイターから引用)と言えます。
(出典 ロイターホームページ)
足元では、この関係がいつまでも続くと考えるのは危険かもしれません。
株と債券の動きを考えてみよう。1990年代後半以降、資産クラスの双璧である両者の価格は正反対の方向に進む傾向があり、強い負の相関関係があるとされてきた。
このパターンはあまりにも定着し、それが当たり前だと思われている。だが英調査会社アブソリュート・ストラテジー・リサーチのイアン・ハーネット氏によると、19世紀以降で株と債券がその通りに動いていた時期は他に1回しかない。1950年代終盤~1960年代初めの株と債券の関係がここ数年間に類似していた。また当時もインフレは休止状態だった。
(出典 ウォール・ストリートジャーナル)
この警鐘は留意しておく必要があるかもしれません。
金利上昇が悪い影響を及ぼす場合、すなわち、金利が上昇することにより、「企業は借入れコストが上昇する為、設備投資の縮小を行い」「個人消費でも住宅ローン金利が上昇することから、住宅購入を見送られ」、企業業績低迷への不安が高まり株価は下落することもあるのです。
近いうちに債券利回りが上昇すると同時に、株価が最高値を更新するのではなく、相関性の危機=下落することも、歴史的には十分にあるのです。